IF ONLY 第4話「クリスマスメイカー」

 しんしんと降る粉雪が、地面に柔らかく積もっていく。その雪を照らしているのは、道の両脇にある家々のイルミネーションだ。
 ここはどこか外国郊外の住宅地だろうか? レンガの建物一軒一軒に、豪華なもみの木が飾られている。窓からは暖かい色が覗いていた。
 そうだ、今晩はクリスマス・イブ。でも、外には人っ子一人いない、静かなクリスマスは初めて見た。哀愁を感じざるにはいられない。思わず見とれていたけれど、ようやく寒さを感じ始めた。
「あら、こんなところ一人でどうしたの? よかったら入りなさい」
 しばらくすると、自分を見つけたとある家の夫人が、見かねたのか手招きしそう言ってきた。僕はなすがままに家の中に入る。
 ダイニングには、夫人の家族数名ん他に、外よりも大きなクリスマスツリー。スターやボールを始め、大きい靴下に至るまで見事に飾り付けられている。その麓には、数多くのプレゼントボックスが転がっていた。
 暖炉には暖かそうな火。テーブルにはシチメンチョウ、ロブスター、シーザーサラダといった豪華な食事が所狭しと置かれている。
 最高の一家団欒の光景。まさにここは天国だった。夫人に勧められるがままに、食事の席につこうとしたその時。
「はい、お疲れ様でした。どうでしたか? あなたの理想のクリスマス、見つかりましたか?」
 その声とともに、シュウヘイはハッと目を覚ました。シュウヘイは思い出す。クリスマスに予定がなかったので、アルバイトとしてこの「クリスマスメイカー」実験の被験者となったことを。
 「クリスマスメイカー」は、文字通りその人に合わせたクリスマスを見せてくれる機械だ。シュウヘイは頭の装置を外す。
「やはりこの日くらい、クリスマスを家族一緒に過ごしますよ」
 外の街には、数多くのカップルがいた。彼女がいないシュウヘイにとって、クリスマスは地獄の日であった。今までは。
 クリスマスの過ごし方は人それぞれ。そのことを気がついたシュウヘイは、急ぎ足で帰路についた。

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