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牛乳大量廃棄の今、牛乳善悪論を考察する時

 食料が足りなくなる、地球環境のためになると言って、昆虫食が推進されていますが、その裏で畜産業へ熾烈な攻撃がされています。

 news23の報道にて、北海道では20万トンの生乳抑制が目標されていると報道されています。

 こういった矛盾に満ちた報道をいくつか紹介し、今こそ、牛乳善悪論について考察していこうと思います。

廃業に追い込まれる酪農家

 冒頭、もの凄い勢いで生乳が廃棄される動画を紹介しました。上記の報道のポイントを抜粋します。

 牛乳や乳製品ですが、エサ代の高騰などで、値上げが止まりませんこうした中、牧場で乳製品の原料となる搾ったばかりの「生乳」が大量に廃棄されています
 一体、何が起きているのでしょうか?
(中略)
 生クリーム、バター、チーズ、ヨーグルト類。そのあたりが見込みで『90円~120円の値上がりがある』と。
 要因の一つとなったのは、乳製品向けの“生乳取引価格”の引き上げです。
(中略)
 新型コロナの感染拡大による乳製品の消費低迷を受けて、北海道では2022年度生乳の生産を減らすための「生産抑制」が行われています。目標はマイナス20万トン
 生産抑制によって収入が減る一方、ウクライナ侵攻などによるエサ代の高騰で、コストは1.5倍以上に。
(中略)
 対策として、北海道では乳製品用の生乳価格を2023年度から一律で1キロあたり10円引き上げることになったのです。
(中略)
 現場で「生産抑制」が行われる一方で、「カレント・アクセス」と呼ばれる農産物の自由貿易を推進するために設けられた低関税での輸入枠があります。日本は生乳換算で、13万7000トンという上限枠いっぱいの量を輸入し続けているのです。

牛乳値上げ続く中、余った生乳が“大量廃棄”…ナゼ?
収入減で酪農家9割「経営難」に 一方で毎年、上限枠で輸入が【news23】

 news23さんの報道、大変すばらしいのですが、ポイントをまとめていて、だんだん混乱してきました。
 よく考えて見ると「分けわからん、どういうこっちゃ」の連続です。行政の方針が、訳が分からないメチャクチャなものなので、報道内容も、訳が分からなくなるのもある意味、仕方がありません

 自由貿易推進、とくにTPP協定によって、日本の酪農家は、低価格の海外製品との、価格競争を強いられています。
 コロナで消費が低迷したと言って簡単に生産抑制を指示して、供給を減らします。ウクライナ問題でエサ代が高騰し、追い打ちがかかります。そして行政介入で一律値上げ。訳が分かりません。本当にこの値上げは酪農家のためになっているのでしょうか
 ただでさえ、安い海外製品と価格競争している畜産業。値上げしたら、ますます安い海外製品が求められませんか? そもそも、消費が低迷している、需要が下がっているという体なのに、なぜ値上げをさせるのか。結果、生クリーム、バター、チーズ、ヨーグルト類も値上げ。ますます消費は落ち込み、消費者も経営者も、仕入れ先を(海外に)見直します。

 また、北海道における20万トンの生産抑制は2022年度の目標であり、2023年度もさらなる抑制を目標としています。

 さらに

 国は1日から生乳の生産抑制のため、乳牛の殺処分に対し1頭あたり15万円の助成金を出します。

1頭当たり15万円の助成金 ナゼ乳牛の殺処分が必要?(テレ東BIZ)
(Yahoo転載はこちら)

 私たちの税金、乳牛の殺処分の助成金になってます

 子牛がありえない低価格で取り引きされ、買い取り手のない子牛もいる。廃業を考えている酪農家も多い

子牛が1000円? 価格が大幅下落 子牛に何が?(NHK)

この状況でこそ、牛乳善悪論

 ということで、酪農家のみなさんは、とんでもない熾烈な攻撃にさらされています。
 と言うのが、政治・経済のお話この状況でこそ、牛乳善悪論を考察しましょう。
 牛乳が健康に良いか悪いか、断言は中々難しいのですが、色々な側面から考えて見ましょう。

 私のフォロワーさんは半数以上、牛乳を避けていると思いますし。

 最初に、食について、個人のスタンスを明示します。私の食生活は、ゆるい菜食主義で、乳製品、肉、卵はほとんど食べません。

哺乳類の自然現象としての授乳

 牛乳以前に、乳について考えて見ましょう。私たちは人なので、人の乳です。
 明快な自然現象として、人の乳は赤ちゃんしか飲みません成長したら、赤ちゃん自身も飲まなくなりますし、母親の方も乳が出なくなります
 人に限らず、大型哺乳類の多くはそうではないでしょうか。

 ですので仮説ですが「人の乳だろうと牛乳だろうと、赤ん坊でも無ければ飲む必要はない」のではないでしょうか。
 この自然現象だけで「乳を飲み続けるのは、身体に良くない」と断定するのは行き過ぎです。

 ですが「飲む必要はない可能性は高いと思います。
 これらは根拠のない考察ですが、上記の自然現象は事実です。自然の原理には重要なヒントがあるものです。

牛と日本人の歴史

 一般社団法人 全国肉用牛振興基金協会から引用します。

 当初は地方豪族の権力誇示と農耕用に利用され、その数も少なく、屠殺、食肉などは考えもしなったと推定される。各地の風土記や古事記、日本書紀などを始め、万葉集などにも歴代天皇の狩猟の記述があり肉食を暗示しているが、明らかに牛を食したという記録はない
 また乳の利用も盛んで、乳汁を精錬して作った酪煮つめた煉乳様の酥精製した醍醐などが貴族の間で用いられていた。
 牛は農耕用糞尿を利用した堆肥作のために各地で広く用いられるようになった。
 砂鉄や木炭を運搬するために足腰の強い地低な牛が用いられた。東北地方では三陸でとれる塩を内陸に運ぶために牛が用いられるなど

肉用牛の歴史(明治以前)

 牛肉は江戸時代になって、ひっそりと食べられた程度。
 主に農耕用(労働力・堆肥)と運搬用
 貴族間で、牛乳を加工した酪(ヨーグルト)醍醐(バターのようなもの)の記載はあるのに、直接牛乳を飲む文化についての記載がありません。
 どこかには牛乳を飲む地域もあったかもしれませんが、極めて少なかったのだと思います。

きれいごと

 きれいごとではありますが、家畜を殺して、肉を食べることの是非を考えて見ましょう。

 非常に難しい問題で、私はいつもフワッとした結論だけ心にとどめて、ふと何かのキッカケで考え直しています。

 牛の殺処分に助成金をかけるのは、大変けしからんことではありますが、ふと思い直しました。

 それはそれとして、殺される牛の身からしたら、些末ごとではないか、と。税金・助成金というのは人間の政治・経済の事情で、牛には何の関係もないでしょう。
 助成金はともかく、最終的にはお肉にするため殺している訳です。

 牛からしたら、人から「ありがとう、自然の恵みに感謝します、頂きます」と言われても、結局殺されてもぐもぐされるのであれば「何が違うんじゃい!」と怒りたいのではないでしょうか。

 例えば、地球にエイリアンが大手を振ってやってきて「地球人ありがとう、地球の恵みに感謝します、頂きます」と言ってもぐもぐしてきたら「ふざんけんな!」で、反撃にでますよね。

肉と乳のために、休みなく妊娠をさせられる

 マネー現代という講談社系メディアの記事を引用します。

 緑豊かな大草原で乳牛がゆったり牧草を食べているシーンは、テレビやネット広告などでよく見られる。
 しかし、家畜を含めた動物保護活動を行っているアニマルライツセンターの岡田千尋代表は「実際のところ日本ではほとんどが牛舎酪農であり、牛が牧草地を自由に歩くことはない。多くが工場型の酪農で、畜舎内で乳牛を飼っている」と話す。

 牛、豚、肉用鶏、採卵鶏といった家畜の飼育は、日本では、生産効率を上げるための工場畜産が一般的で、畜舎での牛の囲い飼いや繋ぎ飼い、豚のストール(肉用豚繁殖のために母豚を拘束する檻)飼育、肉用鶏の密飼い採卵鶏のケージ飼い等、動物が行動する自由を著しく奪う方法で行われている。
 乳牛の場合、牛舎内では危害を及ぼす可能性のある角が切り取られ尻尾を切る農家もある

多くの人が知らない、牛乳の「深い闇」…「水より安い」のウラにある残酷な現実(マネー現代)

 豚のストールについて補足をします。

「母豚の一生-振り返ることもできない檻「妊娠ストール」に収容され続ける」という衝撃的なタイトルで、アニマルライツセンターさんが情報を出しています。

 また、きれいごとを抜きにしても、このような手法は豚を病気や鬱、運動不足にさせると警鐘を鳴らしています。

 マネー現代の記事に戻ります。

 それは生産効率を高め、なるべく安く消費者に牛乳を提供するためだ。

 動物の飼育環境を改善する考えがアニマルウェルフェア(animal welfare)であり、昨年12月に発覚した事件で広く知られるようになった。
 鶏卵生産大手アキタフーズ」グループ秋田善祺元代表から現金500万円の賄賂を受領したとして、吉川貴盛元農水大臣を収賄罪で、金を渡した秋田元代表を贈賄政治資金規正法違反の罪で東京地検特捜部と広島地検が起訴した。

 メスの子牛の場合は通常生まれて約1年2ヶ月~4ヶ月後に、牛乳をたくさん出すことのできる遺伝子を親から受け継いだオス牛の精子が人工授精され、人間と同じ10ヶ月の妊娠期間を経て、はじめての出産をする。出産後、通常約2ヵ月後には2回目の人工授精がなされ、牛乳を出す期間が途切れることなく維持される。
 牛の寿命は15~20年ほどとされるが、乳牛は毎年出産と妊娠を繰り返し、乳を多量にしぼるため、5~6年で廃牛となり、食肉となる。その繰り返しだ。また飼育場で生まれるオスの子牛には肉牛としての短い一生が待っている
 子牛に与える初乳は母牛の乳首からではなく、人が絞ったものをバケツから与える。しかし、生まれて1週間くらいで母乳から代用乳(粉ミルク)に切り替えられてしまう。母牛のお乳は売り物だから、子牛にただでは飲ませないという訳だ。すなわち、子牛はほとんど母牛と一緒にいられないのだ。


 本来、牛は4つの胃袋に微生物を住まわせて繊維質の多い草の強固な細胞膜を分解することができる。だが、現在牛のエサとして一般的なのは、トウモロコシなどの穀物だ。狭い牛舎のなかで高栄養・高カロリーの穀物飼料を毎日与えられることで、乳牛の消化障害が起きやすい。
 こうした飼育方法が一般化した背景は2つある。1つは、日本の酪農は戦後のアメリカの穀物戦略に組み込まれ、米国産の余剰穀物を利用することが一般化したからだ。牧草ではなく穀物を与え、効率よく牛を飼育するには牛舎が適している
 もう1つに、牛乳の「濃さ」が付加価値となっている現状がある。市販の牛乳パックに書かれた「3.7」あるいは「3.8」という数字は牛乳に含まれる乳脂肪分を示す
 乳業メーカーが1980年代ごろから、牛乳の濃度を競うようになったことに加え、農協などでは、1987年に酪農家から買い取る生乳の脂肪比率を3.5%以上とし、基準未満だと価格を引き下げることを決めたからだ。牛舎飼いで高カロリーの穀物を与えることで、このように乳脂肪分の高い牛乳の生産が可能になる


 このような飼育法とは対照的に、山地に乳牛を放牧させているのが岩手県岩泉町にある「なかほら牧場」だ。
(メリット中略)
 ここでは「お乳は子牛のもの。人間はその“おすそ分け”をいただく」という考えなのだ。当然、牛乳の値段はつり上がる。なかほら牧場の牛乳は720mLで1100円ほどであり、市販の牛乳の何倍もの値がついている。

多くの人が知らない、牛乳の「深い闇」…「水より安い」のウラにある残酷な現実(マネー現代)

ところで酪農家の平均所得は?

 問題の本質ではありませんが、文春オンラインから引用します。

 キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「酪農家の平均所得は2015年から2019年まで1,000万円を超えて推移している。もっとも高かった2017年は1,602万円100頭以上をもつ乳牛農家は北海道で4,688万円都府県で5,167万円だった。数年前まで輸入飼料は安く、酪農経営はバブルだった。バブルがはじけたからといって、国民に助けを求めるのはフェアではない」という――。

牛乳は捨てるほど余っているのに、なぜ値上げなのか…平均所得1000万円超の「乳牛農家」をめぐる深い闇(文春オンライン)

アメリカ式大量生産

 アメリカの『フード・インク』という、ドキュメンタリー映画を紹介します。
 2009年のものですが、食品がどのように大量生産されているか。マネー現代さんの記事のような内容や、そのほかの闇が映像で見られます。

ゆるい採食

 ということで、牛乳善悪論は、栄養や健康関係なしに、倫理的に私個人は良くないと思います。私は不謹慎な話が好きなタイプですが、流石に畜産業界の飼育システムには思う所がありました。

 倫理は個々人の意思が尊重されるべきで、答えは千差万別です。自分の正義を盲信する人には、他人にそれを強要・強制する人がたくさんいます。

 その人の倫理が正しいのは、その人の中だけです。
 私にとっては絶対に正しいことも、他人にとっては絶対に正しくありません。似た意見の人がいても、完全一致はありえません。

 他人に肉食を止めろと強要するなどもってのほかです。
 私自身、完全なベジタリアンという訳でもなく、たまには食べています。

 動物たちに慈愛の心を向けている訳でもなく、どうしても肉が食べたい訳でもないので、肉を食べる機会や回数を減らしてみたり、「今日はいっか」と別のメニューを選んでいる内に、ほとんど食べなくなりました。

オランダ農家政党躍進

 それはそれとして、オランダにて農家を支持母体とした新政党が大躍進しました。2019年10月に結成されたばかりの『農家・市民運動(BBB)』がなんと、第一党になりました。新党が4年で第一党とは、驚天動地としか言いようがありません。

 経緯としては、オランダ政府が、農家・酪農家へ日本政府のような、またはそれ以上の攻撃をしたのですが、それが民衆の怒りを買ったという流れです。とても良いことだと思います。

 ゆるい採食なんてのは、あくまで個人の倫理・個人の食ですから、最初に話を戻しましょう
 政治家や資本家、大企業の都合で生産抑制され、大量廃棄される牛乳。これはこれで問題です。乳製品の値上がりも、多くの家庭や、飲食店にとって困ることでしょう。平均年収高そうですが、廃業する酪農家も困っているでしょう。
 昆虫食にはほぼ触れていませんが「食糧危機が訪れるから昆虫食をしましょう」というお題目もかなり怪しいものです。

 人々を困らせる政府にはオランダのようにノーを突きつけたいものです。
 政治家や資本家、大企業の都合に振り回されるのは、家畜だけではありません。用心深く、嘘を見抜きましょう。

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