メルシーベビー

言葉の国、文字通り、本棚7番街に住んでいます。エルマニア国立大学日本語日本文学科修士卒。

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言葉の国、文字通り、本棚7番街に住んでいます。エルマニア国立大学日本語日本文学科修士卒。

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記事一覧

子どもの壊し方

 義理の妹から、スープ専門店の離乳食セットが届いた。対象月齢は9ヶ月以降なので、いまの赤ちゃんにはちょっと早い。でもその気持ちが嬉しい。  セットに同封されてい…

11

十五夜のお月見は逃してしまった。赤ちゃんのお散歩のときに出た昼間の月の白いのだけ覚えている。今日旦那さんがうさぎ饅頭を買ってきてくれたので、それを食べて遅い十五夜とする。赤ちゃんには「♪うーさぎうさぎ、何見て跳ねる」を歌ってあげた。月の模様って、ホントに餅つきウサギに見えるかな。

ブルーカラーな私たち

 父親はむかし、建設現場の現場監督をしていた。  一口に現場仕事といってもいろいろある。雇われて働く人もいれば、人員を管理する人もいる。父は後者だった。マネー…

ちゃんと叱られて育ちたかった?

 ちゃんと叱られて育ちたかった。そんな思いがどこかにある。  「ゆとり」と揶揄されて育った世代だから、学校でしばかれたという記憶がない。運動部の子たちは多少、…

おっぱいが大好き

 昼寝の前に授乳していたら、赤ちゃんがウトウトし始めた。赤ちゃんは、よくおっぱいを飲みながら目をつむる。つむったまま寝ることもある。ベッドで横になって授乳してい…

下着メーカーが、女性用ふんどしを売り出したときがあった。「あれは紐だから、パンツのゴムと違ってお腹を締めつけないからいい」と聞いて、何気なく父に「そうらしいよ」と言った。すると父は「お前ふんどしなんか着ける気か?もしそうなら勘当だぞ」と急に温度が高くなった。なんだったんだ、あれ。

本日は「すやすや水曜日」です。いつもより早く寝ましょう。夜が涼しくなってきた地域の方、温かい飲みものがおいしい季節です。画面を離れ、ゆっくりあったまって布団に入ると吉。

最近は赤ちゃんに「♪あれ鈴虫が~鳴いている~♪」を歌っている。自分がいる地域では、まだ蝉が鳴いているけれど。

ゆるく繋がっている

 赤ちゃんの写真を撮る。だいたいはまず、実家の父に送る。それから義理の両親(グループラインを組んでいる)に送る。母親はスマホを持たず、携帯もパソコンも持たない人…

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赤ちゃんは、同時におばあちゃん

 生後5ヶ月ちょっと。生まれた人は「小さいほうの赤ちゃん」から「大きいほうの赤ちゃん」へと進化を遂げている。生まれたときには、細くサラサラだった髪も、最近はやや…

20

「顔がかわいい」

 かつて何かの本で読んだこと。「昔の日本では、女性の採用条件に『容姿はよいほうが望ましい』とあった。ちなみに官公庁になると『容姿はすこぶる美人がよい(一緒に働く…

17

仕事で一番大事なこと

 いままでお世話になった上司は何人もいて、皆いい人たちだった。セクハラもパワハラもなかったし、むしろ「年下の女性」ということで、自分はずいぶん気を遣われてきたと…

22

日常的殺人、もしくは幸福

 世界で一番殺人が多い場所は、職場もしくは家庭である。という話を、どこかで読んだ。子どもであれば、職場を学校に読み換えてもいいだろう。  わたしたちは、ときお…

28

散歩に出ると、子どもを2人、3人連れている女性がちらほら。見ていると「自分も2,3人産んだほうがいいのかな」という気になる。

思い出すのは、小さいころ逆上がりができなかったのに、1回だけできたこと。みんなが連続で成功していて、自分もいける気がしてその時だけできた。正の同調圧力。

10

子どもは憎くてあたりまえ

 自分が母親にとって、最大に厄介な存在であることに気づいたのは、20歳になるか、ならないかの頃だった。なんでそう思ったのか、過程は覚えてない。ただあるとき「自分は…

21

非実用的おっぱい

 出産したとき、助産師さんから母乳指導を受けた。 「おっぱいには、実用性と非実用性があって」 と、助産師さんは指を二本出して説明する。 「実用性っていうのはも…

14

線香花火に火を点ける。手持ちの花火は、線香花火以外にやりたくない。派手に火花を散らす明るいやつは、どうにも性に合わない。

それにしても最近の線香花火は、パチパチパチ……ボトッ……みたいな、唐突に終わるのが多い。なんかもっとこう、ゆっくり火花が弱くなっていく、情緒ある感じがいい。

9

子どもの壊し方

 義理の妹から、スープ専門店の離乳食セットが届いた。対象月齢は9ヶ月以降なので、いまの赤ちゃんにはちょっと早い。でもその気持ちが嬉しい。

 セットに同封されていたミニレターには、こんな文章が書かれていた。


 ありがとうございます。時期が来たらおいしくいただきます。

 文の中の「ごはんはできるだけ手作りしたいけど、たまにはちょっとお休みできたらうれしい」を見つめる。この背後には「やっぱ

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十五夜のお月見は逃してしまった。赤ちゃんのお散歩のときに出た昼間の月の白いのだけ覚えている。今日旦那さんがうさぎ饅頭を買ってきてくれたので、それを食べて遅い十五夜とする。赤ちゃんには「♪うーさぎうさぎ、何見て跳ねる」を歌ってあげた。月の模様って、ホントに餅つきウサギに見えるかな。

ブルーカラーな私たち

 父親はむかし、建設現場の現場監督をしていた。

 一口に現場仕事といってもいろいろある。雇われて働く人もいれば、人員を管理する人もいる。父は後者だった。マネージメントする側。同僚はみな大卒で、中にはいいトコの大学を出ている人もいた。

「でもな、作業服着て働いとると、近く通りかかった親子連れのお母さんがこっち見て言うんだわ。『ちゃんと勉強しないと、将来ああなっちゃうわよ』ってな。それ聞いた同

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ちゃんと叱られて育ちたかった?

 ちゃんと叱られて育ちたかった。そんな思いがどこかにある。

 「ゆとり」と揶揄されて育った世代だから、学校でしばかれたという記憶がない。運動部の子たちは多少、厳しい指導も受けただろうが、自分は文化部だった。文化部なら指導されないというものでもないが、厳しい扱いは受けたことがない。

 学校の先生たちは、怒り怒鳴ることはあっても、適切に「叱る」ことはほとんどなかった。生徒の将来のためを考えて、

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おっぱいが大好き

おっぱいが大好き

 昼寝の前に授乳していたら、赤ちゃんがウトウトし始めた。赤ちゃんは、よくおっぱいを飲みながら目をつむる。つむったまま寝ることもある。ベッドで横になって授乳しているときは、だいたいそのまま入眠する。

 のだけれど、今日はなぜかずっと吸っていた。ウトウトして寝たっぽいから「もういいかな」とそっと離れようとすると、ふぇーと泣いてジタバタする。また吸い始める。ウトウトする。離れようとする。ふぇー。

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下着メーカーが、女性用ふんどしを売り出したときがあった。「あれは紐だから、パンツのゴムと違ってお腹を締めつけないからいい」と聞いて、何気なく父に「そうらしいよ」と言った。すると父は「お前ふんどしなんか着ける気か?もしそうなら勘当だぞ」と急に温度が高くなった。なんだったんだ、あれ。

本日は「すやすや水曜日」です。いつもより早く寝ましょう。夜が涼しくなってきた地域の方、温かい飲みものがおいしい季節です。画面を離れ、ゆっくりあったまって布団に入ると吉。

最近は赤ちゃんに「♪あれ鈴虫が~鳴いている~♪」を歌っている。自分がいる地域では、まだ蝉が鳴いているけれど。

ゆるく繋がっている

ゆるく繋がっている

 赤ちゃんの写真を撮る。だいたいはまず、実家の父に送る。それから義理の両親(グループラインを組んでいる)に送る。母親はスマホを持たず、携帯もパソコンも持たない人なので、電話で赤ちゃんの声を聞いてもらう。

 父に送った写真は親戚に回り、遠くのおじさんおばさんたちに届く。そうしてほしいと頼んだわけではないが、幸せが伝染するからいいと思う。かわいい赤ちゃんの様子はみんな見たい。そういうわけで、3日に

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赤ちゃんは、同時におばあちゃん

 生後5ヶ月ちょっと。生まれた人は「小さいほうの赤ちゃん」から「大きいほうの赤ちゃん」へと進化を遂げている。生まれたときには、細くサラサラだった髪も、最近はややコシのある、しっかりした質感に変わってきた。

 この頃になると人見知りが始まる。「ふだんから顔を見ている大人」と「そうでない大人」を峻別するようになり、後者に会うと泣く。このあいだは保育園の見学に行って、見慣れない保育士さんを前にわあわ

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「顔がかわいい」

 かつて何かの本で読んだこと。「昔の日本では、女性の採用条件に『容姿はよいほうが望ましい』とあった。ちなみに官公庁になると『容姿はすこぶる美人がよい(一緒に働く男性の能率が上がるので)』だった」。

 そのとき「ほほぉ……本当ですか、男性?」と思って、父親に聞いてみた。

「自分が人事だったとして、応募してきた女性を『顔』で採用する?」

「しないね。おまえ、会社のカネをなんだと思ってる?不

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仕事で一番大事なこと

 いままでお世話になった上司は何人もいて、皆いい人たちだった。セクハラもパワハラもなかったし、むしろ「年下の女性」ということで、自分はずいぶん気を遣われてきたと思う。真面目に働く、いい人たちだった。みんな。

 そして「いい人」と「仕事のできる人」は違う。上司が複数人いると、どうしても見比べてしまう。出世が遅れている人もいれば、本社の高い地位に登り詰める人もいる。それは何が違うんだろう。仕事がで

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日常的殺人、もしくは幸福

 世界で一番殺人が多い場所は、職場もしくは家庭である。という話を、どこかで読んだ。子どもであれば、職場を学校に読み換えてもいいだろう。

 わたしたちは、ときおり起きる凄惨な殺人事件には注目し、心を痛める。そんな目に遭わないように気をつけようと思う。でも、日常的に起こっている出来事には、あまり注意を払わない。

 昨日も今日も上司からパワハラを受けている、とか、このところ慢性的に夫婦仲が悪いと

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散歩に出ると、子どもを2人、3人連れている女性がちらほら。見ていると「自分も2,3人産んだほうがいいのかな」という気になる。

思い出すのは、小さいころ逆上がりができなかったのに、1回だけできたこと。みんなが連続で成功していて、自分もいける気がしてその時だけできた。正の同調圧力。

子どもは憎くてあたりまえ

 自分が母親にとって、最大に厄介な存在であることに気づいたのは、20歳になるか、ならないかの頃だった。なんでそう思ったのか、過程は覚えてない。ただあるとき「自分はある日突然、母親の人生に現れた人間なんだ」と気づいた。

 自分にとって母は、人生の始まりからあたりまえにいる存在だった。母にとって自分はそうじゃない。この非対称性に気づいて、思わず動きを止めた。そうして、ある日突然現れた自分は、身の回

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非実用的おっぱい

非実用的おっぱい

 出産したとき、助産師さんから母乳指導を受けた。

「おっぱいには、実用性と非実用性があって」

と、助産師さんは指を二本出して説明する。

「実用性っていうのはもちろん、授乳です。赤ちゃん、おっぱい飲むんで。でもそうじゃなくて、単に『落ち着きたい』とか『ちゅぱちゅぱしていたい』って理由でそうしているときもあります。安心するために『おっぱい欲しい~』ってなるとかですね」

 はい。いうまでもな

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線香花火に火を点ける。手持ちの花火は、線香花火以外にやりたくない。派手に火花を散らす明るいやつは、どうにも性に合わない。

それにしても最近の線香花火は、パチパチパチ……ボトッ……みたいな、唐突に終わるのが多い。なんかもっとこう、ゆっくり火花が弱くなっていく、情緒ある感じがいい。