名無しのよっしー

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【口が裂けても言いたい話】「映画におけるメタ情報

映画「糸」をネットフリックスで鑑賞。言わずと知れた中島みゆきの名曲「糸」をモチーフにした映画。主演は菅田将暉、小松菜奈。 漣と葵……北海道の大地で生まれ育ち、中学生の頃に一度結ばれかけたふたりの恋は身勝手な大人たちによって引き裂かれてしまう。成長し、別々の道を歩んだふたりの人生の糸はやがて、20年余りの時を超えてひとつに結ばれていく。 今となっては、菅田将暉・小松菜奈の結婚のきっかけとなった映画というイメージのほうが強い作品。ビッグカップルの結婚はもちろん喜ばしいことだが

    • 【口が裂けても言いたい話】「狂気と感動は紙一重」

      映画「そして、バトンは渡された」をネットフリックスで鑑賞。幼い頃から波乱万丈の人生を歩む女性の半生を描いた瀬尾まいこの同名小説を、永野芽郁、田中圭、石原さとみという豪華キャストで映画化。 物心つく前に母親を亡くし、父親ともワケあって離れて暮らすことになったみーたん。父の再婚相手であり、ひたすら自由奔放に生きる梨花に時に励まされ、時に振り回されながら成長するみーたん。3度目の再婚後、梨花は唐突にみーたんの前から姿を消してしまうが、母の奔放な生き方には、娘には決して知られてはい

      • 【口が裂けても言いたい話】「取るに足らないゲーム日記」

        Eテレで放送中の「ゲームゲノム」を毎週楽しみに見ている。毎回違ったゲームタイトルがテーマとして取り上げられ、制作秘話やストーリーなどをゲストとともに掘り下げていく。今年の10月よりレギュラー放送となった。 年齢とともに味の好みが変わっていくというが、ゲームの好みもいつの間にか変わってしまうようだ。子供の頃はストーリー性のあるRPGばかりを買って没頭して遊んでいたが、PS4を手に入れてからは「FF14」のような、終わりがなく、何度でも繰り返し遊べるオンラインRPGにしか興味が

        • 【口が裂けても言いたい話】「松田聖子はなぜ(歌姫)と呼ばれなかったのか」

          渡邉裕二著「中森明菜の真実」読了。アイドル全盛期の1980年代をトップ歌手として駆け抜け、歌姫と呼ばれるまでになった中森明菜の芸能人生についてルポルタージュ形式で綴っていく。 本書では中森明菜の出生からプロデビュー、そして不世出の歌姫としてスターダムに上り詰めるまでの過程が丁寧な取材と記録によって深掘りされている。そして、彼女の類い稀なる才能を浮き彫りにするプロセスでは、同時代をトップ歌手として生き抜いた松田聖子と比較する形で記述が進んでいく。 単純な歌唱力・表現力では松

        【口が裂けても言いたい話】「映画におけるメタ情報

          【口が裂けても言いたい話】「差別と偏見の連鎖」

          映画「his」をネットフリックスで鑑賞。岐阜の片田舎で偶然再会するゲイカップルと彼らを取り巻く周囲の衝突、偏見を日常風景をまじえて淡々と描いていく。主演は宮沢氷魚、藤原季節。 恋人である渚から唐突に別れを告げられ、傷心のうちに岐阜の田舎町に拠点を移した迅。物々交換を基本としたのどかな日常にもようやく慣れてきた迅だったが、ある日、渚が愛娘とともに町を訪れたところから安定が少しずつ崩れはじめる。身勝手に別れておきながら居候として迅のもとに転がり込む渚に若干の苛立ちを覚えつつ、新

          【口が裂けても言いたい話】「差別と偏見の連鎖」

          【口が裂けても言いたい話】「多様性とはこういうことか」

          映画「スーパーノヴァ」をAmazonプライムビデオにて鑑賞。ピアニストと作家。異なるバックボーンを持ちながらも強く惹かれあうゲイカップルが選び取る運命についておさえたユーモアとともに描いていく。 ある日、ふたりは旅に出かけていた。それは繊細な感性を持つ作家のほうが強く望み、計画した決意の込められた旅であった。旅の途中、ふたりは幾度も笑い合い、人生観をぶつけ合うが、やがて彼らの旅は、作家が望み、ピアニストが恐れた結末へと導かれていく……。 「彼らはゲイカップルである」 ス

          【口が裂けても言いたい話】「多様性とはこういうことか」

          【口が裂けても言いたい話】「顔のない悪魔」

          ネットフリックスオリジナルドキュメンタリー「キラー・ナース」を鑑賞。アメリカで実際に発生した看護師による患者の連続殺人事件の顛末を当時の映像や証言、ドラマ部分をまじえつつ、リアルに追いかけていく。 アメリカの民間病院で入院患者の点滴に毒物を混入し次々と殺害した悪魔……その名は、チャールズ・カレン。彼は15年余りのキャリアの中で400名以上の患者を死に至らせ、いくつもの医療機関を転々としてきた。その間も淡々と犯行は繰り返されてきたが、15年以上の時間が行き過ぎるまで、その凶行

          【口が裂けても言いたい話】「顔のない悪魔」

          【口が裂けても言いたい話】「合法的な独裁者」

          2022年新語・流行語大賞候補として、「インフィマシー・コーディネーター」がノミネートされた。ドラマや映画における性的シーンについて監督と女優の合意形成をサポートする役割を指すらしい。 またひとつややこしい横文字が増えたな、というのが正直な印象だが、実際の撮影現場に与える影響は思いのほか大きい。 それも、ネガティブな意味で。 これは私の勝手な想像だが……第一線の女優の中には、このインフィマシー・コーディネーターとやらを内心歓迎していない女優も少なからずいるのではないか。

          【口が裂けても言いたい話】「合法的な独裁者」

          【口が裂けても言いたい話】「ある意味で最強のふたり」

          映画「思いやりのススメ」をネットフリックスで鑑賞。全身の筋肉が徐々に萎縮していく筋ジストロフィーを患う青年と新米介護士の交流をコミカルに描く。 熱心な介護士と難病の青年の心あふれる交流物語……かと思いきや、映画は序盤から急展開をむかえ、青年の殻を破るロードムービーになっていく。難病の青年と、離婚問題を抱えた男性介護士。ふたりの葛藤は時として激しくぶつかり合い、ストーリーそのものに緊張感をもたらす。 障害を憂い、ひねくれることしかできない青年……この手の映画によって提示され

          【口が裂けても言いたい話】「ある意味で最強のふたり」

          【口が裂けても言いたい話】「逃亡者に口なし」

          ドキュメンタリー作品「逃亡者~数奇な人生~」をネットフリックスで鑑賞。ルノー・日産の最高権力者としてその名をとどろかせ、2019年の年末、世紀の脱出劇で世界中を震撼させたカルロス・ゴーン氏の半生を数人の証言からリアルに追っていく。 前半ではルノーのCEO就任までさかのぼり、ゴーン氏のカリスマ性と功績が強調される。日産の最高責任者として抜擢されたゴーン氏は就任当初は日本とフランスの文化的な軋轢に苦労するが、次第に本来のセンスと才能を発揮し、深刻な赤字体質だった日産を黒字経営へ

          【口が裂けても言いたい話】「逃亡者に口なし」

          【口が裂けても言いたい話】「アニメーションの必然性」

          映画「漁港の肉子ちゃん」をネットフリックスで鑑賞。直木賞作家・西加奈子の同名小説を吉本興業協力、明石家さんまプロデュースでアニメ映画化。木村拓哉・工藤静香の愛娘、cocomiが主演声優を務めたことでも話題となった。 東北の港町でたくましく生きる「肉子ちゃん」とその娘である喜久子を取り巻く個性的な人々の交流をユーモラスに描く。 明石家さんまプロデュースということで、公開前から何かと話題の絶えなかったこの映画。端役の声優陣など、そこはかとなく漂う「吉本臭」を我慢しなくてはなら

          【口が裂けても言いたい話】「アニメーションの必然性」

          【口が裂けても言いたい話】「王道のロミジュリ映画」

          ネットフリックスオリジナル映画「ビヨンド・ザ・ユニバース」を鑑賞。治療が困難な病気を抱える女性ピアニストと青年医師の若き恋模様をコミカルに描く。 主人公・ニーナはピアノの才能に恵まれ、音楽を生きがいとしていたが、幼い頃からの自己免疫疾患からくる慢性腎臓病のせいで思うように動けない体になっている。運よく腎臓移植のドナーが見つかるまでは週3回の人工透析を余儀なくされた彼女はある日、ちょっとした偶然によりガブリエルという青年に出逢う。彼の非礼な態度に腹を立て、「もう二度と会わない

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          【口が裂けても言いたい話】「僕たちは大人になれただろうか」

          ネットフリックスオリジナル映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」を鑑賞。21歳の青年が46歳になるまでの軌跡を時系列を逆転させつつ、断片的に描いていく。主演は森山未來。 夢の挫折、恋人との別れ、社会との軋轢……主人公・佐藤真の25年間は、言葉にしてしまえばありふれた時間である。さらに長い時間軸で俯瞰してみれば取り立てて起伏のない時間ではあるのだが、それでも、その瞬間瞬間の彼は必死で、心の底からもがいていた。 オザケン、電気グルーヴ、ポケベル……90年代中盤を代表するア

          【口が裂けても言いたい話】「僕たちは大人になれただろうか」

          【口が裂けても言いたい話】「遅すぎる青春映画」

          映画「くれなずめ」をネットフリックスで鑑賞。社会人になってそれぞれの人生を背負った6人の男たちの人間模様をコメディタッチで描く。主演は成田凌。 ヨシオたち6人は高校の同級生。社会人になっても互いに連絡を取り合っていた彼らは友人の披露宴で再び集合することに。6人全員で余興を披露するということで練習に励む6人だったが、彼らの中には5年前の、決して忘れることができない「悲しい記憶」が居座っていたのだった……。 大人になりきれない男たちの幼稚なバカ騒ぎを延々と見せられるコメディ。

          【口が裂けても言いたい話】「遅すぎる青春映画」

          【口が裂けても言いたい話】「(死)という希望」

          映画「Arc~アーク~」をネットフリックスで鑑賞。アメリカ在住の中国人作家による同名小説を芳根京子主演、岡田将生・寺島しのぶの共演で映画化。 2075年、日本。死者の肉体を死の瞬間のまま永久に保存する技術「ボディワークス」が確立され、日本人にとって「死」は遠い世界の概念になりつつあった。ボディワークスに命を捧げるエマよりその才能を見出され、その日暮らしの日々から死を身近に感じる世界に飛び込んだリナは次第にボディワークスの魅力に取りつかれ、エマの後を託されるまでに成長する。一

          【口が裂けても言いたい話】「(死)という希望」

          【口が裂けても言いたい話】「映画的ドキュメンタリーという手法」

          ネットフリックスオリジナル映画「グッド・ナース」を鑑賞。1990年代のアメリカで実際に起きた現役看護師の病院での連続患者殺害事件を題材に、犯行が繰り返される過程をリアルに描いていく。連続殺人鬼、チャールズ・カレンを演じるのは「博士と彼女のセオリー」のエディ・レッドメイン。 慢性的な人材不足にあえぐ都市部の大病院に救急科の看護師として働く女性看護師。次第に重度化していく心筋症の発作に怯えつつも、彼女は連日の過酷な夜勤業務をやりがいを持ってこなしていた。そんなある日、シビアな予

          【口が裂けても言いたい話】「映画的ドキュメンタリーという手法」