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映画『ラストマイル』を観た話。#映画

この記事には、本編を鑑賞するにあたり回避すべき重大な #ネタバレ を大多数含んでおります。ぜひ鑑賞予定の方は躊躇せずブラウザバックしてください。てか絶対してくれ。絶対に。観終わってから読んだ方がいい。

この夏の邦画の目玉中の目玉が
ついに!!公開!!いやー超楽しみでしたよ。

制作発表以来話題が話題を呼び、SNSでも期待する声がバンバン上がっていた映画「ラストマイル」!!私も勇んで初日にキメてきました。もうね、語らずにいられるかという仕掛けとサプライズの数々。凄かったです。怒涛の2時間を今回は骨の髄まで語ります。



いいね?いいね?こっからスゲーネタバレするけどいいね?俺言ったからね?文句言われても責任取らんよ?そこまで言うなら、じゃあスクロールしてどうぞ。




2016年「アンナチュラル」・2021年「MIU404」と、近年のTBSテレビの歴史に残る大ヒットドラマを生み出した監督・塚原あゆ子&脚本・野木亜紀子のスペシャルタッグマッチが実現。おまけに主題歌は米津玄師続投。もうファンからしたらこの時点で言うことなしなんですよ。文句のつけようのない正当な続編。

で、もっとすごいのが「アンナチュラル」と「MIU404」が実在する世界線上で今回の「ラストマイル」の話が展開していく、ということ。邦画実写最高興行収入を叩き出した「踊る大捜査線」シリーズは言わずもがな同一ドラマからの映画展開でしたので、今回はそれとはまた違う形での映画化というふうになりました。

あ、一応補足しますが別にドラマ観てなくても、脇固めてんのが石原さとみとか綾野剛とか星野源とかメタクソ豪華すぎんだろ助演で終わらせんなよ、って感覚で見ていただけるのでそんなに気負いはしないでいいです。一応復習しといたらかなり楽しめると思いますが。


今回は「通販」もとい「物流業界」に焦点を当てた作品。普段何気なく使う通販サービスが、突如人名を奪うテロ装置になったとしたら?という発想を起点に物語が進行していきます。しかもよりによって通販業界最大のイベント「ブラックフライデー」に被さるように事件が始まる。

またね、この主演・満島ひかりの役がどハマりなんですよ(なんでも脚本は満島さんをイメージして作成された「当て書き」だそう。)。外資系企業にスッゲー居そうなドラスティックでバリバリ仕事が出来るし、でもちょっと抜けてて愛される地の性格の感じ?いいよね〜。ある意味理想の上司像をきっちり描いている感。

部下の岡田将生も、仕事とプライベートはきっちり分けるきっぱりした性格、挙句上司に振り回されるわ現場走らされるわで、凄くハマり役でした。こういう作品でよく取られる「事件を解決するためのバディ関係」としては100点と言ってもいいぐらいの空気感を醸し出してくれます。この二人見てるだけで観客はなんとなく安心できます。

最初は自社の看板製品となるスマートフォン「デリフォン」が爆発した?という疑惑から物語は走り出すのですが、すでにここから観客を騙すミスリードは始まっています。はいココ絶対にまず頭に入れておいて。


序盤ラスト。SNS上に「1ダースの爆弾」と書かれた投稿=犯行声明を発見した際その糸口になったのがSNSのニセ広告。「デイリーファスト」が「デイリーファウスト」と書き換えられた部分を満島センター長が発見して・・・最近特に話題になってますよね?SNSの詐欺広告。こういう感じで日常に潜む闇が一つ一つ事件のトリガーになっていくんです。

すげぇよ野木亜紀子。
俺が逆立ちして世界10周ぐらいしてもこんな脚本書けねぇよ

中盤でエレナが実はこの爆弾事件の犯人なんじゃね?説を匂わせる感じも、それを払拭させるための展開を仕込んで、結果的に部下・岡田将生と絆を深めさせる展開とか、もうね、巧妙すぎる。観客を手のひらの上でコロコロ転がされていますチッキショー。

さすがにテレビドラマ1時間の尺感を熟知されているので、映画2時間でも退屈しないどころか超展開過ぎる大胆な進行をされてます。1分目をそらしたらもう別の場所でドカン!してたり、謎を解くためのヒントが見つかっていたり、テンポ感が凄く軽妙。

また、肝心のドラマ2作品とのリンクですが全く無理やりでなく、むしろものすごく自然です。最前線で犯人を追い捜査する「機動班」=「MIU404」と、爆発で犠牲となったご遺体を解剖し謎を解く「法医解剖」=「アンナチュラル」と、この事件の解決に密接に関わる部分で非常に重要なヒントを握っています。


で、もう一つの重要なテーマ。
「物流業界の過重労働」。

この脚本はかなり前に作成されていたらしく、図らずも「2024年問題」を孕んだ現在の日本の状況にもかなり重なる結果となったらしい。通販企業の「送料無料」と、客の利便性に板挟みになって犠牲になるのが、運送会社。この作品でも「デイリーファスト」と運送会社「羊急便」の2社間で激しい攻防が続きます

最初は何が何でも物流を止めるわけにはいかない2社の責任のなすりつけ合いから、限界を超えた物流の犠牲となる配達員の暗い現状が見え隠れする状況に。この辺の役どころもまぁハマってるわハマってるわ。阿部サダヲの重役と現場に板挟みにされる配送センター長とか、末端のベテラン配送員親子とか。「絶対に日本のどこかに今こういう人が居る」という説得力が絶妙にある人選。

塚原監督は時々残酷なまでにエグいリアルな描写をして観客の脳天をぶち抜くんですけど、我々の「WANT」を支えてくれる物流がたった1個数百円の稼ぎで蔑ろにされ続けているサマや、商品が届かないことに対して殺到するクレームがまるで罪人を収容する監獄のようなコールセンターで粛々と処理されていくところとか、見てられないぐらい苦しい。

これでいいのか通販業界、と思わざるを得ません。
塚原・野木コンビの底力をここでも見せつけられます。









で、もうこれだけは黙ってらんないから
「「「超重大サプライズ」」」ですけどちゃんと書いときます。

NHKドラマ「あなたのブツはそれほど」でキャバ嬢から運送会社の配達員に転身したシングルマザー役を熱演した仁村紗和こんな重大な役やらせるとは・・・塚原あゆ子、あんたオニだね。あたしゃまる子だよ。

マジスクリーンで見てて声出そうになったわ。嘘だろ、出てきてくれて嬉しい!という気持ちと、嘘だろ…こんな残酷な役回りなのかよ…って思ってうわぁ…ってなってしまった。後半からはもう感情移入の嵐です。冷静にスクリーンを見れない。

この物語の一番最初のトリガーとなった、ロジスティクスセンターの元従業員(ココもまさかの中村倫也!!!嘘だろ!!)と、彼の死を機にデイリーファストへの復讐を誓った恋人役(仁村紗和)の登場はまさにトップシークレット。事前予告もなし!!映画のパンフレットにもなんとまさかの「袋とじ」で登場するという厳戒態勢。あ、みなさん見終わったらパンフ買ってくださいね。カッターで開けたらそこに全ての謎が種明かしされてますから。

公開前に新宿でプレミアイベントやってたでしょ。
出演者が揃ってレッドカーペット歩いてってやつ。あれ中村智也と仁村紗和も入れてもう一回やってくんないかなぁ〜ネタバレ解禁後でいいからさ。こんな重要なお二人がトップシークレットだから表に出られないのマジ勿体無いって。

塚原監督〜。絶対狙ってたでしょ。だからこの人選なんでしょ?って監督に聞きたくてウズウズしちゃう。わかる人にはわかる実に巧妙な仕掛けが最高に痺れました。

事件は最終的に大きなうねりを社会に生み出し、ストライキによる物流機能の完全ストップ、そしてデイリーファスト社との輸送費値上げを求める団体交渉へ展開していきます。犠牲となり続けた者たちの底力を出した反撃。一人では何もできなかったが、事件を機に多くの人の団結を生み出し、決して止まることのなかった物流のベルトコンベアを止めた。

そして事件の真相が全て語られた後、もう一度物語の最初に戻るかのように挟み込まれる空撮、そして「WHAT DO YOU WANT?」の電子音声。冒頭に挟み込まれたそれとは全く違う意味に聞こえます。この世界で一体何を手にしたいのか。自問自答せずにはいられなくなります。






でまたエンドロールのさ、米津の歌が良いわけよ。

「アンナチュラル」主題歌「Lemon」全世界規模のヒットとなり、社会現象を巻き起こした米津玄師が今作でも続投。新作書き下ろし曲をぶちかましてくれました。主題歌が最高だったら映画ってまあなんとなく許される感じあるじゃん。でもそんなレベルじゃないもの。この主題歌までなかったらこの映画完成しないってぐらいまである。そんな主題歌のタイトルが「がらくた」て。攻めすぎだろ。

でもここまで登場人物の心情や行動に寄り添ったベストな主題歌を提供してくれてありがとうという思いしかないです。この気持ちはぜひみなさんにも全て見終わってから味わって欲しいので、あえて詳しく書くことはしないでおきます。おかげさまで私のYouTube MUSICはこの2〜3日「がらくた」しか再生していません。


いやー面白かったな〜〜あと5回は観たいな。今までの映画レビューの中でも一番の分量使ってとにかく語りたいこと語らせていただきました。それぐらい2時間が濃密で、飽きない。間延びしない。最後まで見たら「もう1回観たい」と絶対に口にする、そんな作品になっています。

あと、普段私も通販サービスを使う時はなるべく再配達しない、させないために「コンビニ受け取り」「ロッカー受け取り」にしたり、各運送会社のアカウントを作って荷物を事前に受け取り変更できるようにしてお手間を取らせないようにしています。

この世界の便利さを影で支えてくれている
全ての配達員の皆様へ愛と敬意を込めて、
この作品を心に残そうと思います。

映画「ラストマイル」全国東宝系で絶賛公開中です。
夏の終わりにノンストップクライムサスペンス。
ぜひどうぞ。



おしまい。



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