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【口が裂けても言いたい話】「ある意味で最強のふたり」

映画「思いやりのススメ」をネットフリックスで鑑賞。全身の筋肉が徐々に萎縮していく筋ジストロフィーを患う青年と新米介護士の交流をコミカルに描く。

熱心な介護士と難病の青年の心あふれる交流物語……かと思いきや、映画は序盤から急展開をむかえ、青年の殻を破るロードムービーになっていく。難病の青年と、離婚問題を抱えた男性介護士。ふたりの葛藤は時として激しくぶつかり合い、ストーリーそのものに緊張感をもたらす。

障害を憂い、ひねくれることしかできない青年……この手の映画によって提示される「障害者像」は、このように類型化されている。日本ではかつて乙武洋匡氏が「障害者は聖人君子ではない」として、凝り固まった障碍者へのイメージを痛烈に批判したが、ならば、フィクションにおける「ひねくれ者の障害者」という描き方もまた、類型化された記号となってしまっているのではないか。

少なくともフィクションにおいては、もっと自由で柔軟な障害者像が提示されるべきだ。たとえ、多くの障害者がシビアな現実に押しつぶされ、知らぬ間に心身を疲弊させているとしても……。

「世界一深い穴」をこの目で確かめるために、ふたりは自宅を離れて壮大な旅に出る。その過程では家出中の不良少女や妊婦との予期せぬ出逢いがあり、ストーリーにもそれなりに起伏があるのだが、難病の青年自身にこれといったピンチが訪れないため、ラストにむけてのカタルシスが今ひとつ足りない。

これはこれで、「障害者は必ずしも主人公ではない」というメッセージなのかもしれないが……。

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