ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら

ナイチンゲールは看護という新たな領域の礎を築きました。看護という方法を生み出し、看護と…

ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら

ナイチンゲールは看護という新たな領域の礎を築きました。看護という方法を生み出し、看護という方法で社会を良くしようとしました。では、同じように看護という方法でいまのわたしたちを見たときにどんな光景が見えるでしょうか。そこからなにを観察し、なにを考え、なにを実践できるでしょうか。

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【補章】 もっとナイチンゲール世界を知りたい人に。

ナイチンゲールの世界は豊かです。看護という枠にとどまるものではありません。ナイチンゲールを知り、看護という方法を持つことは、どのように生きるかということに結びつきます。ナイチンゲールは「健康とは、良い状態を指すだけでなく、われわれが持てる力を充分に活用できている状態」と言います。ナイチンゲールの根底には「どう生きるか」という思想があります。ぜひ、いちど、ナイチンゲールの世界を訪れてみてはいかがでしょうか。 ナイチンゲールの著作の多くは現代社から出版されている書籍で読むことが

    • 【補章】 ナイチンゲールという人

      〜理想主義者であり、現実主義者としてのナイチンゲール〜 クリミア戦争に従軍し最後の患者を送り出したナイチンゲールは偽名を使いひっそりと帰還の途につきます。英国中が国民的英雄の姿をいまかいまかと待ちこがれるなか、誰にも気づかれることなく帰国しました。心身ともに衰弱した痛々しい姿でした。帰国後は周囲の熱狂を避けるようにロンドンのホテルの一室に住居を移します。限られた人たちだけがナイチンゲールの住居を訪ねました。ナイチンゲールは病に伏せながらも勢力的に仕事を続けました。膨大な著作

      • 【第4章】 The Way of Nursing — 看護という方法

        病気とは、わたしたちが自らの手で招いてしまったある状態に対して、自然が思いやりをこめて働きかけてくれている、その状態だと考えられないものであろうか。 〜もういちど、ナイチンゲールの足場から〝いま〟をどのようにみるか〜 ナイチンゲールの足場から、新型コロナウイルス感染症で混乱が生じている〝いま〟のわたしたちの社会を見たらどうだろうか…、それが出発点でした。新型コロナウイルス感染症の〝あと〟の社会について、いろいろな立場の人が〝予想〟をしています。それはそれで意味があるこ

        • ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(18)

          【第3章】 生活を整える 13:観察 Observation of the Sick もしあなたが観察の習慣を身につけられないのであれば、看護師になることを諦めたほうがよいであろう。なぜなら、たとえあなたがどんなに 親切で熱心であるにしても、看護はあなたの天職ではないからである。 〜あなたの意見ではなく、あなたの伝える事実が意味を持つ〜 ナイチンゲールは『看護覚え書』の最終章でこれまで述べてきたことをまとめるかたちで観察について述べています。各項目で述べた看護である

        【補章】 もっとナイチンゲール世界を知りたい人に。

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        • ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら
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          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(17)

          【第3章】 生活を整える 12:おせっかいな励ましと忠告 Chattering Hopes and Advices およそ病人を悩ませ病人に忍耐を強いるものとしては、友人たちから 寄せられるこの矯正できない励ましの言葉かけ以上のものは、他にほとんど類がないのである。 〜あなたの満足のために見舞いはあるのではない〜 ナイチンゲールは章の冒頭で「病者より、忠告者の方々へ申し上げる」と言っています。病者とは自身のことです。療養生活を送っていたナイチンゲールが、友人や知人、

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(17)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(16)

          【第3章】 生活を整える 11:からだの清潔 Personal Cleanliness 病人の身体を不潔なままに放置したり、あるいは病人に汗やそのほかの排泄物が沁み込んだ衣類を着せたままにしておくことは、健康をもたらす自然の過程を妨げて患者に害を加えることになる。 〜不潔は毒となり、清潔は生命となる〜 わたしたちの体表を覆っている皮膚にはさまざまな機能があります。汗の分泌や老廃物の排泄、湿布やぬり薬などの体外物質の吸収、体内外の防護、体温調節や保温、感覚の察知と伝達

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(16)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(15)

          【第3章】 生活を整える 10:屋と壁の清潔 Cleanliness of Rooms and Walls 病人の部屋に要求される徹底した清潔ということについて、 すこしでも理解しているひとは、その社会階級の上下に関係なく、 きわめて稀である。 〜清潔さは細部に宿る〜 ナイチンゲールが生きた当時の英国では赤痢やチフス、コレラなどの感染症が蔓延していました。街中や住居、病室の不衛生な環境がこうした状況を引き起こしていました。当時の人々の衛生に対する知識はほとんどなく、

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(15)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(14)

          【第3章】 生活を整える 09:陽光 Light 太陽の恵みをいっぱいに受けて、部屋が明るく快適なこと、それは病気の治療に欠かせない条件である。 〜陽光あれ!〜 ナイチンゲールが暮らした英国は北海道より北に位置します。年間を通して日照時間も少なく、1日を通して天気が目まぐるしく変化します。雨具はいつも欠かせません。人々は陽光に対して特別な思い入れがあります。 ナイチンゲールは「太陽は、たんに光で描く画家であるばかりでなく、物質に働きかけて造りかえる彫刻家でもある」

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(14)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(13)

          【第3章】 生活を整える 08:ベッドと寝具類 Bed and Bedding 病人にとって睡眠がいかに大切で、その睡眠の確保のためには良いベッドづくりがいかに必要かを考えるならば、自分の職務のいちばん肝要な 部分を《他人の手》などに任せられるものではない。 〜人間だけが寝具を使って眠る生物です〜 現代の病院や施設ではベッドや寝具類の設えは看護師ではなく、ヘルパーが行うことが多くなりました。近代看護がスタートしたナイチンゲールの時代はベッドづくりは看護師の大切な業務

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(13)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(12)

          【第3章】 生活を整える 07:食物の選択 What Food ? 各種食品に含まれている「実質栄養成分量」をもとに食事の基準を決定 するにあたって、いつも無視されることがある。それは患者の身体は消耗からの回復に何を必要としているか、患者は何が食べられ、何が食べられないか、ということである。 〜胃の意見を聞いたことはありますか?〜 ナイチンゲールは患者に提供する食事について、食品分析表などから得られた数値だけではなく、患者の状態を観察した結果から導き出した条件で考え

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(12)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(11)

          【第3章】 生活を整える 06:食事 Taking Food 〜食べることに知性をはたらかせる〜 身体に負担なく食事をとり、必要な栄養も摂取するにはどうすれば良いでしょうか。ナイチンゲールは「食」を「とり方」と「内容」の2つに分けて捉えています。この章では「とり方」を考えていきます。 「食物を摂れる時刻について考慮をめぐらす」とはどういうことでしょうか。規則正しくとるのではいけないのでしょうか。ナイチンゲールには「とらせる」のではなく「とってもらう」という発想の転換

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(11)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(10)

          【第3章】 生活を整える 05:変化 Variety 長期にわたって1つ2つの部屋に閉じ込められ、毎日毎日、同じ壁と同じ天井と同じ周囲の風物とを眺めて暮らすことが、どんなに病人の神経を 痛めつけるかは、ほとんど想像もつかないであろう。 〜NO Variety, NO Life 変化がなければ、生きられない〜 日本語では変化と訳されていますが、原著では「Variety」です。「単調でないこと」を表し、「変わる」を意味する「Change」とは異なります。療養中に直面する

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(10)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(9)

          【第3章】 生活を整える 04:物音 Noise 不必要な物音や、心のなかに何か予感や期待などをかき立てるような 物音は、患者に害を与える音である。 〜物音は音ではない、物音は意味である〜 物音とはなんでしょうか。ナイチンゲールは多くの事例をあげて物音の持つ患者への影響について説明をしています。患者に害を与える物音として〝不必要な物音〟と〝心のなかに何か予感や期待などをかき立てるような物音〟をあげています。物音を単なる〝音〟ではなく、〝意味〟と捉えたときに、それが患

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(9)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(8)

          【第3章】 生活を整える 03:小管理 Petty Management どんなに良い看護を充分に行なったとしても、ひとつのこと ― つまり 小管理 ― が欠けていれば、言いかえれば、「あなたがそこにいるとき 自分がすることを、あなたがそこにいないときにも行われるよう対処する方法」を知らないならば、その結果は、すべてが台無しになったり、まるで逆効果になったりしてしまうであろう。 〜自分自身を〝拡大する〟技術〜 看護される立場として身に覚えのある経験をした人もいるので

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(8)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(7)

          【第3章】 生活を整える 02:住居の健康 Health of Houses 住民の健康を守るためには、つぎの5つの基本的な要点がある。 1.清浄な空気 2.清浄な水 3.効果的な排水 4.清潔 5.陽光 これらのどれを欠いても住民が健康であるはずがない。そして、これらに不備や不足があれば、それに比例して住民は不衛生となる。 〜住まいは、もう一つのわたしたちの身体だ〜 ナイチンゲールは住居が健康に与える影響を大きく捉えていました。当時は貧富の差が激しく、住居の環

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(7)

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(6)

          【第3章】 生活を整える 01:換気と保温 Ventilation and Warming 良い看護が行われているかどうかを判定するための基準としてまず第一にあげられること〜それは《患者が呼吸する空気を、患者の身体を冷やすことなく、屋外の空気と同じ清浄さに保つこと》なのである。 〜空気の〝感性〟を取り戻す〜 ナイチンゲールは「看護であること」の最初の条件として換気と保温をあげました。「細心の注意を集中すべき最初にして最後のこと」であり、「それを満たさなかったら、あな

          ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(6)