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『夜はおしまい』 島本理生 作 #読書 #感想

あらすじ(Amazonより)

性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている。
ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私。本当に愛する人とは結ばれない私――。
秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる四人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く、島本理生の到達点。

4人の女性それぞれを描いた短編集。そこまで面白くはなかったし、数日後には記憶から消えてしまうような話だろうな....。

何より「キリスト教」と絡めて描かれていることが非常に話の意味を分かりづらくしていたと思う。途中で危うく挫けてしまうところだった。

いつも読了後には

読書メーターで他の方の感想を読むのだけれど、この作品は(普段島本さんの本を好んで読む方の間でも)はっきりと好みが分かれていたと思う。

"性に、愛に傷付く女性たち"は島本さんの作品でよく描かれるけれど、この作品で際立っていたのは"男性側の醜さ"だった。ドン引くという言葉がふさわしいほど気持ち悪い男の人も出てくるし、こんな人が現実にいたら.....と思うと人間の恐ろしさを感じてしまった。

先程挙げた読書メーターの 有さんという方の感想で、

求めた人に愛されたかったが、愛されなかった過去を持つ彼女たち。彼女たちが泣く場面はほぼない、でもみんな泣いているように思えた。過去の傷の埋め合わせをするように、手当たり次第自分と男を傷付けていく。

というのがあったけれど、今回の島本さんの作品はかなり男側を傷つけるものが多かった気がする。自分が傷つく分だけ相手を傷つけないと気が済まない女性が描かれていたというか.....。相手を傷つけないと自分が傷ついてしまいそうで恐れながらもその関係を止めることはしない、みたいな....。



主人公の中に作家の女性がいるのだが、この彼女が "嫌いな"他の作家に向けて感じたことが述べられた描写がある。
123ページより

優しくするのは怖いからだ。だから私が嫌いなのは、嫌われることをおそれない人だ。そして自分が見せたくなくて必死に囲っているものを、塀だとすら思わずに軽々と書けてしまう人。簡単に赤の他人を、気持ち悪い、嫌い、と言える人間には勝てない。

少しだけ「嫌われることを恐れない人」のことを怖いと思ってしまった。





『夜はおしまい』というタイトルにはどんな思いが込められているのだろうか。島本さんの作品にはかすかに希望が見え隠れしていることが多い(絶望では終わらない)と感じるけれど、この作品はなんともスッキリしない感じで各話が終わっている感じがした。彼女たちには自分で"夜を終わらせる"力はないのだと思う。だからこそ希望を少し見せてくれる誰かがいるのか、そしてそれは"神"と呼ばれる何かなのか?

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