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【口が裂けても言いたい話】「僕たちは大人になれただろうか」

ネットフリックスオリジナル映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」を鑑賞。21歳の青年が46歳になるまでの軌跡を時系列を逆転させつつ、断片的に描いていく。主演は森山未來。

夢の挫折、恋人との別れ、社会との軋轢……主人公・佐藤真の25年間は、言葉にしてしまえばありふれた時間である。さらに長い時間軸で俯瞰してみれば取り立てて起伏のない時間ではあるのだが、それでも、その瞬間瞬間の彼は必死で、心の底からもがいていた。

オザケン、電気グルーヴ、ポケベル……90年代中盤を代表するアイコンの羅列が、作中に流れる時間と私たちが地続きであることを知らせてくれる。この種のギミックはやりすぎるとあざとくなってしまうが、本作ではほどよく抑制がきいている。もちろん森山未來、伊藤沙莉といったキャスト陣の演技力も大きいだろう。

現在から過去へ。時系列をさかのぼっていく構成はぎりぎりのところで「成熟」に抗う主人公の思考そのものであり、だからこそ、観客も戸惑うことなく佐藤たちがいる世界に没入することができる。

ただし、主人公の単なる甘酸っぱい懐古映画では終わらせない。ラスト10分では現代(2020年)の日本に時間軸が戻り、コロナ禍の世界も無理なく取り入れている。居酒屋の入店拒否のくだりはいささかやりすぎのような気もしたが、それも含めて時代の一瞬なのだろう。

それぞれの人生があり、それぞれの90年代がある。アラフォー世代にとっては特に刺さる映画ではないだろうか。

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