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秋の夜空に恋をして_3紅葉の下でもう一度

(30過ぎ、子持ち、バツイチの私がついについに!イケメンとデートする願望が実現出来ちゃいました♡
それにしても、クライマックスまで抜かりがないのはイケメンだからこそ?
もうやることがあざと過ぎて...! )

日付が変わるとともに、
彗斗との夢のような幸せな時間が終わり、ふと現実に戻される七々星。
唇に微かに残る余韻に浸りつつ、淹れたてのコーヒーを飲む。

(最初で最後って割り切ってたのに、なんであんなことするの?)
(「また会いたい」って思っちゃうじゃない...!
  ひどいよ。この感情はどう処理すればいいの?)

行き場のない感情を胸に、
コーヒーの香りに包まれながら気を引き締めるのでありました。
(あ~ぁ...もぅ頑張って忘れよっ さー仕事、仕事!)

彗斗「また会おうよ」

あの日のデートが最初で最後と割り切っていた七々星の心は、
思ってもみなかった彗斗からのお誘いに、嬉しさと恥ずかしさが入り交じっていました。

(何も心配がないと言ったら嘘になる。
 だけど、心の思うままに行動してみてもいいんじゃないかな。)

あの日、ダメだと分かっていたのに「もう一度会いたい」と願わずにはいられなかった七々星は、結局のところ、心配事が決してなかったわけではありませんでしたが、心の思うままにまた彗斗に会うことにしました。


デートの日。

紅葉が綺麗な時期でした。
車から降りて、紅葉の下をふたり並んで歩きます。
平日だったからか人はまばら。
しばらくいくと、人気がすっかりなくなり、モミジの下には彗斗と七々星だけ。

「朝の挨拶は?」
そう言って、少し前を歩く彗斗が振り返りました。
(え?もしかして...)


朝陽がモミジの葉の合間から零れ、
少年のように微笑む彗斗の表情を照らす。
朝陽が照らす彼の顔は、一段とカッコいい。

前回のデートでは、緊張のあまりイケメンの彗斗の顔はもちろん、表情をまじまじと見ることなんて全く出来なかった七々星。
背伸びして、そっと朝の挨拶を交わすのでした。

その後は、温泉宿でゆったりとした時間を過ごしました。
まだ青かった空がすっかりオレンジ色に染まりました。
2回目のデートも終わりの時間が近づき、夕陽を背に今日も星蘭が待つ幼稚園に車を走らせます。

(今日が本当に最後かもしれないから、わがまま言ってみてもいいかな...)

七々星は「イルミネーション見に行きたいな!」と彗斗に勇気を出して伝えてみました。
星蘭を乗せ、彗斗は再び車を走らせます。
七々星のためにクリスマスイルミネーションを見せに連れて行ってくれたのです。

クリスマスまでまだ1か月ありました。
でも、ふたりにはクリスマスを一緒に迎えられる確証はありません。
だから、どうしても今日一緒にイルミネーションを見に行きたかったのです。

本当に綺麗でした。
夜景も素敵でしたが、イルミネーションも格別で。
そして、イルミネーションのキラキラが照らしてくれる彗斗は、まるでおとぎ話の王子様のようにカッコよかったのです。


すっかり夜も更け、車に揺られた星蘭は夢の中。
ふたりは、赤信号につかまる度に何度も何度も唇を重ねました。


2回目のデートは日付が変わっても終わることはなく、ふたりは狭い車内で肩を寄せ合い朝まで一緒に過ごしました。

しかし、ふたりは心に妙なざわめきを感じていました。
それでも、今はこの幸せ過ぎる時間が少しでも長く続いてくれることだけをただただ切実に願うしかなかったのです。



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