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女ひとり酒さん@note

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女ひとり酒さん(@sake_lonelygirl)のストーリー。 ぜひインスタグラムアカウントとともにご覧ください。 instagram.com/sake_lonelygirl
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ひとりの夜、延長戦は子持昆布をお供に

ひとりの夜、延長戦は子持昆布をお供に

わたしは夜を延長することができる。

あと少しだけ自分だけの夜があれば、きっと明日からもがんばれる。そんな時に、夜を延長する魔法を使う。

家に着けばもう、「今日」が終わってしまう気がするから、わたしは逃げるように夜更けの街を歩く。

延長された夜の舞台パソコンが入った重たいかばんをものともせず、帰り道の最短ルートを無視して脇にそれる。暗い川べりを抜けて、赤や緑のネオンの下を潜り、ズンズン大股で歩

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梅雨に色めく白ワイン

梅雨に色めく白ワイン

「金曜日の解放感」ってあんまり感じられない。なんでだろう。そんなにしんどくないからかもしれないし、どうせすぐ月曜日が来るじゃないかと思っているからかもしれない。

帰り道、電車の中はむんわりしている。梅雨のにおいと金曜日の空気が混ざって、この上なくむんわり。けれど、今日は雨じゃなかった。一日中ずっとくもり。「関東地方では夜から雨が降るでしょう」と今朝の天気予報が言っていたが、見事に外れ。梅雨の天気

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気の利いた小鉢にキュンとする女ひとり酒

気の利いた小鉢にキュンとする女ひとり酒

メイン料理よりも添えられた小鉢に心を奪われることがある。カウンターに置かれた「ご自由にお取りください」なつまみもまた然り。奇をてらう必要はない。具材だって一種類で構わない。メイン料理を待ちながらビールのあてにちびちびつまんでいたはずが、その箸が止まらなくなって「メイン料理よ、まだ来なくともよい」とついつい思ってしまうような、そんな罪深き小鉢たち。

珍しい平日のぽっかり空いたお休み。雲ひとつない晴

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煮込みが正義の女ひとり酒

煮込みが正義の女ひとり酒

煮込みが美味しいともうお手上げだ。お酒の前に全面降伏。心を覆う殻も強張っていた表情筋もほどけて、湧き立つ多幸感を止めることができなくなる。

その店は入り口側が一面ガラス張りで、中の様子が遠目からもよくわかった。ちょうどお店の人が路面の立て看板を直しに出てきたので、道路を渡って声をかけた。ひとり、入れますか?

「歓迎」を一面に表した笑顔で、その女性は私を中へと誘った。キッチンを囲うように仕立てら

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ソファとブランケットとビールの女ひとり酒

ソファとブランケットとビールの女ひとり酒

三連休の真ん中、西日が部屋に差し込んだ頃、お出かけしようと決めた。

お出かけしようというか、しなきゃだった。ある種の強迫観念が私を襲う。日が暮れたら間もなく、一日が終わっちゃう。夜になる前に外へ出なくちゃ。

出不精とは真逆のタイプなのか、私は一日中部屋にこもることを良しとしないタイプの人間だ。劇的なイベントがなくったって日光を浴びながら街を歩きたい。一日一日を丁寧に消費したいという欲求。

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仕事モードをオフにするための女ひとり酒|82ALE HOUSE 品川店

仕事モードをオフにするための女ひとり酒|82ALE HOUSE 品川店

予定通りのスケジュールで勉強会が終わった。スマホの時計は18時半を示している。終了の合図とともにできあがった講師の前の長い列を横目で見て、私はため息をついた。首から名刺の入った名札を下げた主催者たちの前を俯きながら通り過ぎ、100人の体温が籠った会場を出た。

この勉強会が終わったらひとりで飲みに行く。そう決めていたから、歩みに迷いはない。目指すは会場と品川駅の間にある82ALE。HUB系列の英国

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