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その劇場の光の道がほんとうに好きだ

かつては立派な芝居小屋だったのだろう名残の屋根。
漏れ聴こえる音楽の中扉をあける時はいつもドキリとする。
真っ暗な空間、舞台に体ひとつ。
それを本当に一筋と言いたいような光が照らし、魅入る人びとが居る。
脳が痺れるような感覚になりながら客席に座る。
何度訪れてもドキドキとする。
 
先週行けた帰路、ちょっとジワッと来てしまった。

先月は行けたけれど行ききらなかった行けきらなかった。
よく考えるとそれも贅沢というか傲慢な話でもあるかもしれない。
でも今月訪れて扉をあけその空気を感じたときにぐっと。
「ああ、やはりここや。これや」
好きな劇場での舞台ではどの演者もきらきらして見える。
1客席を埋める1観客としては皆平等であり、年月や頻度など関係はない。
でも毎月足を運ぶようになってまあまあぼちぼち経つが
毎回のドキドキは変わらない。
ドキリと共に「ほっ」。「ほっ」とだけれどドキドキ。毎回が新鮮だ。
 
わたしは舞台を観ている際は入り込む。
いいなと思えば思うほどぐっと、
他のことはどうでもええというかどうでもよくなる。
観ている間はただ舞台上の身体と体で聴く音楽と舞台の中身に浸っていた(いる)のだけれど、だから帰路、ジワッと。
行けてよかったからじゃない。それはないとは言わない。
でも、ああ、きれいやなあって。
きれいやったなあ、きれいやなあ。
改めて毎回新鮮に真剣に思うが、また思った。
だからその夜インスタのストーリーにでもアップしようかと思って
でも結局やめた。
きれい、きれいなこと、そんなことをちゃんと書いていたらすっきりきちんとした言葉にはまとまらない。書けば書くほど軽くなりそうで、
言葉が軽くて、いや、わたしは軽くてもどかしい。
 
ほんとうに大事なことや好きなことを言葉にすることは
ほんとうにむずかしい。
言い訳だとは思うし書き屋としては実際に言い訳でしかない。
それでも大事だったりこわしたくなくしたくないものほど
言葉はまとまらなくて、
というのはその世界に居る人びと、愛する人びと、
舞台上の皆も客席の皆も、なんじゃないか、と、とても思う。
特にこのこんな御時世に、言葉と気持ちの海や森には。
皆、愛しすぎているからこそ。
あまりにいろんな人のからだと想いがあるからこそ。
でも、言葉にしたいとも思う、出来ないから、出来ないけど、
とも、なったし、なる。
業界も世界もまわりも皆も己も一寸先はほんとうにどうなるかどうなっているかなんて冗談や誇張ではなくわからない世や時代に、だから。
 
きれいな劇場というのはある。
いろいろな角度からのちゃんとしているとか、
余計なことが目に入らなかったり気にならなかったりするされているところも。
皆がなんの文句もなくそう思える劇場は実際その通りで、わたしも好きだ。
きれいだったりやりやすい入りやすいところと比べたら比べられないかもしれない。
舞台に立つ人たちからしたら「仕事場」として快適さや利便性に関して思うところ言いたいところもきっと絶対そりゃああるだろうそれはぜったいに大事なことだしおろそかにされてはいけないことだ。
そういう意味ではそこは「一番いい」ではないかもしれない。
 
でもわたしは一番好きだ。
 
黒と剥き出しの銀、舞台の赤い絨毯、真っ暗な中の光の道。
 
登場し、想いを身体で表現し、客席の目線と熱を受け、
気持ちや表現の最高潮を演じ、花道を歩き、去ってゆく。
 
なんにもない、いいもわるいもない、
体と想いだけがあって、ライトが当たる。
彼女の彼女らの体と表現したいものとがある。ライトが当たる。
 
舞台と客席の気持ちが交錯したり一緒になったり。
 
出会って、去る。また、出会う。そこで出会う。
 
なにもないから暗いから、舞台が、舞台の上の人が、
ほんとうにきれいに見える。
見入る魅入れるそこが、きれいもそうじゃないも含めて、好きだ。
舞台に立つ人、想いを身体でみせる様々の人たち、
その人たちに想いをよせる様々な人たち。
皆の気持ちを肌で感じながら、魅入るあの瞬間と空気がほんとうに好きだ。
どこのどんな劇場でもだ。でも、特に、わたしは、そこだ。
初めてそこで「宙」の舞台、空中演技を観て、
圧倒的な人間味というか、ああ、言葉は軽い、生きている力を感じたから。真っ暗な中、当たるライトに光るそこの、その。
 
毎月素敵だし、来月もだしは勿論のこと、
7月の真ん中の興行(11日からの10日間)は本当にきっと素敵だ。
わたしには「圧倒的な(皆での)気持ちよさ」を感じさせてくれる踊り子さん、と、踊り子さんたちが、出演する。
 
京都のお寺、その隣の、劇場に。
 
先月の「すごい夜」のことも思い出した。
今月あの夜あの舞台を客席を共にした同士なお客さんと会えて話題となった。
神や仏、スピリチュアルなんて信じない。
けれど、確かにあの夜にはなんかあったというか、
劇場に行くと、あんな夜が、
舞台と客席となにか言葉には出来ないような
肌で体で感じるような瞬間と舞台があって、
それはそれこそ言葉に出来なくて、したくもないような出来ないような、
でも記憶には感覚としてずっと残っていて、
やはり何かの光みたいやなと、思ったりする。
大好きな踊り子さん自身が「春の嵐のような」と喩えておられたステージだった。

#DX東寺


という話はここでも書かせていただきました。
よろしければお付き合いくださいますと光栄です。 

◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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