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【口が裂けても言いたい話】「(死)という希望」

映画「Arc~アーク~」をネットフリックスで鑑賞。アメリカ在住の中国人作家による同名小説を芳根京子主演、岡田将生・寺島しのぶの共演で映画化。

2075年、日本。死者の肉体を死の瞬間のまま永久に保存する技術「ボディワークス」が確立され、日本人にとって「死」は遠い世界の概念になりつつあった。ボディワークスに命を捧げるエマよりその才能を見出され、その日暮らしの日々から死を身近に感じる世界に飛び込んだリナは次第にボディワークスの魅力に取りつかれ、エマの後を託されるまでに成長する。一方で、実の弟でありながらエマのボディワークスを否定し、独自の研究を実らせて「人類不老不死化」の技術を開発し、実用化にこぎ着けたアマネはリナを生涯の伴侶とすることを決め、彼女に不老不死手術を受けるよう懇願する。アマネの想いを受け入れ、不老不死の体となったリナだったが、その先には残酷な運命が待ち受けていた……。

ひと言でいうと、純然たるSF映画。不老不死をメインのモチーフとして描くのであれば前半部分のボディワークスはやや冗長な気もするが、それも含めて「死」について問いかけるために必要なプロセスだととらえれば違和感もない。

リナが不老不死となったその瞬間から画面はモノクロに切り替わり、物語は終盤にむけてゆっくりと動きだしていく。17歳の時に捨てた赤ん坊と80年の時を経て再会する、といった「ちょっとした起伏」はあるものの、そんなものはただの通過点でしかなく、目立った伏線もないまま映像だけがただただ静かにつなぎ合わせられる。

幾多の出逢い、葛藤を経て、リナは不老不死の体を開放し、死ぬことを決断する。死を受け入れたその瞬間からモノクロ画面は終わり、世界は色を取り戻す。

面白い作品ではあったが、政治の動きや日本以外の動向が一切伝えられないため、まるで主人公たちの世界だけが隔離されているような印象を受けてしまう。

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