IF ONLY 第21話「ライフコンデンサ」

 今日、僕は事故で人を殺してしまった。
 曲がり角での車どうしの事故。向こうの信号無視とはいえ、事実は変わりない。
 彼女の葬儀場に佇む僕。遺族に許可を得て、僕なりの責任を取ろうと考えた。
 棺の蓋を開ける。そこにいた彼女は、死に化粧で美しかった。僕は聴診器型の装置、1分で人生を映し出すことのできるすぐれものを取り出す。イヤーピースを耳に付け、彼女の胸にチェストピースを当てた。
 彼女は幸せだった。恵まれた環境ですくすく育っていった。しかしやがて大人になると、段々と彼女の笑顔は薄れていった。社会の波に疲れ果てた彼女は、ついに車で注意散漫になってしまうほどだった。
 僕は装置を取る。この事故を始め、どんなに蔑まれようと彼女の分まで生きようと思った。それこそが、彼女に対する償いだと思っている。

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