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子供が聞きたいのは、一般的な話ではなく、あなた個人がこの世界との間に紡ぎだしたストーリー。

私たちは、毎日なるべく考える事から逃げている。考えたくないから、ただ反応するという事に逃げている。生きていくには、何かを深くまで思案するのではなく、ただ目の前の現象に対して反応しているほうが楽だからだ。

私たちは、大人になるにつれ、賢くなるのか、馬鹿になるのか?それは定かではないが、何でもかんでも合理的に考える様になっていく。不合理な事は排除して、何でもかんでも合理的に考えたり、行動しようとする。その方が、スマートな生き方だと何故か、不思議と思う様になるのだ。

子供というのは、毎日毎日、本当に不合理な事で悩んでいる。何で雨が降るの?どうして、夜は暗くなって、朝になると明るくなるの?どうして太陽があるの?どうして月があるの?惑星って何なの?どうして空に星があるの?

幼い子供と一緒にいると、本当に彼らは多くの事を考えているんだと思わされる。こうした子供の問いに、私たち大人というのは、あまり面白い夢のある回答を子供に与える事が出来ない。

私たち大人は、いちいち何故、朝に日が昇り、夕方に日が沈むのか?なんてことは考えないし、何故、空から雨が降ってくるのか?なんてことは考えない。私たち大人にとっては、そう言った全ての事が当たり前、つまり自明なものとなっている。だから、そう言った問いを持つ子供に対して、本当につまらない解答しかしてあげられない。

私たちは、雨が降る原理も、朝日が出て、夕方沈む太陽の原理も科学的に説明できる。だから、その科学的な説明を子供にしてそれで終わりになる。

子供がこの時期待している答えというのは、本当に科学的な解答なのだろうか?私たち大人が与えるこの科学的な答えによって、幼い子供たちのこの不思議で一杯に満たされている世界は、その不思議さを一気に失い何の面白さも持たないつまらない世界に色あせてしまう。

彼らが聞きたいのは、科学的な答えではなく、もっと別の答えなのではないだろうか?何故?何故?と聞く子供の目には、この世界に対する好奇心、何なのか未だに分からないものに対する好奇心が溢れている。彼らはこの世界を肯定的に見て、そしてこの世界を何処までも愛おしいものとして捉えている。だから、彼らの目はいつもキラキラと輝いている。でも、こうした子供の持つキラキラとしたその目の輝きを、私たち大人が少しずつ奪い取っていく。私たちが子供に教えるのは、この世界のつまらなさ。汚さ。

子供というのは、この世界に対して、これ以上ないほどの好奇心を持っている。色々な事を知りたくて、色々なものに触れたくて、とにかく、この自分の生まれてきたこの世界が大好きでたまらない。そんな世界を、私たち大人が少しずつ汚して、その子供の大好きな世界を奪っていく。

私たち大人が、子供に言うのは、此処はおとぎ話の世界ではないという事。この世界は、あなたが思っている様な綺麗で美しい世界ではないと、私たち大人は子供に言う。大人になるという事は、この世界があなたが思っている様な世界ではないという事を知る事だ!とそう大人は言う。

こうした大人たちの放つ言葉に対して、子供たちは段々と幻滅していく。自分がこうだと思っていたその世界観は、大人たちのこうした発言により潰れていく。そうなると、いつしか、そうした子供たちも、自分たちが憎んだ大人と同じように、何でもかんでも科学的、客観的解釈こそが全てだという思考に落ちていく。あんなに楽しかったはずの世界は、退廃した世界へと転落する。

私たちは問う事を知らない。いつからか、問うという事をあきらめた。何でもかんでも科学や客観的なデータに基づいて判断し、自分自身で何かを問うという事は全くもってしなくなった。本当につまらない人間になってしまった。

何かを問い、そして自分なりの回答を出す。これだけが全てではなく、自分なりの答えを出す。今は、皆がそれをどう思ったか?どう解釈したか?という事の方が優位で、自分がそれをどう解釈し、どう思ったか?という事はあまり歓迎されないが、私個人としては、この私自身がそれをどう解釈し、そしてどう思ったのか?という事の方が大切なんじゃないだろうか?と思ったりする。

でもって、子供たちが私たち大人に求めているのも、この私個人がそれをどう解釈し、どう思い捉えているのか?という事なのではないだろうか?と思ったりもする。彼らは客観的な皆がそう思い信じている一般的な事柄を聞きたいのではなく、私たち大人が持っている個人的な解釈を求めているのではないか?と思ったりする。

彼らは私たち大人が、個人的に持っている神話。それを聞きたがっているのではないかと思ったりする。

あなたはそれをどう捉え、どう解釈し、そしてそれらをどのようなストーリーとして、自分の物として持っているのか?子供というのは、そのストーリーを私たちに聞きたがっているのではないだろうか?

あなたは、この世界をどのようなストーリーを持って捉えているのか?あなたはこの世界とどのような関係性を持っているのか?この世界とどうつながっているのか?あなたとこの世界の繋がりは?

子供のあのキラキラと光る眼を見ていると、そんな風に聞かれている様に思ったりする。あなた個人のストーリーを聞かせて!と・・・・。皆の意見はどうでもいい。皆の考え、一般的な解釈なんてどうでもいい。あなた個人のストーリーをと。

私には残念ながら、子供はいない。でも、何かで幼い子供と向き合う時がもしあるとするならば、私は、こうした子供に対して、しっかりと自分の持つ個人的なストーリーを語ってやりたいとそう思っている。それを語る事で、この世界との繋がりが取るに足りないつまらないものだと思う様な事のないように、このあなたが生まれてきた世界は本当に素晴らしい夢のある世界なのだとそう伝えられる様になれたらなんて思ったりする。

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