メルシーベビー

言葉の国、文字通り、本棚6番街に住んでいます。

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記事一覧

ずっと賢さに憧れている

 「絶望は愚か者の結論」だと言われる。悲観して絶望してしまうのは楽なことで、「終わった」ことにしてしまえば、それ以上なにもしなくて済む。それは楽ではあるけど怠惰…

13

結婚すると、結婚しなくてよくなる

 結婚・出産したらメンタルが安定した。という話をすこし前に書いた。  なんでだろうと考えて、きっと正当化する必要がなくなったからだ、と気づく。結婚しない理由、…

「偽韓国語」というジャンルについて考えている。たとえば乾杯を「ノミホセヨー」、サンドイッチを「ハムハサムニダ」とか言うやつ。他にもあるんだろうか。あるんだろうな。
偽中国語というのもあり、「我遅刻」「汝今何処」「我今西口也」みたいなやり取りを言うわけだけど、韓国語verも面白い。

子どもを子どもと思えるまでに

 こんな話を聞く。  ある夫婦が、子どもは持たない前提で結婚した。ところが男性のほうがどうしても子どもが欲しくなり、奥さんに頼みこんで産んでもらう。奥さんの出…

インド料理屋にカレーを食べに行く。ネパール人の店員さんから
「日本語あまり得意じゃない?お国は?」
と言われてしまい、とっさに
「台湾」
と答えて帰ってきた。もう行けないよあの店。

いま思えば、秋田って答えればよかったかもしれない。んだー秋田弁で話してけれーって言えばよかった。

深夜のすべて

むかしラジオか何かで、ある声優が話していた。その世界ではかなりのキャリアがある人らしかった。 「深夜アニメをやったとき、『あなたはすごくうまいので、これから絶対…

家庭を持つ。メンタルの安定

 霧雨の降る日に、旦那さんが傘を差し、自分が赤ちゃんを抱いて3人で歩いた。そこで味わったのは、かつてないメンタルの安定だった。幸福感とは違う。なにかとても安定し…

10代の頃「文章書くの好きなんだ」「わたし絵描けるよ。メルシーちゃんが書いた詩に、わたしが絵をつけるのいいね」なんて会話をした人が二人いて、でもどっちも実現しなかった。音楽をやっている人とは、絵を曲に入れ替えて同じ会話をしたけど、やっぱり会話だけで終わった。そういうことってある。

12

0円で幸せになる

 夢を見るのはタダだけど、見せてもらうには金がかかる。最近の詐欺事件を見ているとそんなことを思う。加害者が書いた「ターゲットになりそうな人」の項目には「夢を持っ…

19

むかし話、いまの話

 両親は完璧ではなかったけれど、いいところもたくさんあった。最近は「毒親」なんて言葉が流行っていて、ひどい親御さんのエピソードには事欠かないのだけど、そんなとき…

10

君の名は

 フリードリヒ2世と言えば、赤ちゃんを対象にした非道な実験をした人である。と言っても、本人が極悪人だったとかそんなことではなく。フリードリヒさんはただ、赤ちゃん…

9

軟弱なモヤモヤ

 なにが正しいのか、わからなくなっちゃったな。最初からわかってなかったとも言えるけど。  少し前にした出産は、医師もやや驚くくらい安産だった。理由はいくつかあ…

8

産後のからだ、あるいは女性の活躍

 見る夢が普通になってきた。産後はなぜかしばらく、夢が3D映像みたいに見えたのだ。妙に立体的な映像がまぶたの裏に浮かんで、なんでいきなりそうなるのかわからなかった…

14

普通においしい、それって最高

 「誰にでも好かれる」なんて所詮は不可能なのだけど、それにしてもサブレを嫌いな人はいないだろう。出産祝いに届いた箱の中の、丸いお菓子を見ながらそう思っている。か…

10

「幸福は、一瞬吹いて去る風みたいなもの」とエッセイに書いていたの、川上未映子だったかな。これは本当にその通りで、たとえば今みたいに、なんかいい感じの曲がラジオから流れていて、それが誰の曲かわからないとき。もしくは赤ちゃんから、ほんのりいい香りがするとき。消えるから価値のある瞬間。

10

世間知らず

 「世間ではよくこう言われている」ことを、自分に言った人はほとんどいなかった。親が離婚すると子どもは不幸なものだ、とか。女は結婚して子どもを産むものだ、とか。あ…

13

ずっと賢さに憧れている

 「絶望は愚か者の結論」だと言われる。悲観して絶望してしまうのは楽なことで、「終わった」ことにしてしまえば、それ以上なにもしなくて済む。それは楽ではあるけど怠惰であり、もっと言えばバカなのだ。

 逆に、賢い人は希望を見つけ出す。どうにか事態を突破できないか、あるいは明るい見通しがどこかに見出せないかとあがく。自分が「賢い」という言葉に感じるのは、そういうことだ。希望を持ち続けて、あがき続ける力

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結婚すると、結婚しなくてよくなる

 結婚・出産したらメンタルが安定した。という話をすこし前に書いた。


 なんでだろうと考えて、きっと正当化する必要がなくなったからだ、と気づく。結婚しない理由、出産しない言い訳を考えなくて済む。これこれこういう理由でどちらもしないんです、と、いちいち申し開きせずに済む。自分の境遇を逐一、正当化しなくていい。

 とはいえ、かつて誰も「どうして結婚しないの?」なんて聞いてきたことはなかった。親

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「偽韓国語」というジャンルについて考えている。たとえば乾杯を「ノミホセヨー」、サンドイッチを「ハムハサムニダ」とか言うやつ。他にもあるんだろうか。あるんだろうな。
偽中国語というのもあり、「我遅刻」「汝今何処」「我今西口也」みたいなやり取りを言うわけだけど、韓国語verも面白い。

子どもを子どもと思えるまでに

子どもを子どもと思えるまでに

 こんな話を聞く。

 ある夫婦が、子どもは持たない前提で結婚した。ところが男性のほうがどうしても子どもが欲しくなり、奥さんに頼みこんで産んでもらう。奥さんの出した条件は、育児はすべて夫がすること。
 無事女の子が生まれたあと、男性は約束を極力守り、ひとりで子育てをする。奥さんはなにも手伝わない。ワンオペが辛くなった夫のSOSにもほとんど応えない。男性は「確かに約束はしたけれど、彼女にとっても自

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インド料理屋にカレーを食べに行く。ネパール人の店員さんから
「日本語あまり得意じゃない?お国は?」
と言われてしまい、とっさに
「台湾」
と答えて帰ってきた。もう行けないよあの店。

いま思えば、秋田って答えればよかったかもしれない。んだー秋田弁で話してけれーって言えばよかった。

深夜のすべて

深夜のすべて

むかしラジオか何かで、ある声優が話していた。その世界ではかなりのキャリアがある人らしかった。

「深夜アニメをやったとき、『あなたはすごくうまいので、これから絶対売れると思います!頑張ってください!』ってお便りが届いたんです。深夜アニメやってる奴の、全員が新人じゃねーぞ!」

もう売れている人に対する、なかなかのお便り。

アニメはあまり見ないから事情は知らない。でもそんな勘違いをしてしまうくらい

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家庭を持つ。メンタルの安定

 霧雨の降る日に、旦那さんが傘を差し、自分が赤ちゃんを抱いて3人で歩いた。そこで味わったのは、かつてないメンタルの安定だった。幸福感とは違う。なにかとても安定した気持ち。パズルのピースがきちんとはまって落ち着くような。

 こういうものを味わえるということは、やっぱり人間、結婚して子どもを産むことが幸せに違いない。なんてことは言わない。

 メンタルが不安定な時期に結婚・出産していたら、どうな

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10代の頃「文章書くの好きなんだ」「わたし絵描けるよ。メルシーちゃんが書いた詩に、わたしが絵をつけるのいいね」なんて会話をした人が二人いて、でもどっちも実現しなかった。音楽をやっている人とは、絵を曲に入れ替えて同じ会話をしたけど、やっぱり会話だけで終わった。そういうことってある。

0円で幸せになる

0円で幸せになる

 夢を見るのはタダだけど、見せてもらうには金がかかる。最近の詐欺事件を見ているとそんなことを思う。加害者が書いた「ターゲットになりそうな人」の項目には「夢を持ってない」などの内容があり……。

 自力で夢を見られず、ひとさまに見せていただこうと思えば、観覧料くらいは取られる。ということは、ここを自前でなんとかできれば、そのぶん節約になる。かもしれない。

 むかし岡田淳の児童向け文学で「夢見る

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むかし話、いまの話

むかし話、いまの話

 両親は完璧ではなかったけれど、いいところもたくさんあった。最近は「毒親」なんて言葉が流行っていて、ひどい親御さんのエピソードには事欠かないのだけど、そんなときこそ「してもらってよかったこと」を考えるのは悪くない。

 両親はよく、兄とわたしが小さかった頃の話をしてくれた。

 幼い兄のしたことと言えば──たとえば、ハンガーで父親の鼻をひっかけて引っ張ったこと。父が帰宅するなり「お父さんおかえ

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君の名は

 フリードリヒ2世と言えば、赤ちゃんを対象にした非道な実験をした人である。と言っても、本人が極悪人だったとかそんなことではなく。フリードリヒさんはただ、赤ちゃんを集め、言葉を教えないで育てただけだった。

 どんな言語にも触れさせずに赤ん坊を育てたら、最初にどんな言葉を発するんだろう?子どもが初めに話すのは、フランス語だろうか、ラテン語だろうか?それとも他の言語?人間の始まりの言語は何だろう。そ

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軟弱なモヤモヤ

軟弱なモヤモヤ

 なにが正しいのか、わからなくなっちゃったな。最初からわかってなかったとも言えるけど。

 少し前にした出産は、医師もやや驚くくらい安産だった。理由はいくつかある。ひとつには、まだ20代だったこと。それから妊娠中(妊娠前も)、お酒やタバコをやらなかったこと。冷たい飲みものや食べものを避けたこと。

 短いスカートもはかなかった。体を冷やすことは悪だと、母親からさんざん聞かされていた。高校や中学

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産後のからだ、あるいは女性の活躍

産後のからだ、あるいは女性の活躍

 見る夢が普通になってきた。産後はなぜかしばらく、夢が3D映像みたいに見えたのだ。妙に立体的な映像がまぶたの裏に浮かんで、なんでいきなりそうなるのかわからなかった。

 出産で夢の見え方が変わるなんて、そんな話聞いたことないな……。ずっとそのままなのか、産後すぐだけの話なのか。よくわからないまま過ごしてみたら、答えは後者だった。

 近頃は前と同じように、映画のような映像で夢を見る。なんだろう、わ

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普通においしい、それって最高

普通においしい、それって最高

 「誰にでも好かれる」なんて所詮は不可能なのだけど、それにしてもサブレを嫌いな人はいないだろう。出産祝いに届いた箱の中の、丸いお菓子を見ながらそう思っている。かおる堂のカオルサブレ。

 かおる堂とは、地元秋田で名の知れたお菓子屋さんで、小さい頃からごくあたりまえにその名前を目にしてきた。いま改めて、その箱やパッケージを見ている。中に入っている、この絵は東郷青児か。名物のサブレにはちょっとしたポ

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「幸福は、一瞬吹いて去る風みたいなもの」とエッセイに書いていたの、川上未映子だったかな。これは本当にその通りで、たとえば今みたいに、なんかいい感じの曲がラジオから流れていて、それが誰の曲かわからないとき。もしくは赤ちゃんから、ほんのりいい香りがするとき。消えるから価値のある瞬間。

世間知らず

世間知らず

 「世間ではよくこう言われている」ことを、自分に言った人はほとんどいなかった。親が離婚すると子どもは不幸なものだ、とか。女は結婚して子どもを産むものだ、とか。あるいは、片親育ちだと健全な子に育たない、とか。

 自分の周りにいた人は、だいたい最初からこう言っていた。

「結婚したまま親がケンカばかりしているより、さっぱり離婚して暮らしたほうがいい。そのほうが子どものため」

「結婚しなきゃいけな

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