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国語教育

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国語に関する記事を集めたものです。自身の仕事に関係するものを挙げていくので、質はそれなりに高いものとなっています。写真は東博の書道具の展示を撮影したものです。
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記事一覧

語に敏感になるショートレッスンー2023年度東京大学入試国語第四問 問一を通してー

語に敏感になるショートレッスンー2023年度東京大学入試国語第四問 問一を通してー

単発企画です。
タイトルの通り、今年の東大国語の問題を題材にして言葉にこだわって読む大切さを体感できるような記事です。
東大国語の問題は各種予備校サイトでダウンロードできますので、そちらから全文を確認してください。
2023年度入試第四問では長田弘『詩人であること』が出題されました。文章の内容は、「文化」や「平和」を例として挙げつつ、「公共」の言葉や「全体」の意見へと抽象化していく中で捨象されてし

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2023年度大学入試共通テスト 国語、講評

2023年度大学入試共通テスト 国語、講評

少し遅くなりましたが、毎年恒例の共通テストの講評です。
今年の問題は良問であり、ぜひとも解いた上で復習して欲しいかなと。

第1問 近代以降の文章(評論文)
【文章Ⅰ】柏木博『視覚の生命力  イメージの復権』
【文章Ⅱ】呉谷充利『ル・コルビュジエと近代絵画  二〇世紀モダニズムの道程』

 表象文化論やイメージ論、あるいは身体論などで良く取り上げられるテーマであり、特に【文章Ⅱ】は多木浩二の『目の

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2022〜2023年 冬を楽しむ(参考書編)1/2

2022〜2023年 冬を楽しむ(参考書編)1/2

いよいよ、冬を楽しむシリーズの最後です。参考書ではありますが、読んで時間を使えるという点を重視して、英語と現代文に絞りました。ただ片方はかなりレアな参考書なのですが。

1.中原道喜『英語長文問題精講』
読んで楽しい英文が載っている参考書。やや必要な英語力は高いものの、その分妥協していないレベルの面白い英文しかない。読む中で、確かにな、なるほどと感嘆したくなるものばかり、じっくりゆっくり英文を読む

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『シナの五にんきょうだい』―絶版の裏にある伝えたいことと様々な技法―

『シナの五にんきょうだい』―絶版の裏にある伝えたいことと様々な技法―

大学生の時書いたエッセイです。少しだけ誤字訂正しましたが、基本的にそのままを掲載しています。今思えば、読み込みの甘さもありますが、20歳前後の若々しさで少しでも作品の奥底に触れたいと思う姿勢は感じられたので、読書熱を感じたい方は読んでみてください。

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1、はじめに
 子供のときに読んだ本と言われて思いついた作品がこの作品と「あらしのよるに」だった。その中で、この作品に決めた理由は児童文学

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日本語に関する雑学ー「懐かしむ」と「偲ぶ」の比較

日本語に関する雑学ー「懐かしむ」と「偲ぶ」の比較

先週に引き続き、日本語に関する文章です。今回は何となく違うけど、説明がしづらい「懐かしむ」と「偲ぶ」です。速読したい人は結論だけをサクッと読むのもありですし、どういう用例があるか知りたい方は本文もぜひ読んでみてください。

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1,はじめに
 「懐かしむ」と「偲ぶ」はどちらも「思い出して、その対象に心が惹かれる」という点で共通しているものの、全く同じ意味を有しているのであれば現在において両語

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「〜です。なので、」で有名な、「なので」の文頭の用法について

「〜です。なので、」で有名な、「なので」の文頭の用法について

昔書いたレポートを記事に変えたものです。専門的な内容も含むため、「なので」の表現について知りたいけど、難しい話はちょっと…という人は「3、まとめ」だけを読めばおおよその中身がわかるようになっているので、そちらを読んでみてください。要は「なので」は誤用と単純に言えない理由をくどくどまじめに書いている文章です。

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1、はじめに
「ので」は通常、(1)のように文中で使われ、原因・理由を示す接続

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国語のミニ雑学ー篆書とは?

国語のミニ雑学ー篆書とは?

小学校の卒業証書に押されていた篆書の印が4年間違う小学校の名前だったというニュースが出ていたので、篆書とは何なのかという話を簡単に説明します。
そもそも篆書は、楷書、行書、草書、隷書、篆書の五体の一つであり、この中で最も古い書体が篆書です。そのため、篆書は、隷書と楷書のもとになった書体となっています。厳密には、篆書を簡略化し、装飾豊かにしたのが隷書、その隷書を簡略化したものが楷書となっており、1番

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2021年度高校2年生現代文終講の言葉

2021年度高校2年生現代文終講の言葉

いつもの終講の言葉シリーズです。今年は対面の授業が流行り病のせいで、あまり出来なかったこともあり、生徒との距離感を縮めるのが難しかった年でした。そんな中でも少しでも関心を持ってもらえるように贈ったのが今回の言葉です。

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 本日で最終講義です。高2が終わるということはいよいよ高校最終学年になり、人生の1つの岐路に立たされるわけですが、どのような岐路になるかは皆さん次第なので後悔がない

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昔も今も変わらない古典の雑話―『枕草子』「思はむ子を法師になしたらむこそは」を通して―

昔も今も変わらない古典の雑話―『枕草子』「思はむ子を法師になしたらむこそは」を通して―

 今日は古典関係の記事の番外編的な内容で、古典を少しでも身近に感じるような機会になればという記事なっています。
 今回も『枕草子』から取ってきました。随筆ということもあり、今でも共感できるような話が多いので、題材に向いているという側面があります。
 
【本文】
 思はむ子を法師になしたらむこそは、いと心苦しけれ。さるは、いとたのもしきわざをただ木の端などのやうに思ひたらむ、いといとほし。
 精進の

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古典の勉強のコツを体験的に感じるー『枕草子』「すさまじきもの」を通してー

古典の勉強のコツを体験的に感じるー『枕草子』「すさまじきもの」を通してー

 古典の難しさ、特に高校一年生の後半以降から難しく感じる理由を体験的に書いた記事です。古典が好きな人は難しい点を知ることでより楽しめるように、古典が苦手な人は少しでも理解できるようになるために読んでもらえたらと思います。今回の本文は『枕草子』の「すさまじきもの」の一部です。「すさまじきもの」は割と有名な部分なので、知っている人も多いと思いますが、だからこそ今回の話題にはうってつけと言えます。まずは

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猫の日特集ー猫が出てくる古典の話、『枕草子』と『徒然草』ー

猫の日特集ー猫が出てくる古典の話、『枕草子』と『徒然草』ー

猫の日ということで、猫が出てくる古典作品をサクッと紹介する記事です。
1つめは『枕草子』です。猫を寵愛すぎるあまり起こった事件とも言える話です。現代でも猫と対になって出てくる、例の動物も居る辺り現代と変わらないところを感じさせます。

第七段(第九段)
 
 うへにさぶらふ御猫〔おほんねこ〕は、かうぶり得て、「命婦〔みやうぶ〕のおとど」とて、いとをかしければ、かしづかせたまふが、端に出でたるを、乳

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2020年度高校2年生に向けの終講の言葉

2020年度高校2年生に向けの終講の言葉

最後の授業の際に、一言、話をするということを決めており、過去にしたもの。受験学年になるということも前提にしたもので、割と内容的に深いことを言っているような気もしなくもないです。そろそろ終講の言葉を考える時期になったので、掲載しておきます。

終講の言葉

 今年度最後の授業です。皆さん、お疲れ様でした。今年度はコロナ禍と表現されるように、色々例年とは異なることが多かったと思います。
 とはいえ、一

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2022年度大学入学共通テスト(国語)の分析

2022年度大学入学共通テスト(国語)の分析

全体
全体的な問題としてはやや難化した印象となった。全体的により共通テストに変わったことを印象付けるような設問もあり、今年度の問題が実質的に共通テスト元年と言えなくもない。この傾向を踏まえた対策が来年度以降にも重要になるため、来年度受験を控えている高校2年生はすぐに
問題を解き、自身が苦手としているジャンルや設問形式を理解しておくと安全。

第一問 
文章量 やや少ない / 文章難易度 やや易 /

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2021年度高校3年生終講の言葉

2021年度高校3年生終講の言葉

毎年の恒例のシリーズの高校3年生版です。昨年までのものもあるので、気に入った方はそちらもご覧になってください。

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今日で、現代文の授業は最後となります。昨年度から続く、災禍の影響で例年通りとはいかない部分もありましたが、最後は対面で授業を終えることができたのはまさに不幸中の幸いというものかもしれません。
長続きする災禍の影響で、人々の生活は大きく変化しました。飲食店を利用することを控え、

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