IF ONLY 第2話「ルシッドドリーマー」

 俺は金髪美少女が好きだ。
 だからクラスメイトの下北・セリス・夏美を見た時はとてつもなく興奮した。まさに俺のどストライクを突いたその容姿はハーフ特有のもの。いつ目に入れても痛くない。
 以前は彼女の人気者っぷりには困惑していた。だからこそ、知り合いの博士から「明晰夢実現機」を譲り受けた時の嬉しさときたら半端なものじゃなかった。この機械は寝る時の夢をいつもはっきりとした夢に返る事ができ、起きた後も記憶を無くさせないすごい代物。夢だから俺が自在に操れる。
 というわけで、ここ数日セリスから告白され、夢の中でイチャラブをしていた訳であるが、ついにそれが現実になった。今度の体育祭実行委員に、俺とセリスの二人が選ばれたのだ! これで夢は必ず思い続ければ、実現するものだと証明した。これから俺たち二人の幸せな時間が……。
「大丈夫? サトシくん」
 後ろから肩を叩かれたおかげで、俺は我に返る事ができた。振り向くと、セリスがいた。
「あ、ああ」
 しかし俺は、素っ気ない返事しかできなかった。現実では、彼女と何を話せばいいかわからない。セリスの青い瞳に見つめられたら、現実と夢との大きな差を感じてしまう。
「ごめんね、緊張してるのは私のせいかな?」
 しばらく沈黙が続いていると、セリスから意外な言葉が出てきた。
「でもサトシくんとはこれから仲良くなっていきたい。ほら、仕事を終わらせといたよ」
 俺はハッとした。彼女が渡してきた書類に目が通らなくなるほど。こんなに親切な彼女を。夢の中で俺は何をしているのだろう。
俺は決意した。もうあの機械は使わない。一刻も早く罪悪感を払拭したい。
「あの、もし仕事が終わったら、屋上に一緒に来てほしい。伝えたい事があるんだ……」

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