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午後のかんだん

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ご自宅や仕事場を訪問。せいかつを感じながら交わした雑談インタビュー
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全員爆笑でまったくの新人監督の映画『日本原』の配給を決めた、彼らの理由

全員爆笑でまったくの新人監督の映画『日本原』の配給を決めた、彼らの理由

「日本一」の低温殺菌牛乳を生産するある牛飼い農家の一年を追ったドキュメンタリー映画『日本原 牛と人の大地』(黒部俊介監督)が9月17日より東京・ポレポレ東中野、大阪・第七藝術劇場での公開がはじまった。

夏のある日、届いた試写の案内葉書にこんな言葉が書いてあった。

〈父が牛飼いになって、もうすぐ50年になります。牛飼いになる前、父は医学部の医学生でした。〉

日本原という場所には一度も行ったこと

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【雑談ですけど】 『さよならテレビ』の阿武野勝彦さんに、ききました。

【雑談ですけど】 『さよならテレビ』の阿武野勝彦さんに、ききました。

「親父は、これが給料袋かと言って仏壇にあげたんです」

『さよならテレビ』(平凡社新書)を書いた阿武野勝彦さんは、東海テレビのプロデューサーで、「人生フルーツ」「ヤクザと憲法」「さよならテレビ」などのドキュメンタリー番組を手がけ、名古屋のローカル局ながら全国展開の劇場映画シリーズ「東海テレビドキュメンタリー劇場」に取り組んできたひと。
岩波書店から番組スタッフとの共著などはあるが、単著はこれが初

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『ノースライト』横山秀夫さんとラークマイルド1㎎

『ノースライト』横山秀夫さんとラークマイルド1㎎



『ノースライト』(新潮社)を読んで、作者の横山秀夫さんをインタビューした。会っておきたい。しゃべっておきたい。話を聞かなければ。そう思わせる作品だ。6年間日々ずっと直していた、というだけはある。昔書いたものに手をくわえるのは大変だ。文章の運びがすごい。一気になんかいかない。考えながら読ませる。

「アサヤマさんが相手だと、どうも煙草の本数が増えるんだよなあ。医者からは控えるように言われているの

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個性ゆたか。さをり織の「工房もくもく」を訪ねてみた

個性ゆたか。さをり織の「工房もくもく」を訪ねてみた



写真撮影©朝山実

 先日、福島県相馬市の工房もくもくを訪ねた。ここはハンデキャップをもったひとたちが働く作業所で、所長の佐藤定広さんとは以前、浜田真理子さんが参加するというので出かけていった手づくりの音楽祭で知り合った。
 音楽祭の主催者というので話をうかがうちに、おっとりした話し口調にひかれ、翌日時間があれば近くを案内してもらえないかと口にしていた。あとでカメラマンの山本さんから怒られた。

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「写真は自分を映す鏡」写真家・鬼海弘雄にきく(後編)

「写真は自分を映す鏡」写真家・鬼海弘雄にきく(後編)


「午後のかんだん」
2020年2月、鬼海弘雄さん宅を訪問しました(後編)インタビュー・文責=朝山実
写真=山本倫子

(前編👉https://note.com/monomono117/n/nc60353b60f1cのつづき)後半では、イッセー尾形のひとり芝居の登場人物群と、浅草の肖像写真「べるそな」に共通するものを話題に……

 鬼海さんが撮影したネガのファイルブックを捲っていくと、うちの父親

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市井の肖像を撮る写真家・鬼海弘雄をたずねる(前編)

市井の肖像を撮る写真家・鬼海弘雄をたずねる(前編)


「午後のかんだん」
2020年2月、鬼海弘雄さん宅を訪問しました(前編)インタビュー・文責=朝山実
写真=山本倫子

「写真、見る?」
 おじゃましてから3時間を過ぎたころ、鬼海さんが平たい紙の箱を取り出し、カメラマンの山本さんにたずねる。ニューヨークの写真展用に紙焼きしたものだという。
「ええー、いいんですかぁ」
 声を躍らせる山本さんに、鬼海さんは、この日いちばんの笑顔をみせた。床に箱を置き

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「営業部長」のネコがいる鈑金工場

「営業部長」のネコがいる鈑金工場



「コウジョウには朝礼とかラジオ体操があるけど、ないのがコウバなんです」
 先日取材したライターのひとに教えてもらった。橋本愛喜さん。『トラックドライバーに言わせて』(新潮新書)というノンフィクションの本をだしたばかりの彼女自身が元トラックドライバーで、金型工作機械を研磨する工場を経営していた父親が倒れ、大学卒業直前に会社を継ぐことになった。
 二十歳そこそこのお嬢だった彼女が突然社長の代役だと

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