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『臨床の砦』 夏川草介 作 #読書 #感想

あらすじ(Amazonより)

緊急出版!「神様のカルテ」著者、最新作

「この戦、負けますね」
敷島寛治は、コロナ診療の最前線に立つ信濃山病院の内科医である。一年近くコロナ診療を続けてきたが、令和二年年末から目に見えて感染者が増え始め、酸素化の悪い患者が数多く出てきている。医療従事者たちは、この一年、誰もまともに休みを取れていない。世間では「医療崩壊」寸前と言われているが、現場の印象は「医療壊滅」だ。ベッド数の満床が続き、一般患者の診療にも支障を来すなか、病院は、異様な雰囲気に包まれていた。
「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より

あらすじを読んでいただければ分かるように、この作品ではコロナ禍で逼迫する医療現場の現実が生々しく描かれている。

まさにノンフィクション、とさえ感じる。そのくらい多くの人が知らずに、もしくは目を背けていた現実だと思わされる。

負け戦かもしれないと分かっていながら、それでも治療を続けてくださっている医療現場の方々に感謝の気持ちしか湧いてこない.....というところだ。


48ページより

「圧倒的な情報不足、傾倒だった作戦の欠落、戦力の逐次投入に、果てのない消耗戦」
(略)
「国家が戦争に負けるときというのは、だいたいそういう状況だといいます。(続く)」

この小説に登場している医療現場の方々は、常に「選択」を迫られている。その上、正解はないのだ。コロナが未知のウイルスである部分がまだある中で。もう医療崩壊が起きている中で。「正解はないけれど、正解が出るまで待っている余裕はもうない」という逼迫した状況で、常に「頑張る」という糸をピンと張っている彼らに 頭が上がらない。


いつまで持ちこたえられるか、、、そう考えながら毎日をひたすら治療のために生きる日々の苦しさを、大変さを、過酷さを 私たちはもっと知らなければならないと感じた。





コロナは体だけではなくて「心」を壊すなんていう話はよく耳にするだろう。理解不能な誹謗中傷、怒りの矛先、苦しみのぶつけ合い、不安を駆り立てるSNSの投稿、、、色々な情報が錯綜しているし、いやでも目に入ってくるものがある。

誹謗中傷は正当化すべきではないし、言った側が被害者ヅラをしていることも理解できないな、と思う。

本の主人公である敷島医師は話す。
117ページより

「大切なことは、我々が同じような負の感情に飲まれないことでしょう。怒りに怒りで応じないこと。不安に不安で応えないこと。難しいかもしれませんが、できないことではありません」

この病院で決定権を持つ三笠医師は話す。
198ページより

「自分だけが辛いと思えば、人を攻撃するようになる。自分だけが辛いのではないと思えば、踏みとどまる力が生まれる。(続く)」


負の感情に飲まれないことかぁ。気をつけないといけないな。1人で抱え込んでしまう人が増えてしまうのも良くないし、誰かと(知り合いかどうか関係なく)意見を交換し合うことを望めば、対立が生まれてしまうこともある。なんとなくコロナの話題はタブー、なぜなら人によって意見が分かれてしまうから....というところもあるよね。

というか怒りの矛先を「感染してしまった特定の個人」に向けるくらいなら、とりあえず上の組織、行動しない政府や自治体に向けるのが良いのかもね。彼らはその怒りを、目にしているのか、聞こうとしているのだろうか。



ワクチン3回目の接種が進んでいるけれど、この先どうなるのやら。


終わり。



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