見出し画像

ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(8)


【第3章】 生活を整える 

03:小管理 Petty Management


画像1


どんなに良い看護を充分に行なったとしても、ひとつのこと ― つまり
小管理 ― が欠けていれば、言いかえれば、「あなたがそこにいるとき
自分がすることを、あなたがそこにいないときにも行われるよう対処する方法」を知らないならば、その結果は、すべてが台無しになったり、まるで逆効果になったりしてしまうであろう。


〜自分自身を〝拡大する〟技術〜

看護される立場として身に覚えのある経験をした人もいるのではないでしょうか。いつもの担当の看護師ではないことが、心配や不安を招いたり、予期せぬケアが行われたりして、心身が消耗することもあるかもしれません。看護の管理が行き届いていないと被害をこうむるのは患者です。

ナイチンゲールは管理を「自分自身を拡大する技術」と言っています。拡大するとはどういうことでしょうか。自分の能力を拡大するのでしょうか。ナイチンゲールは〝責任を持つこと〟だとします。自問を例にあげ、「どうしたら自分のなすべきことを自分でできるか」ではなく、「なすべきことがいつも行われているようにするために、自分はどのような対策を講じることができるか」ということが大切だと言います。

自分の仕事に対して責任を持つことが管理の第一歩になります。責任を認識し、それを果たすためにするべきことを考え、対策を講じることが管理になります。献身や自己犠牲ではありません。ナイチンゲールは看護を組織のシステムで働かせようとしました。看護部門を独立させ専門職としての自立性を確保しようとしました。人材の育成をはかり看護の質の維持と向上に務めようとしました。自分自身を拡大するのに〝仲間〟が必要であることはいまも変わりがありません。


画像2

これからの時代の仕事の〝誇り〟とはなにか。

新型コロナウイルス感染症はわたしたちの仕事の方法やあり方にも影響を与えています。テレワークの導入やオンライン会議の活用など、ICTの技術を利用した在宅での仕事が一気に加速しました。いろいろな不安や問題を抱えながらも、新たな働きかたのひとつとしてこれまで以上に社会に浸透しつつあります。

仕事を休まなければならない場合はどうでしょうか。出勤にするか、在宅にするかの違いはあるにせよ、休むことに抵抗を感じる人は少なくないようです。「自分がいなければ仕事が回らない」「ほかの人に迷惑がかかる」などの理由がほとんどです。仕事に対する責任ともいえますが、ナイチンゲールの考え方に従えばそれは責任ではありません。

ナイチンゲールは「自分が病気で休んだときなどにも、すべてを他人に譲り渡して、それですべてが平常どおりに行われ、自分がいなくて困るようなことが絶対にないように方式を整えまた整理しておくことこそ、誇りを覚えるべきである」と言います。自分を解放する新たな〝誇り〟がこれからは必要かもしれません。


ひとりでも多くの人にナイチンゲールが言う「生活を整える」ことの大切さを伝えたい…、そんな願いからnoteで発表することにしました。本記事は一般社団法人チーム医療フォーラムの季刊誌『ツ・ナ・ガ・ル』35号(2020年6月発行)の特集記事を転載したものです。ほぼ毎日「1章」か「1節」ずつ記事を掲載していきます(下記の目次をご参照ください)。

※本記事は以下に記載した文献を出典とし、参考にしています。 看護覚え書 フロレンス ナイチンゲール (著) 現代社、新版 ナイチンゲール看護論・入門 金井一薫(著) 現代社 白鳳選書、ナイチンゲール言葉集 現代社 白鳳選書、ナイチンゲールの『看護覚え書』金井一薫(著) 西東社、看護覚え書きフロレンス ナイティンゲール (著) 日本看護協会出版会、フロレンス・ナイチンゲールの生涯 宮本百合子 (著) Kindle版、他。
・記事監修:秋山和宏(医学博士、東葛クリニックみらい院長)


画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?