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本の中で出会うこと
本を読んでいて、生きている間にこの人に会いたかったと思うことがある。
それはときに衝撃的に、ゆるやかに、あるいはいつかの積読の中に、様々な出会い方があって。
つい最近読み終えた(そのあともう一度読んだ)小山清さんという作家が書いた11編の随筆集「風の便り」の中に、こんな一節があった。
「『好きな人のことを褒めることで生涯を送りたい。』」※
このあとには、こう続く。
「考えてみると、僕は片思いばかりしている男のようです。(略)僕はこうして君にあてて書いていますが、(略)おそらく、これが君の目にふれることはないでしょう。」※
好きな人の人のことを褒めることで、生涯を送りたい。
なんて、とんでもなくまっすぐで、圧倒的で、それでいて難しいことを言うんだろう。
しずかでさりげなく書きつけられているのに、言葉に確かなてざわりと重みがある。
すごいですねとか、素敵ですねとか、そういうところが好きです、とか。
今を一緒に生きていること、相手に言っても大丈夫なのだという信頼感。
思ったことをその人に伝えられるかどうかというのは、それだけでとてもありがたいことなのかもしれない。
本を読んでいて、生きている間にこの人に会いたかったと思うことがある。
けれども実際に生きているうちに会えること、会える人なんて本当に一握りで、だから心から会いたかった人に会えるなんてことは稀で、会えないままに気が付いたら終わっていることの方がきっとよっぽど多いだろう。
伝えるとなると、もうきっとそれは奇跡に近いだろう。
だから、書くのだろう。伝えたくて、会いたくて書くのだろう。
今日も誰かが、どこかで書いていること、それを読めることが嬉しい。
私、あなたに会いたかったです。
*****
※
http://www.keibunsha-books.com/smartphone/detail.html?id=000000025590
P.12.13
より引用
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