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みしか
2018年11月16日 19:10
彼は早起きだった。私よりも1本速い電車に乗るはずの彼は、私が家を出る1時間前に駅へと向かう。駅前の喫茶店で朝刊を読むのが好きだった。 彼は、私の見送りは必要としなかったし、私に朝食を作ることを強要することもなかった。穏やかで、笑うことは少なかったけれど、激昂するということもなかった。 だからだろうか、終わりもあっさりとしていた。『もう終わりにしよう』 落ち着いた彼の声を、私は拒否
2017年12月17日 21:29
どうしてか、何をしても上手くいかない日というのはある。 今日はパンプスを左足から履いたからかも、とか、起きる時間が2分くらい遅かった、とか。どうでもいいことに、上手くいかない理由をこじつけて、正当化したい自分が情けない。 いつもはしないようなミスを連発した。新人ならまだしも、そうとは言えない歳になってきている。凡すぎるミスに、頭を下げながらも自分がみっともなく思えて仕方がない。「……すい
2017年12月17日 21:27
――チョコレートみたいな色してるな。 先輩は私が気まぐれで染めた髪色が気に入ったと大きく口を開けて笑った。「で?」「で?って……?」 えっちゃんがくりくりとした大きな目をさらに開いて顔を覗きこんでくる。「私、いまマチコの初恋の話を聞きたいって言ったわけですが?」「そうだね~」「ってか、髪染めたっていつのことだよ!」「えーと、高2の頃だから3年前?」 17かぁ~と深いため息と共に言