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【連載詩集】No.26 「クラムボン」って何だろう?

 人生において、

 ずっと気になっている単語というのがある。


 たとえば「クラムボン」だ。

 宮沢賢治の「やまなし」に出てくることば。


『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳ねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンはわらっていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。』
『クラムボンは死んだよ。』
『クラムボンは殺されたよ。』
『クラムボンは死んでしまったよ………。』
『殺されたよ。』
『それならなぜ殺された。』
『わからない。』
『クラムボンはわらったよ。』
『わらった。』


「クラムボン」って何だろう?


 ねえ、「クラムボン」って何ですか?


 街頭で、道行く人々にたずね続けたとしても、

 たぶん、誰一人、

 その本当の意味を教えてくれる人は、いない。


 そして、たとえば、

 僕がずっと東京の街で、

「クラムボン」って何ですか?

 と、道行く人に聞き続けたとしたら、

 僕はたぶん、道行く人たちに、

 狂人か何かだと思われることだろう。


 でもさあ。へんだよねえ。

 知らないことを聞くのは、

 わるいことなのかなあ。


 それに、知らないことを、

 そのままにしておくことは、

 はたして、よいことなのかなあ。



 ひとつだけはっきりしていることは、

 たぶん、ひとは大人になると、

「クラムボン」のことを、

 なにも、考えなくなるということだ。



 もういちど、質問してもいいですか?



 あなたは、

「クラムボン」って、

 何だと思いますか?


 そして、

「クラムボン」って何だろうと、

 考え続けることは、ばかげていますか?





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