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ヘッジファンドでインターンしてみた。

こんにちは。コロンビア大学MBA課程のMです。

この夏、運よく米国のヘッジファンドでインターンをすることができました。

一部の方にとっては興味があるかもしれないですし、自分にとっても良い思い出となったので備忘録を公開する、という感覚でおります。

それではよろしくお願いします!


自分のバックグラウンド

冒頭で「運よく」と書きましたが、自分は金融業界で働いたことがありませんでした。
ですので、金融出身者を中心に志願者の多いヘッジファンド業界に潜り込むことができたことはまぐれだったような気もします。

じゃあ全く縁もゆかりもないか、というと微妙で事業会社でM&Aは数年経験していました。なので、財務モデルを作ることはできなくはない、という感じです。

とはいえやっていたのは、資産買収であり(会社そのものではなく、会社の資産の売買)、株式の売買はやったことがありませんでした。

なので業界の水準からすると、だいぶ"初心者"といって差し支えないと思います。


選考プロセス

ここは全く参考にならないかと思うのですが、ヘッジファンドは一社しか受けておらず、他社がどんな感じか全くわかりません。

ですのでn=1の、もしかしたら変な選考だったかもしれませんので、あまり真に受けないでいただけると幸いです。

応募の経緯は以下のような感じでした。

自分は主にエンタメ業界に熱意があるものの、この業界は選考プロセスがはっきりしていません。募集があったりなかったりします。そして、あっても数人です。

かたや、コンサルや投資銀行は選考プロセスがかっちりしており、1年生の1月頃にはインターンの内定が出始めます。

大手の内定を手にしたクラスメイトたちは春きたり、とばかりに大いに遊びまくります。
一方で自分は、いつ募集があるのかも分からない業界の機会をあいかわらず待っています。

すると知ったことではありませんが、なんとなく「かわいそうな人」のような雰囲気が漂ってきます。

そのまま2月、3月と時は過ぎ、「あかん」と業界を広げることにしました。
※ちなみに3月中頃からエンタメ業界の求人が出てきました。


インターンには①大学外②大学内の大きく分けて2つの求人があります。

エンタメなどは①大学外が主で、LinkedInなどで「その他大勢」として応募します。これはリファラル(社員による推薦)などがないとまず面接に呼ばれません。

私がインターンしたヘッジファンドは②大学内のもので、コロンビア大学MBA (通称:CBS) の生徒用サイトに求人が載っていました。これは先方がCBSの生徒が欲しい、という意思の表れなので比較的面接に呼ばれやすいものと思われます。

このヘッジファンドはエンタメ業界にも投資していたので、(偉そうにも)自分の中でも「アリ」とさせていただき応募しました。

なお、応募時には「レジュメ (履歴書)」と「カバーレター (ペラいちの志望動機)」が必要だったので、精一杯金融チックにして提出しました。

が、ヘッジファンドからインタビュー(面接)に呼ばれるとも思えず、かなり省エネでいずれも仕上げました。

数日後、驚いたことにそのヘッジファンドのリクルーターから連絡があり、面接をしたい、ということでようやくヘッジファンドについて調べ始めました。

悲しいことに自分はヘッジファンドについて考えたことが人生でほぼなく「ロング(株価が上がれば儲かる)」と「ショート(株価が下がれば儲かる)」についても、どっちがどっちでしたっけ、という有様でした。

そこで面接日時を、提示された中で最も遠い日に設定し(だいたい一週間後)、その間ヘッジファンドとは何かを説明する記事を読んでまわりました。

その過程で、応募先ヘッジファンドについても情報収集を始めたのですが、上場しているわけでもないのでろくに情報がありません。
そこで投資銀行出身のクラスメイト数人に急遽相談し、「ここに投資していると思うよ」「こんな投資方針だと思うよ」「こんなこと聞かれると思うよ」と言ったアドバイスをもらいました。
※投資銀行の人たちはみんな口を揃えて「投資銀行とヘッジファンドは全然違うよ〜」と言っていましたが、当時の自分は大いに助けられました。

そのアドバイスをもとに、「ざっくりとした金融トレンド」「注目している銘柄」などを手元で用意し面接に臨みました。


面接は全部で4回ありました。
第1回:リクルーター
第2回:現場リーダー (自分のボスになる人)
第3回:代表
第4回:現場リーダー

詳細は割愛しますが、モデリングテストはなく(あったら落ちていたと思われます)、その代わりに「Investment Memo (特定の銘柄への投資をお勧めするレポート)」の提出を要求されました。

このヘッジファンドは日本株に投資をしていたので、とあるニッチな日本株について、アメリカにいては入手できないであろう情報をふんだんに盛り込んだレポートを作成しました。
単純にこれが選考における勝因だったかな、と思います。

あとはヘッジファンドは業務で使う用語が他の業界(コンサルやエンタメ)に比べると限定されやすいので、英語面でのハンデが比較的小さかったような印象もあります。
そういった意味では日本人におすすめかもしれません。


業務

ここは書けることがほぼありません。
が、自分の担当は「リサーチ (調査)」でした。

少し特殊な事情としては、本来は3ヶ月ほどのインターン予定だったのですが、その後エンタメ企業からもインターンの内定をもらったため、両方できるよう1ヶ月ほどの短期インターンに調整してもらった、というものがあります。

そこで業務の内容も絞られ、本来であればやるはずだったであろうゴリゴリのモデリングなどはほどほどに、とある銘柄について徹底的に調べる、というリサーチ業務に集中しました。

ヘッジファンドの特徴として、「市場の評価」と異なる「独自の評価」をすることが重要であり、思ったよりも泥臭いというか、電話インタビューなどウェットな情報収集をとんでもない量やるのだな、とそもそもの業務姿勢における発見感がありました。

結果、"足で稼ぐ"感はこれまでのどんなビジネスよりもある気がしました。

そういった意味で非常に労働集約的だったリサーチの集大成を、最終日にNYで代表・ボスに発表し「こんな綿密に作られた資料は見たことがない」とお褒めいただくことで少し報われました。

曖昧でしたが、継続して働くこともできそうです。



感想・まとめ

・MBA不要論について、その通りだと思う点は多いものの、海外就職という点では未だ強力だと思われる。

・この求人は大学に個別に来ていたものだったので、進学先選びは重要だと思われる。

・ヘッジファンドの業務はBullshit Job (クソ仕事)と呼ばれることもあり、世の中に創造的インパクトを与えているとは感じにくいだろうと思っていたが、偉くなれば景色は変わってくるだろう、と代表・ボスと話していて思った。業務は良い意味で泥臭く、脳力・体力がいるが、知的好奇心がくすぐられる間は意外と疲労しない。だが所詮一ヶ月のインターンなので、色々と的外れかとは思われる。

・日本没落論について、確かにかつての勢いはないかもしれないが依然世界でもトップ5の経済大国であり、投資先としては魅力的。一方で日本語という参入障壁が非常に高いため、日本語・英語のバイリンガルが重宝される。米国企業を顧客とした、日本市場を調査するコンサルタント、みたいなことはまだまだ需要がありそう。

おしまい


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