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心の力が生む知識:精神力が子供の知能を如何に形成するか

難局に立ち向かい、肩を落とさず、堅実に生きていってほしい。

そんな期待を抱く親の視点から見れば、現代社会の予測不可能性の中では、やはり子供の精神力こそが最も重要な要素と言えます。

親として、その子供の心を鍛え上げるための科学的アプローチを探求することは、私たちの最大の関心事の一つです。

そしてここで伝えたいことは、子供の精神力を育むことが、知能を刺激し、引き上げる最善の方法であるという点です。

これは、心理学や脳科学の研究を通じて何度も確認されてきた事実です。

その研究の中でも特に目立つものの一つは、アメリカで注目を集めている「SEL」の研究です。

「SEL」は「Social Emotional Learning」の略で、その目的は子供の社会性を育成し、感情の認識とコントロールのスキルを教えることにあります。

アメリカの教育界では、SELの理念を元に、子供の心と社会性の発展を科学的に支援するためのプログラムの開発が進められています。

この動きの火付け役となったのが、イェール大学による一つの研究です。彼らは学校のカリキュラムに社会性と感情を支援するプログラムを導入したところ、子供の精神力が強化され、学業成績も大幅に向上したのです。

このイェール大学の研究を皮切りに、数多くの同様の研究報告がなされてきました。

さらに、この効果はアメリカ独特のものではなく、文化に依存しないことも明らかになりました。

SELプログラムへの投資の回収率(ROI)を計算すると、元の投資の20倍という見積もりが出ています。

したがって、私たちが伝えたいことは、精神的サポートは教育的サポートと同義である、ということです。

適切な自己肯定感の育成が必要

それでは、「自己肯定感」について深掘りしていきましょう。

現在、自己肯定感について解説する本や動画が氾濫していますが、それぞれが一貫性を欠いていたり、逆の情報を提供していることも珍しくありません。

中には子育てにおける危険な誤解を広めるものも含まれていますので、子供に向けて無分別な自己肯定感を奨励するのは避けるべきです。

自己肯定感の育成が反作用を引き起こすこともあります。そこで、世間で流布する、自己肯定感を育む上での危険な手法について一緒に見ていきましょう。

最初に取り上げるのは、「成功体験」による自己肯定感の強化です。この手法は、子どもに多くの「達成感」を体験させることで、自己肯定感を養う方法です。

例えば、学業やスポーツ、日常生活、家庭の手伝いなど、目標や課題を設定し、子どもが挑戦できるまで支援します。

達成した際には、分かりやすく称賛し、プレゼントやお小遣いを与えることもあります。

この方法の鍵となるのは、達成したことが善であるという意識を子どもに植え付けることです。

直感的で説得力のある育児法であるため、誰もが試したくなるでしょう。

しかしながら、この「成功体験」を基盤にした自己肯定感強化法には注意が必要です。なぜなら、子どもの成功体験を過度に強調することで、外的な報酬に頼りがちになってしまうからです。

過剰な「成功体験」が子供の心と身体に負の影響を及ぼす

述べたように、「達成した!」という感覚は、心の基本的な欲求の一つです。そのため、純粋な達成感を味わわせること自体は、極めて重要です。

だが、その成功体験を強調しすぎて、過度に称賛したり、物質的な報酬を与えたりすると、子どもの「内発的なモチベーション」が破壊されてしまいます。

問題なのは、子どもが賞賛やお小遣いなどの外的な報酬を得てポジティブな気持ちになり、その瞬間に自己肯定感が高まることです。

だが、それこそが罠なのです。

なぜなら、外的な報酬に基づく自己肯定感は短期的には強力でも、長期的に依存すると心と体に害を及ぼすからです。

例えば、うつ病や不安、頭痛や肩こりといった身体的健康問題、人間関係における問題が生じる可能性があります。

特に子どもは、外的な報酬を追求し続けることで、タバコやアルコール、薬物などへの依存リスクが高まるとされています。

そのため、「成功体験」を基盤にした育児をする際には、意識的に過度な外的報酬を避けるべきです。

称賛やお小遣いによって気分が良くなり、一時的に自己肯定感が上昇したとしても、長期的には心と体のリスクが高まります。

子どもが「達成できた」と感じることは重要ですが、その喜びを誇張する必要はありません。実際には、そのような行為は避けるべきです。

ネガティブな感情は「忘れる」より「受け入れる」

自己肯定感に関して注意すべきもう一つの点は、ネガティブな感情を無理に抑え込んだり、強引に忘れようとするのは逆効果だということです。

不快な出来事が起きたとき、それを忘れようとしても気になってしまうことがあります。

逆に、その感情を抑え込もうとするほど、ネガティブな感情が強まってしまいます。

結果として、忘れようとするほど忘れられず、ネガティブな感情が持続してしまうのです。

ネガティブな感情が心と体に負の影響を及ぼすことは、否定することはできません。

事実として、感情を抑え込む傾向にある人々は、疾病による死亡リスクが30%増加し、がんの発生リスクも70%上昇するという衝撃的なデータが存在します。

この点を考慮すると、子供に対してネガティブな感情を無理矢理忘れさせたり、押し込めたりするのではなく、ネガティブな感情とどう向き合うかを教えることが必要となります。

私たち人間は、ネガティブな感情を持つ自分を認識し、その自分を受け入れたとき、初めて自己改革の準備ができます。

この事実は、カール・ロジャースによって次のように語られています。

「我々が自己の真の姿を認識し受け入れるとき、そこにパラドックスが存在する。それは、自己を受け入れるという行為そのものが、自己を変革させる道筋をつけるのだ」と。

これはまさに子供たちに育ててほしい自己肯定感の核心です。

外的な報酬に基づく「成功体験」を中心にした育児は禁物であり、またネガティブな感情を強制的に忘れさせようとするのも適切ではありません。

そうすると、一体どのような自己肯定感を育成すべきなのでしょうか?

その答えは一言で言えば、「自己をそのまま受け入れる心」です。

この自己肯定感の要素は二つ、すなわち「自己受容(Self-acceptance)」と「自己価値(Self-worth)」から成り立っています。

まず一つ目、「自己受容」はロジャースの指摘する「自己をそのまま受け入れる」心のことを指します。

自分自身を、ポジティブな面もネガティブな面も含めて受け入れる。

この心が持てる人は、心理的に安定し、幸福感が高まる。反対に、自己受容ができない人はストレスが高まり、うつ病のリスクが上昇します。

また、自己受容が高い人はストレスマネジメントのトレーニングにおいて、メンタルを強化する効果が見られやすく、身体の傷の治癒が早く、また寿命が延びるという報告も存在します。

自己受容が高い人は、そのことが心と体の健康に直接的に寄与します。

現実の自分を包み込む: 自己受容と自己価値

自己肯定感のもう一つの柱、「自己価値」は、私たちが自身を全体として受け入れた上で、自身に対する価値を認識し、自己に投資するプロセスです。

例えば、以下に挙げる2つの視点は、日常生活の中で自己価値を見つけ出すことのシンプルな表現と言えます。

また仕事で遅刻した自分に悔しい気持ちを感じる。だけれども、この経験を明日への改善の糧とし、新たな一日に挑もうとする。

自分の弱さを直視し、それを認めることができる自分に誇りを感じる。未だ未熟で、思うような結果を出せていない自分がいる。だけど、未来の自分に向けて努力する姿を自身に感謝する。

自己価値が感じられないと、心の病であるうつ病や不安症に陥るリスクが増加します。一方、自己価値を認識し続ける人々は、幸福感を持ちやすく、厳しいストレス状況にも耐える力があります。

さらに、自己価値の認識は、学業の成果や職場での実績向上にも寄与するとの報告があります。

子供たちには「現実の自分を愛おしく思う心」を育んでほしいのです。それは「自己受容」と「自己価値」が、彼らの精神的健康にとって有益だからです。

ナルシシズムとの違い: 自己肯定感を適切に育むために

自己肯定感の重要性を説明すると、よくある疑問が出てきます。

「自己肯定感を育てることは理解できるけれど、それが行き過ぎると、子供が自己中心的(ナルシシスト)になってしまうのではないか?」

ご安心ください。心理学の領域では、自尊心が高い人とナルシシズムは異なるとされています。その違いを詳しく見てみましょう。

ナルシシストは、自分が他人以上に特別で優れているという感覚を持ち、周囲からの承認や敬意を得ることに執着します。

その動機は、賛美や社会的地位といった外部からの報酬に求められています。これは、外部動機づけが長期的な自己満足感を生むリスクを増加させます。

一方、「自己受容」と「自己価値」を持つ人々は、自分自身の存在そのものに価値を認め、それによって満足を感じています。

彼らはナルシシストとは違い、他人との比較や優越感によって承認欲求を満たそうとはしません。

ナルシシストとは対照的に、真の自己肯定感を持つ人々は、他人に優越することに満足を感じても、その自己に対する満足感は低いままです。

ナルシシストは、他人を見下し、傲慢な態度を取るため、人間関係がうまく進まず、彼らが望む承認を得ることが困難になります。

その結果、心理的な安定性が欠如します。

以上の比較から明らかなように、「求めるべき自己肯定感」と「ナルシシズム」は全く別のものです。

したがって、「求めるべき自己肯定感」を育てても、子どもはナルシシストにはならないでしょう。そのキーは、どのように「自己を肯定」するか、にあるのです。

長期的な幸福感を育むためには、他人との比較や外部からの認識に基づく自己評価は避けるべきです。

これらは一時的な満足感を提供しますが、結果的に心と身体のストレスを増大させ、自己中心主義の萌芽を促す可能性があります。

それゆえ、子どもたちには比較の罠から逃れ、自身の本質的価値を見つける方法を教えることが重要となります。

次に、究極のメンタルスキルとも言える「ディスタンシング」の理念を、子どもたちに授けることを強く推奨します。

「ディスタンシング」とは、自身の感情に適度な距離を持つ技術を指します。これは、自分の思考や感情を冷静に観察する力を養う最新の心理学的アプローチです。

私たちの心は、一度ネガティブな感情に引き込まれると、マイナスの渦にどんどん巻き込まれていく傾向があります。

たとえば、悲しい失恋を経験した場合、その痛みによって自分自身を責め、過去の選択を反省し、自己否定に陥ることがしばしばです。

このネガティブな思考ループは、時に数日、数週間と続き、精神的にも体調的にもダウンさせます。

しかし、一方で私たちは時折、「現実に目覚め」ます。その瞬間、自己批判を一時的に中断し、「実際には、自分が悪いわけではない」「これを機に新しい出会いを見つけることも可能だ」といった新たな視点が生まれます。

この「現実に目覚める」瞬間こそ、「ディスタンシング」の本質です。自分の思考や感情に囚われることなく、一歩引いてそれらを観察することで、ネガティブなスパイラルから抜け出し、新たな視点を得ることが可能となります。

最近の研究によると、このディスタンシングのスキルは、感情の安定、精神力の強化、冷静な判断力の養成、さらには人間関係の向上につながります。

ネガティブな感情を無理に抑制または忘却しようとすると、それは逆効果になることがあります。

ディスタンシングの力を身につけることで、子どもたちは自己批判に陥ったときでも、自分自身を冷静に見つめ直し、それを通じて自己を受け入れる力を養うことができます。

この「ディスタンシング」は、子どもたちに教えておきたい、メンタル力強化の究極のツールと言えるでしょう。

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