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コムニ   2

沼がまた、地より浮かびあがり深さと広さを増し始めていた。ほとりに立ち、水の色とにおいからその‘様’をわたしはかぎとった。新しく生まれた沼がほかの生命のように判然たる意図をもってどうかたちづくり、どの方向性を持とうとしているのかを知ろうとしていた。

あらゆる生命はわたしに時系列を超えた真なる姿を赤裸々にさらしてくれ、素朴で純然たるその輝きに、わたしはいつも自らを照らし合わせた。

沼との‘語らい’より導き出すべき今回の課題はつまり、集落の移動先だ。湿原の拡大方角を避け、密林濃淡の最適地点まで彼らを導かなくてはならなかった。