LBJ ケネディの意思を継いだ男(2018年)【ここまで来たらはっきりと映画感想を言わないといけないですね。「こいつぁおもしろいぞ!」】
ケネディが暗殺された後、副大統領から大統領になった男。
ベトナム反戦運動で人気がガタ落ちして、
一期のみで大統領を降りた。
それが第36代アメリカ合衆国大統領、リンドンジョンソンだ。
しかし、政治家としては面白い。
なかなかのリアリスト政治家、マキャベリスト政治家、リベラル政治家として、むしろケネディより評価されてるのかもしれない。
そう、この人は保守畑でありながら、ケネディ政権に入り、
保守票を当てにしながら、ケネディ政権が着手した公民権運動を完成させた男でもあるのだ。
それはただの理想主義でもなければ、
もちろん権力が目当ての保身だけでもなかった。
両方である。
両方って、それって並大抵のことじゃないぞ!
普通は利権目当てか、あるいは理想だけを求めて政治家になる。
というか、庶民から見た目線の政治家には、その2種類しかない。
実際にはその間に無数のバリエーションがあるわけなんだが。
単なる理想主義者には何もできっこないし、
保身と利権だけでは評価は高くならない。
当たり前のことなんだけど、その当たり前を理解してくれる人が、
民主国家の国民にもいない。
極端な悪か、極端な善しかないと。みんな思ってる。
まるで封建制の時代みたいに。
勧善懲悪のテレビドラマの世界が、現実にも存在していると思っているみたいに。
でも真実はそうじゃない。
LBJはリアリストだ。
リアリストだからこそ、逆説的に理想を持った。
理想を掲げなければ、政権運営できないから。
理想を掲げることがすなわち保身にもなるのだ。
不都合な現実。
政治家が悪でなければ都合が悪い、私たちのゆがめられた現実。
こんな不愉快な現実を、私たちは直視できるのだろうか?
だがこの映画は痛快だ。
南部の白人至上主義者から平然と支持を取り付けるLBJ。
でもケネディ政権に協力してくれれば見返りがあるんですよと説得するLBJ。
副大統領にも権限をもっと寄こせとごねるLBJ。
ケネディというライバルに取り込まれながらも、
自信の影響力の拡大を貪欲に求めるLBJ。
いきなりSPに護衛されながら宣誓を行うLBJ。
ケネディ政権の後継者として、未完の事業を継承すると宣言するLBJ。
そして邪魔立てするとなれば、過去の支持者を容赦なく切り捨てるLBJ。
彼にとっては、人種融和はビジネスだ。
だからこそ、実現できた。
ビジネスとして考えなければ、理想には決してたどり着けないのだ。
それが本当のリアルだ。
彼はいかにも権力者っぽい顔の、俗物だ。
民衆からウケるタイプじゃない。
だけど、仕事はできる男だ。
本当に世界を変えるのは、こういう人物なんだ。
そういう映画である。
評価されるのが遅すぎた男。
そんな男をテーマにした映画が、面白くないわけがない!
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↑ 公平を期すためにLBJの低い評価の理由も紹介しておきます。
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