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【口が裂けても言いたい話】「逃亡者に口なし」

ドキュメンタリー作品「逃亡者~数奇な人生~」をネットフリックスで鑑賞。ルノー・日産の最高権力者としてその名をとどろかせ、2019年の年末、世紀の脱出劇で世界中を震撼させたカルロス・ゴーン氏の半生を数人の証言からリアルに追っていく。

前半ではルノーのCEO就任までさかのぼり、ゴーン氏のカリスマ性と功績が強調される。日産の最高責任者として抜擢されたゴーン氏は就任当初は日本とフランスの文化的な軋轢に苦労するが、次第に本来のセンスと才能を発揮し、深刻な赤字体質だった日産を黒字経営へと転換させていく。しかしそれは、ゴーン氏にとって終焉の始まりに過ぎなかった……。

後半ではゴーン氏の不正の顛末が詳しく描かれているが、全体としてはやはり、ゴーン氏の擁護に傾いている印象。特に、家政婦の視点が必要だったのかは疑問。守秘義務や職業倫理があるとはいえ、ゴーン氏から直接逃亡計画を聞かされておいて、「良かったです」ではないだろう。

日本側の証言者として安藤優子氏も出演。90年代からゴーン氏を間近で取材してきたというプライドからか、彼女の証言にはどこか自信が満ちあふれていた。この人はきっと、知識や経験を披露することが心底好きで、思わずドヤ顔になってしまうのだろう。

終始、国策捜査を主張していたゴーン氏だが、彼の言葉が真実だったのかどうかを確かめる術はもはやない。

それは明らかに、司法の損失である。

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