たさ

本とご飯とお酒そして旅が好きです。特に俳句とエッセイを書きます。体力知力もろもろがとぼ…

たさ

本とご飯とお酒そして旅が好きです。特に俳句とエッセイを書きます。体力知力もろもろがとぼしくつけたくて、色々学び直し中な日々。

マガジン

  • 俳句ときどき短歌のおつまみ鑑賞文

  • 本屋に行きたい

    本屋に行きたい気持ちをまとめたエッセイのようなものです。本屋に行きたい人たちと本屋の話がしたいです。 ※写真は本とは関係ありません。大好きなお店のお寿司です。

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23時の山手線

世界がこうなる前、23時の山手線は熱気と疲労で密度があった。 会社の飲み会の帰りだったか、その日はちまちまと長く飲んでいて(普段なら酔いどれていたのだが)、どことなく冷静に妙な明るさのある車両を眺めていた。 ドア付近で大きく手を叩いて話す集団、端の席で首がもげそうなほど深い眠りについている人、メッセージを打っては目を瞑り、またすぐに確認して目を瞑る人、寄っかかれそうになりながら肩を狭くしてみちりと文庫本を読む人‥ 「次は有楽町、有楽町」 ふいに左が軽くなり、前屈みに鞄を抱えた

    • 「Neverland Diner二度と行けない大阪のあの店で』(スタンダードブックストア編)

      Neverland Diner 二度と行けない大阪のあの店で [スタンダードブックストア編] (ケンエレブックス) もう訪れることができないお店について、大阪を愛する人々が描く、懐かしさとぬくもりが詰まった9編のエッセイ集。 そのうちの一編、「小吸椀」(山本慎二さん)は、山本さんと義理のお父さんが訪れた鰻屋さんでのひとときを中心に、お父さんとの思い出を描いたお話です。 ******* 『好き嫌いのないやつなんて、まったくおもろないな』(P.24) 当時、食べ物をはじ

      • 『まとまらない言葉を生きる』(荒井裕樹)

        著者がこれまで歩んできた日々の出来事を、言葉という切り口から丁寧に観察し、考察する18話のエッセイ集。 『まとまらない言葉を生きる』(荒井裕樹・柏書房) 静かながらしなやかな芯を抱えている文章がぐっときます。 特に、 第七話 「お国の役」に立たなかった人 第一一話 「心の病」の「そもそも論」 第一ニ話 「生きた心地」が削られる に胸を掴まれました。 第一ニ話は介護現場で誤嚥などを防ぐために、小さく切り刻まれるおでんに対し、これはおでんじゃないよな、とふとつぶやかれた言葉

        • WORDLEって何ですか?

          最近TwitterやFacebookに、なんだかかわいい三色のブロックが流れてくるのを目にしませんか。 あれ、WORDLEっていうんだそうです。  1週間前、Twitterのタインラインになぞのブロックがぽろぽろと流れてきて、なんだろうと調べてみると、どうやら英単語パズルゲームのよう。 1週間やってみた感想についてまとめてみました。 もし気になったらぜひとも!(そしてどんな風だったか教えてください) WORDLEって? https://www.powerlanguage

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        記事

          『ぜんぶ残して湖へ』特集より

          佐藤智子さんの第一句集『ぜんぶ残して湖へ』について、大特集がWEBマガジン「週刊俳句」で掲載中です。 キュートでやさしくて、ときおり切ない智子さんの句やエッセイ。 また、いろんな方の鑑賞や句評がとても豪華で、俳句をよくよまれる方も、初めましての方も時々な方も、いろんな方にぜひぜひ覗いてみてほしい特集です。 https://weekly-haiku.blogspot.com/2022/01/769-2022116.html?m=1 自分も以下のようなエッセイを掲載させていた

          『ぜんぶ残して湖へ』特集より

          近づいて遠のいて、

          今日、とりとめもなく、けれど自分の中では真剣に本の紹介文を書いてみています。 本屋さんをぶらぶらとしていた時に、帯の言葉が飛び込んできて思わず買ってしまった本です。 数年ぶりの一目惚れでした。 * 家に帰ってから何度も読みました。 わたしはその本が好きで、よさが伝わって欲しくて書くのですが、どうにも気持ちがこもりすぎて文章がうるさく、窮屈になるような気がします。 かといって、近づきすぎないようにと書き直すと今度はなんだか薄っぺらくなってしまいます。 * その本を買った

          近づいて遠のいて、

          にじいろの海月

          幼稚園の頃の記憶はほとんどない。 もう随分前のことだということもあるし、それなりにまとまって休むことや大事な時に体調を崩すことが多くて、鮮烈な場面にそこまで縁がなかったからだ。 その中ではっきり覚えているのは、壁に描いた海月の絵のこと。 卒園行事の一つとして、各学年毎年テーマが与えられてそれに沿った絵を描くというものだったと思う。 私たちの代は「水の生き物」でみんなが魚を中心に書いている中、私が下書きの画用紙いっぱいに書いたのは海月だった。 白っぽい色じゃなくて虹色の海月。

          にじいろの海月

          幹を考える

          ふと何度も思いだしてしまう光景というものがある。 入社4年目の2021年4月1日、3年間やっていた仕事と東京を離れ、大阪転勤になった。 はじめての転勤、はじめての一人暮らし、はじめての仕事。そして緊急事態宣言、テレワーク。 不安を通り越してわからないことだらけの毎日の中で、何からどこまで手をつけたらいいのかわからないなりにやっていた中で細かい資料を上司に渡していた日々の時のこと。 「これはこの先に保存して使い続けるものじゃないから、まとめなくても大丈夫」 「仕事には色々なこと

          幹を考える

          本に立ち止まる

          だいたい平日は大型書店、週末は個人書店に足を運ぶことが多い。 気を抜くとすぐに本を買って積読が増えてしまうので、本を買うときは自分なりに5つほどルールを設けている。そのうちの一つが ・異なる本屋さんで立ち止まったら購入を検討しても良い というものだ。 先日、銀座の蔦屋書店でなんとなく気になってパラパラした本を、ホホホ座(京都にある個人書店)で発見して買った。 蔦屋書店では平積みされていたけれど、数ヶ月後のホホホ座ではびっちりと本が詰まった本棚の腰の辺りに一冊。時間は経

          本に立ち止まる

          なんだかだめ、をゆるゆると整理してみる

          「あ、だめだ」 なんだかだめ、って日がある。 朝起きてわかる時もあれば、途中から空気が抜けるみたいにだめになる時もある。天気と関係しているときもあれば、脈絡なくくることもある。なんで今日に限って‥という日にだってくる、突然。 ちょうど今日が朝からそんな日で困ってしまった。なんとかかんとか終業し、ずるずると寝っ転がる。 寝返りを打つのも面倒でずっと壁を見ていたが、それにも飽きたので、今の気分について考えてみることにした。 なんだかだめ、ってなんだろう。 体が重い、起き上が

          なんだかだめ、をゆるゆると整理してみる

          メドレーのその先の音

          数ヶ月前にYouTubeのプレミアムに入った。 以降、広告がなく途中で遮断されないのをいいことにメドレーを度々聞くようになった。 メドレーをかけている間は、作業をしている時もあるし、ぼーとしている時もある。 ぼーとしているときは、音楽の言葉がほどよくしみたり、噛みしめたり、時にはっとしたり。 くるくると変わる音楽の穏やかさや激しさ。 言葉にできない言葉を歌詞に、言葉にできない感情を曲にしてくれていて、そこに身を委ねていくような。 海のずっと深くまで潜るような感覚の曲もあれ

          メドレーのその先の音

          餃子に白旗

          餃子がとてつもなく美味しすぎる。 この世に餃子を食べたいという欲に勝てる欲はあるのだろうか、いやない。 夜になってもじんわりと暑い帰り道、 「あ‥餃子、食べたい」 となったら最後だ、もう逃れられない。 一度通り過ぎた「餃子の王将」にいそいそと戻り、テイクアウトの列に並ぶ。 同じようになんだかいそいそとしている人がいて、なんだか嬉しい。この人たちも餃子欲に突如やられてしまったに違いない、仲間だ。 ようやく自分の番が回ってきて迷わず餃子を頼むが、なんだかもう一歩いきたい。調

          餃子に白旗

          本の中で出会うこと

          本を読んでいて、生きている間にこの人に会いたかったと思うことがある。 それはときに衝撃的に、ゆるやかに、あるいはいつかの積読の中に、様々な出会い方があって。 つい最近読み終えた(そのあともう一度読んだ)小山清さんという作家が書いた11編の随筆集「風の便り」の中に、こんな一節があった。 「『好きな人のことを褒めることで生涯を送りたい。』」※ このあとには、こう続く。 「考えてみると、僕は片思いばかりしている男のようです。(略)僕はこうして君にあてて書いていますが、(略)

          本の中で出会うこと

          夜風が吹く、涼しさが混ざる

          昔、 「いまお互いに会っているのに、お互いの話をしないで、他の人の話をするのはもったいない、と思う。」 と言われて、ものすごく衝撃を受けた。 そう言われる前に、私はずっとすごいと思った人について話していて、明らかにそのことを踏まえていたから。 わらわらと付かず離れずのかたまりとして動いていた帰り道だった。 今では考えられないけれど、50人くらいの飲み会のあと、夏の夜の暑さが滲む。 新橋駅に続く道は深夜になってもまだ煌々と光っていて、タクシーが連なっていて。 歩道にはほろよい

          夜風が吹く、涼しさが混ざる

          こころの聞こえ方

          今、一時的に耳の調子がよくない。 簡単に言うと、 ・聴力に差が出ている(聞こえすぎる) ・めまいがまあまあすごい (めまいにほとんど悩まされたことがないので余計にかもしれない) など とても、困っちゃってる。 もう本当にひどい時はまずもって起き上がれないし、起き上がらなくてもずっと目が回っていてしんどいしで、何事もただただ無理な気持ちだったが、徐々に回復の兆しがあるように思う。 昨日たくさん話も聞いてもらって、すこし気持ちにも余裕も出てきたからか、音が普段と違く聞こえること

          こころの聞こえ方

          妄想本屋

          小さなお店が集まった街の一角。 螺旋階段を上がると、雑貨屋さんに服屋さん、輸入食料品やさん、そして本屋さん。 一人暮らしほどの空間に、上から下までぴったりとした本棚、ぎっしりと並べられた本。 端っこにはフカフカのソファ。 静かな空間ではあるが、小窓の奥には風鈴があって、たまにチリンチリンとなる。 レジ横には扇風機があって、作業中の手元にあるたまに優しい風が吹く。 最初、おそるおそる入ってきたお客さんはすっかり自分の世界に入っていて、手元にはがっしりと抱えられた数冊。 上の棚

          妄想本屋