マガジンのカバー画像

短編小説 まとめ

22
短編小説のまとめです。
運営しているクリエイター

2024年5月の記事一覧

腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

「まさ〜、今、達樹(たつき)の機嫌っていい方?悪い方?」

まただ。

「あっ?………………良いんじゃね?」

「そっか!ありがと!」

「〜〜〜っ!!!俺を介して達樹の事を聞くなーーーー!!」

何でこうなんだ。

「まあまあ、そんな怒らないで。
これでいちいち目くじら立ててたら疲れるよ?」

「疲れたとしてもっ、俺には死活問題なんだよっ!何で皆して達樹の事を俺に聞いてくんだよ!?!本人に聞けば

もっとみる
1滴、貰います 995文字#新色できました

1滴、貰います 995文字#新色できました

僕がしている仕事は、少し…嫌、だいぶ変わっている。一年中割と忙しい仕事ではあるが、1番忙しくなるのが夏だ。

毎年夏になると、社員は皆大きい鞄を持参し、鞄いっぱいに試験管と危険ではない特殊な液体を詰める。

そしてパソコンやスマホを取り出し、各々が担当する事になっている会場へと出発していく。

今回の僕の担当は、野球場。

甲子園をかけた戦いが行われている場所だ。

「毎年のことながら、何だか複雑

もっとみる
帰りたい場所… 1859文字#青ブラ文学部

帰りたい場所… 1859文字#青ブラ文学部

「河瀬さん、今日飲みにいきませんか?」

………また来た。

冷たくて冷酷かもしれないけれど、私は声をかけられて直ぐにそう思った。

「今日は、両親と晩御飯を食べる約束をしているんです。」

何となく浮かんだ理由を伝える。勿論、絶対に信じてもらえないというのも分かって言っている。

けれど、心の中では思ってる。

この理由を聞いて、納得して欲しいって…。

「そうなんですか?……じゃあ、仕方ないで

もっとみる
君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

「私は、上原みたいな人…絶対に好きにはならない」

「私は、私が1番大切だから…」

彼女に言われた言葉は、今でも俺の頭と心に残ってる……。

◈◈◈
「上原〜、お前また女の子振って泣かしたんだって〜?」

大学の近くにある居酒屋に高校時代からの友人、松下と飲みに来ている。

「ふってねーよ。俺が振られたんだよ」

「でも、そのお前を振ったっていう女の子、泣いてたって言ってぜ?」

「………とにか

もっとみる
夜明けの色と香り #色のある風景

夜明けの色と香り #色のある風景

三羽烏さんの企画に参加させて頂きます

🌒🌔🌗
「はあ……疲れた…」

ズボンのポケットから電子煙草を取り出し口へと運ぶ。

息を吸うと電子煙草の味がして、少し不味いな〜なんて思いながら、深い紺色をした夜空に、夜空の紺色と電子煙草の白い息が混ざり合って灰色の煙に変わる。

俺は、都会の街の端っこで『深夜の喫茶店』を営業している。

営業時間は夜の8時から翌日の朝4時まで

祖母の家にあった沢

もっとみる
永久欠番の恋 2390文字(永久欠番のあなたへ)#青ブラ文学部

永久欠番の恋 2390文字(永久欠番のあなたへ)#青ブラ文学部

女性は恋を上書きして、
男性はファイル別の保管をする。

よく、男女の恋愛においての記憶の仕方を、上の様に例える。

俺に限って言えば、その通りだな…なんて思う。

⚓⚓⚓
「はぁ〜、まだ先は長いな…」

俺はクルーズ船の船員をしている。

俺の乗るクルーズ船は半年で始発地から目的地へ行き帰ってくるクルーズ船で、その半年は休みなく働き、残りの半年は、ほぼ休暇になる。

だから、まあ、大変だけど、楽

もっとみる