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IF ONLY 仲道竹太朗SF短編集

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僕が描く「あったらいいな」を描きます。 文学フリマに出品する作品なので、よければ見てください。
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記事一覧

文フリまであと2日! 25話「西武目白線」

 学習院大学の正門を抜けると、そこは立派な繁華街だった。新宿にも引けを取らないような大都会が広がる。
 ここは目白駅。東武東上線と西武目白線が交わる街。
 山手線で一駅。そこの池袋に自分のすむアパートがある。今の池袋は静かな住宅街。都心へのアクセスがいい好立地だ。
 昔は東武線と西武線を池袋につなげようという計画もあったようだ。しかし目白駅につなげることに決まったようだ。土地の問題を押し通してそう

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文フリまであと3日!24話「ブレインキーパー」

 見かけは大人、頭脳は子供、その名も、島﨑渡!
 子供の頃に脳に埋め込まれたブレインキーパーによって、永遠の童心を持つことができるようになった。そのいっぱいの好奇心と記憶力は、40歳になった今でも健在だった。学ぶことは子供の特権だとは言うけれど、これで大人になっても同じように学ぶことができることが証明された!
 でも、それで何になるんだろう?
 一流企業の社員となった今でも、日々学ぶことを忘れては

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IF ONLY 第23話 ドンナノボール

「さあ、願いを言え。一つだけ叶えてやろう」
 星が輝く真夜中、シェン○ンみたいな龍が僕を見下ろしていた。
 こんなことが本当に起こるなんて。僕はボールを7個集めただけなのに。
 ボールはボールでも、野球ボール7個だ。
 普段ボール7個だけを天に掲げることなんてしないと思って、試しに面白半分でやってみたら、本当に願いを叶えてくれそうだった。
 これが終わったら今度、サッカーボールで試してみよう。
 

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IF ONLY 第21話「ライフコンデンサ」

 今日、僕は事故で人を殺してしまった。
 曲がり角での車どうしの事故。向こうの信号無視とはいえ、事実は変わりない。
 彼女の葬儀場に佇む僕。遺族に許可を得て、僕なりの責任を取ろうと考えた。
 棺の蓋を開ける。そこにいた彼女は、死に化粧で美しかった。僕は聴診器型の装置、1分で人生を映し出すことのできるすぐれものを取り出す。イヤーピースを耳に付け、彼女の胸にチェストピースを当てた。
 彼女は幸せだった

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IF ONLY 第5話 「日本拡大」

 ドラえもんのストーリーの一つに、「ひろびろ日本」という奇怪な作品がある。
 それは土地拡張ポンプを用いて、日本本土を大きくしようというものだった。実際にやってみた結果、家と家の間の感覚がとても広がり、成功したのだった。
 しかしここが甚だ疑問だ。土地が拡大すれば、家の中の土地も拡大され、家が壊れるはずだ。それぞれの家の土地はなぜ拡張しなかったのか。
 ドラえもんには重箱の隅を突くような指摘が耐え

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IF ONLY 第4話「クリスマスメイカー」

 しんしんと降る粉雪が、地面に柔らかく積もっていく。その雪を照らしているのは、道の両脇にある家々のイルミネーションだ。
 ここはどこか外国郊外の住宅地だろうか? レンガの建物一軒一軒に、豪華なもみの木が飾られている。窓からは暖かい色が覗いていた。
 そうだ、今晩はクリスマス・イブ。でも、外には人っ子一人いない、静かなクリスマスは初めて見た。哀愁を感じざるにはいられない。思わず見とれていたけれど、よ

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IF ONLY 第3話「ファストスリーパー」

 大輔の寝室の真ん中に大きく置かれていたのは、重厚なカプセル。一瞬の時間で睡眠できるその「ファストスリーパー」は、「猛烈社員」の異名をとる彼にとって、今は欠かせない。それで浮いた時間を仕事に回すことをしてきたからこそ、若くして係長の座を手に入れる程までになった。
 大輔はいつものように、無言でハッチを開こうとした、その時だった。
「おじさん……」
 廊下からの声の方を向くと、そこには少女がいた。姉

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IF ONLY 第2話「ルシッドドリーマー」

 俺は金髪美少女が好きだ。
 だからクラスメイトの下北・セリス・夏美を見た時はとてつもなく興奮した。まさに俺のどストライクを突いたその容姿はハーフ特有のもの。いつ目に入れても痛くない。
 以前は彼女の人気者っぷりには困惑していた。だからこそ、知り合いの博士から「明晰夢実現機」を譲り受けた時の嬉しさときたら半端なものじゃなかった。この機械は寝る時の夢をいつもはっきりとした夢に返る事ができ、起きた後も

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IF ONLY 第1話「ブレインバックアップ」

 昨日の交通事故は、僕の彼女である優香を脳死に至らしめた。デートが終わり、家路で別れた直後に、それは起こった。ああ、どうしてもっと一緒にいてあげられなかったんだろう。
 でも、後悔するのはやめた。
 彼女は脳のバックアップ保有者、すなわち専用の機械に脳の記憶を保存する実験の被験者であったからである。
 病室に、彼女がベッドで横たわっている。安らかに眠るその頭には、数多くの配線。それはベッド隣にある

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IF ONLY 序章

 東京の下町にいる老舗の焼肉屋「みらい」は、相変わらず常連の4人がいた。

 カウンター席がいくつかに、テーブル席が2つ。小さな焼肉屋ではあるが、そのテーブル席一つを四人のサラリーマンが使用している。小田、澤村、吉岡、大道の4名は、もはや童心を忘れた中年であった。会社は違うも幼馴染の彼らは月一でこの行きつけの焼肉屋で飲むほど、仲が良かった。頭はてっぺんからはげ始めたおり、スーツはネクタイを始めや釣

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