みゆき

九州在住。命のながれ 自然への回帰のまなざし   詩・短編未来小説・photo …

みゆき

九州在住。命のながれ 自然への回帰のまなざし   詩・短編未来小説・photo artなど http://planetmyk.wixsite.com/miyukikubara http://botanicaltraveler.blogspot.com/

マガジン

  • 超短編小説集 ~かりそめのまなざし

    時空をこえた記憶の断片たちが、ひとつの宇宙の旅へ結びます

  • a moment a dimention

    夢にあらわれた世界をshort storyにしました。

  • ひとのなかの自然  自然のなかのひと

  • いのちのことだま

    いのちの うた

  • l o s t i n t h e p l a n e t

    ... 2000年!あたり、20代前半から綴っていたメモから抜粋した一編です。 あのころ見ていたアジアからヨーロッパにかけ移ろう景色や不安やあるひとへの想いは・・・ ただ世界への愛おしさとして今ものこっています。 世界が分断されるようなこの時世に、再び記録を残そうと思い立ち、この場を借りさせてもらいました。  感謝!

最近の記事

かりそめのまなざし 4.瀬戸際のアルバトロス

このまま行こう 男の太い声で、ランタンの灯りに晒された数名の黒々した人影はゆらゆらと持ち場ついた。 波は一段と大きくなって襲ってきた。大きくうねりながら船は鈍い金属音の悲鳴をあげる。わたしは叩きつける雨で視界を遮られながらも、複雑にうごめく波の道筋を見定めようとした。 絶望、というに相応しい鉛色の景色。 こんなとき、船のボルトの緩みから船員同士の伝達の行き違いまで、ほんのささいな事が、すべてを海の藻屑へ変えるに十分な要因となり得る。荒波はいつでもその準備ができていると

    • かりそめのまなざし 3.祝福の星空

      鮮やかに  世界は転換してしまった。わたしたちが節目の祝いと船内設備の準備をしている間、純白の太陽光はまるで永劫の別れを告げるようにして船の窓から消えてしまった。 これから地球時間で数年間ほどの夜がまたやってくる。 ともなって私たちは、より静かになっていった。 昼と夜、どちらが好き? ・・・夜 わたしが答えると、ちょっと驚いて、うんざりするようなため息が聞こえてきた。 太陽が隠れると、深遠なる暗闇に無数の星たちが輝いている。それを見るとわたしのこころも深く、どこま

      • かりそめのまなざし 2.バラ園の静かな幸福

        伸びた髪に、優しくそっと手を置いた。 娘は顔をあげず、じっと動きを止めていた。 窓の外では、手入れされた薔薇が日差しの中ピンク色に輝き、揺れるマリーゴールドに蝶がとまった。 ゆっくりと時が流れている。いつもと変わらない。ただ、日々共に過ごすこの娘だけが絶えず変化していた。外見は徐々にわたしに似てきている。しかし裏腹に、何を思っているのかますます分からなく、ますますミステリアスになってゆく。最近はあまり微笑みもかけず、面白くなさそうに顔をわたしから背けるようになった。 わ

        • かりそめのまなざし 1.内海の菊

           出発の時間だった。 なのに、もう留まる用もないこの界隈を無意味にさ迷っていた。草鞋は泥を落としてふたたび真新しく、旅立ちを待っているのに。雨上がりの濡れた赤土を無意味に踏んで。 気づかなかったが、ほんの一月ばかりいたこの町が好きだったのだ。永らくの旅暮らし、特に不満はなかった。けれども遠い昔、居を構えのんびり暮らしていた頃を思い出したのかもしれない。ここはそんな温かさがあった。 道の脇、花が咲いている。よくある野菊だ。小さくもいきいきとして、どこか幸せそうだ。まるでそ

        かりそめのまなざし 4.瀬戸際のアルバトロス

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        • 超短編小説集 ~かりそめのまなざし
          4本
        • a moment a dimention
          15本
        • ひとのなかの自然  自然のなかのひと
          11本
        • いのちのことだま
          22本
        • l o s t i n t h e p l a n e t
          25本

        記事

          Artificial Independence day

          金色の 茜さす 背景が大きければ大きいほど その淀みにそっと寄り添うあめんぼのようだったとしても あたかも何気に塗り替え可能な Wall Paperのように目に映る 短いいのちの人間たちには 塗り替えてきた  大切に築いてきた地も 町も 文化も 人間味も 美も 優しさも 汚濁とともに 惜しげもなく捨て 求め 描きなおしてきた均質なパーフェクトワールドは とてもきれいで 親切で        古きを覆して機械になるための 無数の個々人の努力も AIという依り代に譲り

          Artificial Independence day

          きえない ひかり

          いま 山々を まえ 消えていった すべての光景を ここにいる わたしの目は  包み込んでいた ひとしれず それこそ あの時代の衝動の 真の目的地なのかもしれない はじめから おわりまで  ただ もっていた 消えない光

          きえない ひかり

          ときをたびする目

          ときの輪おさめ   あまつ 満ち満ちたとしても 湧きあがる憧憬 暗く凍てつく 雪のやま ひとがまだ 希少に  とうとかったとき あばら屋街に 身を寄せていたとしても 隠しもしない猥雑さに 身を浸していたとしても わたしという世界の目に  ひとは   ただいとおしかった 宙は広大すぎて 山々も 海も  あまりに おおきく わたしという存在を消しさらんばかりで そのどこにも行き場なき  旅するものの こころぼそさは すべてを ただうつくしく   か

          ときをたびする目

          生まれ日にて

          道が開けた   山々が遠く続く  雲の群れが移動し わたしたちはその動きを真剣に追い 走る 鳥たちが あっと上昇した ついさっきまで 自身とふたりの未来に絶望していた  わたしが ふたりが 風になる 逃げていた   生の惨めさにふたして 補うために身を削るように生きていた それを愛だと信じて 惨めさはいま 風とともに 自由になる そのまま   それは愛なのだといって  Listen to Couriers by Abstract Aprils on #S

          生まれ日にて

          コムニ    THE END

          目の前に差し出された手を、その行為の意味以前にただひとつの不可思議なモノとして、しげしげと眺めていた。白っぽい、乾き気味のやや不健康な大きな厚い手。でも相の筋が深く、頼もしくも感じられ‘ ありふれた ’と表現したいくらい、どこか馴染みのある手だった。 わたしは気づくと座り込んでいた。  小雨が降っている。 目の前の手の先を目で追うと、フードに隠れて影が濃くなった顔がやや強張った表情でこちらを見ていた。彼自身がその行為に戸惑っているようだった。 自然に手を伸べ、その手を取

          コムニ    THE END

          コムニ   8

          彼女がその都市の内部へ組み込まれていったとき、初め、人間の影の異質さや集合建造物の奇妙さにみとれ、己との違いとして境界が明瞭に認識されていたが、日々無目的に歩むにつれ、次第にその境目は薄れ、影に馴染み、異質で奇妙な光景に同化していった。明白な精神は、この旅を推し進めていたちからは薄れ、周りの影と同じくどんよりと、盲目に変わり果てていった。 旅のあいだにすり減り、役に立たなくなってしまった靴や、防御反応のように全身を隠したストール姿が、あたかもこの世界でよく見かける(そういう

          コムニ   8

          コムニ  7

          薄暗く広大な講堂の壁は液状ガラスになっていて、目下には新都市の全貌が確認できる。光景だけではなく都市内のすべてのエリアにおいて、どの№のストリート、裏路地にいたるまでモニターできるスクリーンが備わっていた。男は冷たい暗がりからその空間とは比率的に不自然なほど狭いドアをくぐり、階段をぐるぐると産道を通るように風のあたる踊り場へと出た。 ひかりに細めた目の灰色の虹彩は崩れたように淡く大きく、遠くまで続く乾いたストリートを一望する。 男は名をテジロといった。 彼の目はその情景に、

          コムニ  7

          コムニ  6

          日々はしごく単調なものとなっていた。 朝は完全シャットインの暗闇の小部屋に目覚める。ウィンドースクリーンのスイッチを押すと、いかなる季節であっても朝の太陽が地をわずかにのぞいた角度の光線にさらされた下層界の光景が見えた。そしてぼくは ‘ ああ、また生まれたんだ ’ と感じるのであった。 夜は深く、どこまでも深く、意識を持っていかれそうでこわい。とくにそこに漂うかつてHISTO-VISIONで見せられた深海魚のような姿の船を見るときは。もちろん宇宙線ブロックのためのスクリー

          コムニ  6

          コムニ  5

          どこまでも広がる骸となってしまった家並みを過ぎ、トラムはスピードを上げ新都市へ向かう。形骸のみの旧都市は長い時放置され黒々と静まっている。その広大さに比べ新都市は小規模で、消失した世界との人口の差を語っていた。 都市といえども寄せ集めの建造物群で、新たな都市計画に基づくというよりも、有り合わせのライフラインでしのいでいるといった途上段階が続いているのであった。 ただしトラムの乗客たちの表情には、時代の激しい移りによる疲れこそ表れていたかもしれないが、未来へ向かう聡明なひかりが

          コムニ  5

          コムニ  4

          何日歩いただろうか。 ビル骸に生態を成している特殊な動植物に寄り添い、休みながら、じゃりつく歩みをつづけた。 地図を持たず行き先もあいまいながら、いつしか最初に思い描いたひかり背負うあのひとの影だけが、たしかな道の指針となっていた。 そしてもうひとつ、見上げる星々の地図がこの宇宙における場を示してくれ、こころを保つことができた。いつだっただろう、高い樹頭から顔を出し、アニに初めて星々を見せてもらったときの衝撃を思い出していた。身近にあった樹海の世界とあまりに真逆だったから

          コムニ  4

          コムニ  3

          手と手を固く握った。 樹海とゴーストタウンの狭間に立つ高木から、極楽鳥たちがバサバサと飛びたつ。 これが、彼ら、両親と兄との最後だと、わたしには分かった。彼らは変わらない樹海のしげみを背負い、あたかもそれが不変であるように馴染んでいた。しかしそれはわたしにとっても不変であったはずだった。わたしのからだであり、わたしのすべてであった。けれどもそれが別れを告げている。この決別がわたしをどこへ、何へ、押しやろうとしているのか、このときのわたしにはさっぱり分からなかった。 この

          コムニ  3

          コムニ   2

          沼がまた、地より浮かびあがり深さと広さを増し始めていた。ほとりに立ち、水の色とにおいからその‘様’をわたしはかぎとった。新しく生まれた沼がほかの生命のように判然たる意図をもってどうかたちづくり、どの方向性を持とうとしているのかを知ろうとしていた。 あらゆる生命はわたしに時系列を超えた真なる姿を赤裸々にさらしてくれ、素朴で純然たるその輝きに、わたしはいつも自らを照らし合わせた。 沼との‘語らい’より導き出すべき今回の課題はつまり、集落の移動先だ。湿原の拡大方角を避け、密林濃

          コムニ   2