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ナイチンゲールの足場から〝いま〟の わたしたちを見たら(13)


【第3章】 生活を整える 

08:ベッドと寝具類 Bed and Bedding


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病人にとって睡眠がいかに大切で、その睡眠の確保のためには良いベッドづくりがいかに必要かを考えるならば、自分の職務のいちばん肝要な
部分を《他人の手》などに任せられるものではない。


〜人間だけが寝具を使って眠る生物です〜

現代の病院や施設ではベッドや寝具類の設えは看護師ではなく、ヘルパーが行うことが多くなりました。近代看護がスタートしたナイチンゲールの時代はベッドづくりは看護師の大切な業務の一つでした。なかでも看護師長はそのエキスパートであると目されていました。ベッドや寝具類の設えが患者の睡眠の質に影響するだけでなく、不衛生や不適切な環境が病気からの回復過程を遅らせたり、新たな病気を招いたりしていました。

現代のわたしたちの生活ではどうでしょうか。ベッドや寝具の設えや衛生について気にかけたりしているでしょうか。日本人の生活は畳中心の住まいからじゅうたんやフローリング中心の住まいへと変わりました。布団の上げ下げがなくなり、ベッドが部屋に置かれるようになりました。布団の時には持っていた寝具類の衛生に対する感性が、ベッドになることで失われつつあることはないでしょうか。ベッドの衛生について正しい知識を持っているでしょうか。

睡眠には身体の回復過程を働かせる大切な役割があります。わたしたちは日中の活動で消耗した身体を眠ることで回復させています。良質な睡眠は回復を促しますが、充分な睡眠が取れないと回復が妨げられてしまいます。生物にとって睡眠は単なる休息ではありません。生命力を維持するために不可欠なものです。たかが睡眠、されど睡眠、あらためて睡眠について考えたいものです。


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眠る力はあるか。

新型コロナウイルス感染症はわたしたちの睡眠にも影響を与えています。不要不急の外出や行動の自粛が求められるなかで、それまでの生活スタイルの変更が余儀なくされ、生活のリズムが狂ってきたことが原因です。テレワークが増えたり、学校が休みになり子供が家庭にいたりすることなどが影響して、全般的に生活が夜型に移行しました。

決まった時間に起きなければならない制約がなくなり、夜更けまで起きていることが多くなり、その結果、睡眠の質にも低下があらわれています。良質な睡眠が取りにくくなりました。人は睡眠によって身体を回復し、免疫機能を働かせています。新型コロナウイルス感染症対策で生じた生活の変化が、睡眠の質の変化による免疫機能の低下を招き、感染のリスクを高めているとしたら本末転倒です。

ナイチンゲールは睡眠には眠る力が必要だと言います。眠る力が身体にないと人は眠ることができません。日中の活動で極端に疲れたときに、眠ろうとしてもなかなか眠れない経験をした方もいるのではないでしょうか。眠る力は規則正しい生活のリズムから生まれます。生活のリズムの乱れは眠る力を阻害する要因です。家族全員で、生活について話し合い、ルールを定めて規則正しい生活をするようにしたいものです。


ひとりでも多くの人にナイチンゲールが言う「生活を整える」ことの大切さを伝えたい…、そんな願いからnoteで発表することにしました。本記事は一般社団法人チーム医療フォーラムの季刊誌『ツ・ナ・ガ・ル』35号(2020年6月発行)の特集記事を転載したものです。ほぼ毎日「1章」か「1節」ずつ記事を掲載していきます(下記の目次をご参照ください)。

※本記事は以下に記載した文献を出典とし、参考にしています。 看護覚え書 フロレンス ナイチンゲール (著) 現代社、新版 ナイチンゲール看護論・入門 金井一薫(著) 現代社 白鳳選書、ナイチンゲール言葉集 現代社 白鳳選書、ナイチンゲールの『看護覚え書』金井一薫(著) 西東社、看護覚え書きフロレンス ナイティンゲール (著) 日本看護協会出版会、フロレンス・ナイチンゲールの生涯 宮本百合子 (著) Kindle版、他。
・記事監修:秋山和宏(医学博士、東葛クリニックみらい院長)


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