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プロとプロの仕事と気持ち テレビという舞台(リング)で

「ジョブチューン」という番組をつい観てしまう。
気付けば、仕事のBGMがわりのはずが、結構ガチで観てしまう。
 
何度か炎上案件にもなったのでご存じの方も多いかもしれない。
 
例えば大手のコンビニやファミレス外食チェーンの人気メニューを、その道の職人というか海外でも活躍する日本を代表する(らしい)シェフやパティシエたちが「ジャッジ」をする。
試食し、合格か不合格かの札をあげて、理由や能書きをのたまう。

のたまう一流シェフだのパティシエだのはなんかパンチの効いた感じの人が多くて、
わざと連れてきているのか、それとも道を極めんとする上でそうなったのかは知らない。

このパンチの効いた人たちがすごく難しい顔で出されたメニューをしげしげと眺めたり、例えばスイーツなら割ってみたり、大きくため息をついてみたり、にこにこしてみたり、という〝THE パフォーマンス〟の後、札をあげ、お褒めや激辛の講評をする。
 
ジャッジをされる側のコンビニだの外食チェーンなどは社を挙げての参戦だ。
営業部長だの開発部長だの社長だのなんだのチームでやってくる。
社内のカラーというか雰囲気やどんなひとが働いているかや人間模様が見える。
なんだこれは。あたらしい形の企業説明会というか公開型会社見学会がわりの映像か、ってくらい。
文字通り判定と講評に一喜一憂。
そりゃそうだ、仕事だ、商品だ、
明日からの売り上げや生命に文字通りかかわる。
プライドと責任もある。
マジの一喜一憂と攻防の模様がテレビカメラの向こうで行われる。
 
判定をされる「もの」には作った人かかわった多くの人の思いと、
オーバーに言うと血と汗と涙と、コストと時間と、いろいろがかかっていて。
判定をする人は、同じスイーツならスイーツで、
それこそいけすかねえけど自分の名前をお店の名前にするほどのクセとプライド、
きっとそのプライドとクセが色となるくらい色々あったり、で、実績や評価をされてきたりしてきただろう人であって。

でも、違う訳。

身近さとか、
ケとハレとか。
コストとか、意味とか意義とか、が。

だから、どちらがいいとかどちらが正しいとか優れているとか、ない。

でも、
この番組は、
そんな、
中華なら中華、洋食なら洋食、スイーツならスイーツ、
ジャンルこそ同じ人たちでも、その居場所というか、そういうのが違う人が、異種格闘技戦というか、異種じゃないけど、対峙する。させる。

テレビという場で、カメラの前の、舞台(リング)で。

それを、我々はテレビを通して観る。
観て、好き勝手を、思ったり、口に出したり、
観終わって買いに行ったりする人も多いみたい。

人間って、ジャッジするのが好きじゃないですか。

ジャッジ、
つまり勝ち負けが決まる決められるみたいなものや、ことは、わかりやすいから。
好きだの嫌いだのという好き勝手なジャッジするししたがるし、
さらに結果が出るジャッジの様子をまるで格闘技の試合のように鑑賞することは「答え」が出る・出されるからこそエンタメ的な楽しみ方をされがちで、わかりやすい。

その答えが答えは決して絶対的に正しいかどうかはわからないし、わからないのに、わからない、けど。

でも、
この場合はプロ(パンチの効いた感じの)、強者(っぽい人々)が我々庶民代表(?)をジャッジする、っていうなんか緊張とヒヤヒヤと感情移入と、「私の大好きなロールケーキが!」「私の好きな生チョコトリュフをぼろかす言いよって!」みたいに肩入れしやすかったりで。
なるほど土曜日のゴールデンタイムにお茶の間に流れ、皆がだらっと観るには、だらっとしながらも緊張感みたいなので、すごいなんか「あり」な企画なんだろうなあ、
炎上も含めてそれだけ注目度が高いねやろなあ、と思わされたりする。
もうほぼほぼオワコンに近いかもしれないテレビとテレビ番組というものにあって、あっても、おもしろいなあ、「へえー」なんて、ね。
 
いつだったか、どこかのコンビニだったかのモンブランの時のやりとりは、忘れ難い。
 
パティシエたちが「不合格」の札をあげて言った。
 
「コレをモンブランと言われては困る」
 
コンビニの担当者は落ち込む、顔色が消える。
 
講評は続く。
 
「コンビニさんのやりたいことやろうとしていることやっていくことはわかる。
でもモンブランは我々の世界でも一番コスパがわるい。こだわらなければ、で。
それを考えるとこれをモンブランと言い売られることは日本の食文化を担う人間として認められないし認めてはいけないと思う」
 
担当の人は思わず涙。
 
するとパティシエはおっしゃった。
 
「泣かないで下さい。泣くことはない。一緒に考えていきましょう」
 
ショーである。TVショーである。
パブである。オールパブである。そういう番組である。
嫌いな例えをわざと使おう。「プロレス」である。
でも(つまり)「ガチ」である。
 
先週(?)は、
合格の判定をもらったコンビニ(ローソン)の担当者が、判定をするパティシエに伝えていた。

「●●さんに憧れてこの仕事を始めました」

パティシエは泣いていた。

涙を拭って拭って言葉を出した。

「ありがとう。一緒に頑張っていきましょう」
 
あとね、あれ、あの瞬間、好きなんだよ、
こっちも笑ってしまうんだよ。
パンチの効いた人たちが、一口食べてにこにこする瞬間。
で、「合格」、
しょうみな話、「なにが合格だよ不合格だよ」って感じなんだけど、合格の札をあげて言う瞬間、こっちも笑ってしまう、うれしくなる。たまになんか泣く。なんで泣く。
 
「おいしかった。ありがとう」
 
なんか、いいよな。

人間って、めんどくさくて、人間で、なんか、ほんと、いいよなあ。

◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。

構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
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lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
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酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話🆕!!)と
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旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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