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【観劇レポ】ロンドン ミュージカル 『Hamilton』/観劇時に大切にしていること

ロンドン留学中の女子大生です🇬🇧

先日、ミュージカル『Hamilton』を観劇しました!
名前とポスター (見出し画像の星の、有名ですよね) は知っていたものの、日本未上陸のため、ストーリーや音楽は全く知りませんでした。
一言で表すならば「衝撃体験」、以下で語ります💭

劇場外観


演目『Hamilton』 について

アメリカ建国の父の1人、Alexander Hamilton のお話です。
2015年にブロードウェイで初演を迎え、その後数々の賞を受賞、2021年には舞台映像に日本語字幕がついて配信が開始されたようです。以下詳細。


劇場について

Victoria Palace Theatre は、交通の主要駅であるVictoria駅にあります。
劇場街ではありませんが、近くには『Wicked』の Apollo Victoria Theatreも。

ロンドン生活4ヶ月目にして初めて降りた駅でした。
劇場は駅近で、近くにHamiltonのパネル(?)(下の画像参照) があり、入場前からHamilton感満載でした✨

このようなシルエットが何枚も並んでいます!


内装も素敵で、白・クリーム色を基調とした宮殿のよう。
客席3階建、キャパ1550席、標準的な大劇場です。
もぎりを通過後、1階席は下へ、2,3階席は上へ、階段を進みます。進んだ先にはお化粧室、バー、物販があります。グッズが豊富でした。
劇場各所のシャンデリアやアートも見どころの映えポイントです👀



私は、3階2列目下手側(£86)にて観劇。見下ろす形にはなりますが、見切れ等なく観やすかったです (前回の『Mary Poppins』観劇レポでも同じ位置のお席で全く同じ感想を書いた気が…)。
年末のホリデーシーズンだったためか、価格相場はお高めでした。

開演前 3回2列目下手側より


感想 -衝撃体験

映像を観たり音楽を聴いたりしたことがある方はご存知かと思いますが、すごいんです本作!ミュージカル界の異端児!異質!
トレイラーすら観ずに観劇したので、セットから音楽から驚きっぱなしでした。

客席天井


まず何と言っても音楽。レミゼのようにほぼ歌で紡がれる、ややオペラよりの構成なのですが、何と!ラップなんです!
ミュージカル音楽はクラシックやポップの印象が強かったため驚きました。本作の音楽は、ヒップホップやR&Bに分類されるようです。普段聴く音楽としては苦手なジャンルですが、舞台でキャストさんが歌うラップは嫌な引っ掛かりが一切なく耳に入ってきやすい!メロディーに乗せる台詞 (レミゼ的な) よりも現実離れしていないため親しみやすく、他方でストレートプレイの単調さもない。普通に考えると結びつかないミュージカルとラップですが、意外と相性が良いんだなあと感心しました。
まるで普通のミュージカルをラップ調にリメイクしたバージョンのよう。0から1を生み出す段階で、舞台に乗せる音楽としてこの曲調を考えた人はなんて柔軟で突飛な頭脳を持っているんだろう…
(後々調べたとところ『In the Heights』のクリエイター陣が、『In the Heights』後に『Hamilton』を製作したようです。初代ラップ調ミュージカルは『In the Heights』なんですね🤔)
一方、ラップはイントネーションやテンポがずれる訳にはいかないので、歌に感情を込める、という意味では不向きかなあとも思いました。
その点、本作は出来事を語りながらその中に生きる人物の感情をも描く作品。前者の役割をラップが、後者のをメロディーの音楽が、果たしていた気がします。
そのメロディーの音楽もまた素敵なんです。ラップとメロディーのバランスが良かったです。
'Alexander Hamilton' の名前が歌詞に登場するのですが、語呂が良くて歌にはまっていて、お気に入りフレーズです^^

ただ、きっとこのラップ調の音楽故、日本語上演が難しいんですよね。英語は元々単語の中にアクセントがあり、イントネーションを大きくつけて話す言語だから、ラップにしても違和感がない。しかし、日本語は単調でアクセントやイントネーションの幅が狭い言語。きっと日本語の台詞をラップにあてたら、違和感満載で聞き取りにくいんでしょう。


次に驚いたのが舞台機構。
特に、盆。舞台の真ん中の、回転する丸い床です (以下の写真参照)。
盆を用いる作品は多くありますが、本作はその活用度合いが突出している。曲中もそれ以外も、ぐるぐるすごい回すんです。加えて、回転部分が大きい円とその中の小さい円の2段階ありドーナツ型になっています。大きい円で丸ごと回すこともあれば、小さい円だけ回したり、中心の小さい円を止めて周囲のドーナツ部分だけ回したり、小さい円とドーナツ部分を逆方向に回したり。
なんでこんなに回すんだろう、何を基準に回すタイミングや回し方を決めているんだろう、どんな効果があるんだろう…頭フル回転でした。
音楽に引き続き、この演出を考えたクリエイターさんの想像力や賢さに脱帽でした。
照明にも、以下の写真のように、盆に沿って円を描く等の工夫が。

終演時 3回席2列目下手側より


衣装も素敵でした。昔のお話では女性の華やかなドレスが注目されますが、本作は基本的に男性主体。ビシッとしたジャケットやブーツが格好良い。
また、色使いにも工夫が。本作ではアンサンブルが、各場面のいち人物を演じるだけでなく、時にはダンサーとして、場面の空気感や中心人物の感情を表現します。プリンシパルがカラフルな衣装を纏うのに対し、アンサンブルはクリーム色系の地味な色の衣装。場面を補う・空気感を形成する、というアンサンブルの役割を果たしつつ、ストーリーの軸となるプリンシパルの言動への注意を遮るほど目立ちはしない、そんな配慮が感じられました。

印象に残っているのが、ユーモア担当の King George です。
熱く白々としたシーンが多い中、彼がふらっと出てきてどこか情けなさを秘める声で戯けながら歌う歌が、観客に微笑みを与え、張った糸をふっと緩める役割を果たします。ザ・王様!な王冠や衣装も可愛かったです。
ちなみに、ウエストエンド版のキャストさんはイギリス出身の方々ですが、ハミルトンを始め、アメリカ人役の方はアメリカ英語でした。英語に堪能な観客は「アメリカ人役なのにイギリス英語を話してる」みたいなギャップが結構気になるようなので、そこへの配慮にも感心しました。

肝心のストーリーですが、かなり難しい…
そもそもの題材が事実を基にしており、限られた時間で全てを描くのには限界があるので、予習なしではついていくのが大変です。
状況の複雑さに加え、人間関係も込み入っています。恋愛、ライバル、譲歩、嫉妬、因縁…  持ち歌 ('I want' song 的な) がないプリンシパルも多く、目まぐるしい展開の中で彼らの状況を理解し、感情に寄り添うのが難しい。
事実を舞台にする難しさを感じました。たかが2,3時間で起承転結を描けるような現実ではないですからね。


エントランス


ちょっと後悔したこと、舞台を見る心構えについて

今回の観劇の私的な後悔は、集中力が続かなかったこと。
これは舞台の問題ではなく、自分の精神状態の問題です。

観劇の際に大切なことの1つに「集中」があります。
好きな時に好きな場所で再生でき、一時停止や巻き戻しが自由な映像作品 (映画館上映は別ですが) とは異なり、生の舞台は、決められた時間に決められた場所で、1度のみ上演されます。
観劇は固定の席から。映像では注目すべき行動や表情が勝手にクローズアップされますが、舞台では常にステージ全体で物語が展開されます。照明等により観客の注目先を操る工夫はされていますが、映像のような「画面に映さない」ということができないですよね。
つまり、舞台ってものすごく情報量が多く、それなのに観る側の個人的な都合で再生・停止・巻き戻しができない、高度な芸術だと考えています。
だから、観劇から如何に多くを得られるかは、観る側の集中力にかかっています。舞台で全く同じパフォーマンスが上演されていても、様々なことを考えて様々な視点から観ている人と (極端な話ですが)寝ている人、得られるものが違うのは当然です。他にも、考え事があると観劇中にもそれが頭によぎり、舞台への集中力が極端に削がれることもあります。

だから私は、開演5分前のベル後は精神統一の時間、と決めています。気になること、嫌だったこと、心配なこと、頭にあるあれこれを外に弾き出す作業。無心で舞台だけに注意を向け、そこで展開される世界に没入できる状態を自分で意識的に作ります。
これをやるとやらないでは、感じ方が全く異なります。

しかし今回の『Hamilton』では、心配事があり観劇直前にバタバタしていたため、精神統一の時間が取れず、観劇中もそのことが頭をよぎり、集中するのに苦戦しました。かつ、作品的にもインプットが多く頭を使うため、後半は疲労で思考停止状態でした。
音楽やセット、衣装に最も気を取られたのですが、それらだけでキャパオーバーで、ストーリー(これまた歴史的事実についてなので難しい…) や人物の感情諸々までもを深く考えて寄り添う余裕がない。
ああこんなに素敵な作品なのにキャパが足りない、もっと頭が回っていれば…!と後悔しました。


総じて

個性的な音楽・舞台機構に目を耳を奪われ、こんなミュージカルがあるのか…!と終始空いた口が塞がりませんでした。
他方で、悔しくもストーリーを消化し考え、各人物に寄り添う余裕が今回はなかったため、今後サントラを聴き、時代背景を学び、頭を空っぽにして、再度観劇したいです。演目の内容や各人物の解釈はそのときに。


※見出し画像は『Delfont Mackintosh Theatres』公式HPより


作品情報

Date: 28 December 2022 7:30 PM
Theatre: Victoria Palace Theatre
Cast:
   Alexander Hamilton - Reuben Joseph
   Eliza Hamilton - Shan Ako
   Angelica Schuyler - Allyson Ava Brown
   George Washington - Trevor Dion Nicholas
   King George - Joel Montague
 Creatives:
   Presented by The Public Theatre and Cameron Mackintosh
   Book, Music and Lyrics by Lin-Manuel Miranda
   Directed by Thomas Kail

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