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秋の夜空に恋をして_5突然の別れ

(本当はこんな色鮮やかな日々、知りたくなかった...。)
でも、彼がくれた色鮮やかな日々が欲しくって、もう止められなくなってた。
だから、彗斗から旅行に誘ってもらって、お泊り旅行に出かけてーー

旅行最終日の朝ー

目を覚ますと、今朝も彗斗が横に居て
カーテンの隙間から木漏れ日が射し込むリビングで星蘭と七々星、そして彗斗。
3人で食卓を共にした。
この旅行中の毎朝と何も変わらない朝でした。
 
今日はお部屋を出る日なので、
各々でお部屋や荷物の整理をしていました。

彗斗から「少し外にでてくる」と言われたので、
ドアに向かう彼の背中を見送り、七々星はまた荷物整理をするのでした。
特に彗斗から変わった様子は感じられませんでした。

しばらくして、
彗斗は機嫌が悪そうに部屋に戻ってきました。

なんとなく、七々星は何があったのか聞いてはいけないような気がした。
だから、機嫌が悪そうな彗斗を横目に見ながら、星蘭の身支度を素早く済ませるしかなかった。

部屋を後にして、荷物を車に乗せた私たちは、
黙んまりのまま車を走らせていました。
時折見せてくれる少年のような微笑みは今日は全く見れず、
あまりにも黙んまりの時間が続いていたので、幼稚園生の星蘭ですら言葉を発するのを控えていた。
七々星はそんな娘の姿を見ているのが苦しかった。

そして、次の瞬間、私は思わず耳を疑った。





彗斗「ここで降りて」





さっぱり意味が分からない。
ここから電車で帰れと言っているらしかった。
幸いに、ある程度の持ち合わせのお金があった。だから帰ることはできそうだ。
とはいってもです。
七々星は(私、もしくは私たち親子が何をしたというのか)
全く彗斗の心中を理解できなかった。

七々星には聞きたいことがたくさんありました。
(私が何をしたというの?)
(どうして、いきなりここから電車で帰れなんて言いだすの)
(そもそも、今朝外に出た後、あなたに何があったの?)
(黙ってないで何か言ってよ)

だけど、こみ上げてきた感情や言葉たちをグッと飲み込んで
必死で星蘭の前でカッコいい、強いママを演じた。
それだけじゃない、
彼女の中の彗斗を悪者にしないように
必死で色んな言い訳を探して、たくさんの言葉を紡いだ。






あの日とある駅で別れたのを最後に彗斗とのやりとりも無くなった。

(私たちの関係にはいつか終わりがくる)ー。

そう分かっていたつもりだったのに、
全然分かっていなかった。

色鮮やかな日々を、
毎朝食卓を3人で囲んで、夜がやってきたら彗斗の腕に抱かれて眠りにつく。
そんな、彼でいっぱいの毎日を、
いつしか自分は手に入れたくてたまらなくなっていた。









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