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コムニ   8

彼女がその都市の内部へ組み込まれていったとき、初め、人間の影の異質さや集合建造物の奇妙さにみとれ、己との違いとして境界が明瞭に認識されていたが、日々無目的に歩むにつれ、次第にその境目は薄れ、影に馴染み、異質で奇妙な光景に同化していった。明白な精神は、この旅を推し進めていたちからは薄れ、周りの影と同じくどんよりと、盲目に変わり果てていった。

旅のあいだにすり減り、役に立たなくなってしまった靴や、防御反応のように全身を隠したストール姿が、あたかもこの世界でよく見かける(そういう類のアウトサイダー)的な風貌となって、もはや目を止める人すらいなくなった。布の奥の影から見えるその眼差しだけが、かろうじて他の者たちとは異なった原初的なひかりを、未だともしているのであった。


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ひかりはいつも、 静かにおちていた

すべてに

あたかも無秩序なこの星の‘藪’の営みと、そこから切り離された人間独自の無秩序な営みと、すべてに均質に降り注ぎ、

どちらとも、いや、双方あってこその、この星の自然として映っていただろう、

そう、 それを見つめるまなざしたちには


とき という計り知れない移ろいを見つめるまなざしには
誕生も衰えも ただ輝きの一断片として見えていたかもしれない

ひとと 地の   ひとと ひとの 侵食による地上のかなしみは

それらにとっては きらきらと眩いよろこびに見えていたかもしれない

その輝きを味わうということは どんなものだろうかと
 
ときめきながら


ただ降り注ぐひかりだけが 道すじであり   永劫であった













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