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和奏眠人
2021年2月26日 17:13
本編あの時、世界が終わるのを見たんだ。カラ…カ、カ……カラ、カカ…ガガガガと何かが引っかかる音がして、視界の隅から浸食が始まり、瞬く間に画面を染めていった。この頃僕は、持て余した美意識と自己顕示欲で自我はひねくれてコントロール不可能。王道の良さもわかるけど、それじゃつまんない。なんて、何者でも無いくせに上から目線で。大学の課題制作は、次でそろそろネタ切れだ、と毎回思う。1.2年の頃
2021年2月23日 02:31
「じゃあ、好きな動物を描いて1時間したら戻ってきてね」解散。散らばっていくクラスメートは、数人ずつグループになってお目当ての動物へまっしぐら。わたしは、今日初めて動物園という場所に来た。色んな匂いがするし、わりと刺激臭。鼻の奥がむずむずしてスンスン鳴らしちゃうのが止まらない。さっき一通り先生に連れられて見て回った時に、わたしもお目当ての動物は決めていた。少し不安だったのは、わたしが惹かれた
2021年2月22日 18:48
今日も朝が来た。朝だね、朝だよ、朝か……。ずっと夜でいいよ、まだ眠いし。アラームに抗って何度目かの寝返りを打つ。スヌーズは強敵だし、朝は誠実で真面目、必ず正々堂々やって来る。目が開かないのもいつもの事で手探りでスマホを探してそのまま呼び出す。Hey,siri. 今日の天気「ゲンザイ アメガフッテイテ キオン ハ 7℃ デス」今日も雨だった。雨だね、雨だよ、……雨か。この街は
2021年2月18日 16:13
うるさい、うるさいうるさいうるさい。春の猫ときたら、夏の蝉に匹敵すると思うのに、蝉より嫌われないのは、猫が圧倒的に可愛いことを差し引いてもちょっと優遇され過ぎていると思う。蝉だって猫と同じく求愛に必死なだけなのに。暑さが悪いのか。見た目か。どっちもだな。今日も今日とて、アパート1階の我が家の狭い庭には、うなうな、なごなご言いながら猫が集う。うるさい、うるさいうるさいうるさい。可愛い
2021年2月16日 23:53
誕生日の夜帰宅すると、玄関前にプレゼントが置いてある。その年別れたのが誕生日前だったから、その1度きりだと、その時は思っていた。あれから4年が経ち、今年はどうだろうな、流石にもうないだろうと思いながら、あった時の変な高揚感と武者震いを反芻して苦笑い。今年は両手で抱えるのがやっとな、かなり大きめの紙袋が置いてある。中には綺麗に包装された箱のようなもの。中身は想像もつかない。ひとつ、息を
2021年2月16日 00:20
叶わない約束なら、最初からしない方がいい。1年の終わりがあんなに慌ただしいのは、1年分のやり残したことを精算する為なんじゃないかと思う。少なくとも、そういう気分。「手紙書くから」「会いに行くよ」「ずっと友達な」「向こうでも頑張れよ」「貸したマンガまだお前のとこだろ?連絡しろよ」「ゲームで会おうぜ」「こっち戻ってきたら連絡して」「LINE交換しとこ」「覚えていてね」「忘れるなよ」
2021年2月15日 19:00
「お月様が着いてきて怖いんです」いつもの帰り道で、呼び止められた。この時間、と言ってもまだ22時を回った位の、夜更けには違いないが、まだ真夜中には程遠い仕事帰りの歩き慣れた路上は、1年で1番寒い2月だからか、今日もほぼ無人だった。振り返ると、5.6歳だろう見知らぬ少年が袖を掴んでいた。「一緒に着いてきてもらえませんか?お家、すぐそこなんです」ご両親は、と尋ねると「お家で待っ