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展覧会づくりの舞台裏で、お客様の声をきく。

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コロナ禍どさくさ企画「器と絵筆ー魯山人、ルソー、ボーシャンほか」展(2021年1月〜2月)が開いて閉じるまで。そしてお客様の声が届いた時のことも。
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2020年10月の記事一覧

「お客様をもっと信頼していいと思うんです。ルールで縛るより、学芸員さんの考え方を伝えるほうが、この美術館らしい姿かと」

「お客様をもっと信頼していいと思うんです。ルールで縛るより、学芸員さんの考え方を伝えるほうが、この美術館らしい姿かと」

生意気な言い方になりますけど、と監視スタッフのチーフが、力強くそう言い切った。ハッとして、じわーとなった。年明けオープンの担当展「器と絵筆―魯山人、ルソー、ボーシャンほか」の仮図面を手に相談しに行ったときのこと。展示室内の写真撮影、という懸案についてだ。とても大事なことがてんこ盛りなので、いつも以上にていねいに書いておく。

展示室での撮影どうする?ここ5年ほどのあいだに、信じられない勢いで「美術

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紙に手描き、が好き。展覧会の平面図も手描き。

紙に手描き、が好き。展覧会の平面図も手描き。

輪郭だけの白い展示室図面に、まず仮設壁だけを描き込む。そのあと、その白い紙をじっと見る。もゃ、と目の奥で何かが動くまで。

現場をうろつくのも好きだ(そうしないとまるで進まない)。目の奥のもゃ、は頭の奥から出てくるというより、実際に展示室をうろうろした自分のからだの奥からたちのぼる。うろうろは2、3週間ほど続ける。作品ではなく虚空を凝視している変人状態。そしてどこかのタイミングで、まる一日かけて図

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コレクション16,000点のカオスのなかに埋もれていたカリブ海。

コレクション16,000点のカオスのなかに埋もれていたカリブ海。

えっ、と思うタイミングでパズルのピースがはまっていくことがある。なんとなく薄ぼんやりと「探している」とき、予感が不意にかたちになることがある。

先月、家人とともにある研究者の知人宅を訪れた。研究分野は宗教社会学に文化人類学、南米のブラジルや、カリブ海のハイチなどがフィールドの方だ。家一軒まるごと埋まるほどの資料をお持ちで、興味のある方にまとめて譲りたいのだがとのこと。長年勤めた大学を退職直後にご

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