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しょんぴん [ 松井昌平 ]
2024年1月25日 15:03
【12635文字】『コンビニ絶叫騒動の巻き』 〜第1話から第4話まで一気掲載〜【第1話】ーーーーーーーーーーーーーー今日も福山浄化町奉行所の目が光る。街にはびこる諸悪を許しまじと、正義と人情のお裁きで天晴一件落着!ーーーーーーーーーーーーーー 日が傾き頬をなでる風がキンと冷え込み始めて来たこの季節、晴れ渡り澄んだ空気は遠い峰々の稜線もくっきりと、遠近感を無視したような近
2023年11月4日 15:40
【2864文字】どのくらい経っただろうふと気付くと僕は暖かな陽を浴びながら電車に揺られている事に気付いた座席に座っているらしい少しウトウトしている僕をよく知っているという女性と並んで一緒に座っている様だが僕には彼女が誰だか分からないその女性は背中に大きな荷物を抱えシートへは浅くしか座れていない辛そうだ彼女をもっと辛くしているのがその手にしているものだった何か茶色い
2023年1月9日 16:40
【9130文字】昼行燈とはよく言ったもので間口の狭い店の脇に赤ちょうちんが風に吹かれて暇そうにぶらぶらと揺れている果たして明かりは灯っているのかこの晴天の昼過ぎには分からない暖簾が出されてるところを見ればどうやら昼の2時でも開けてる店の様だ高架線の方から熊五郎はいつものように肩をすぼめ申し訳なさそうにやって来て恐る恐る暖簾を両手で分けるとその奥の引き戸をそっと開けて入って
2015年1月28日 12:49
[2721文字] #小説 #短編 「インド人の作るカレーが必ずしも旨いとは限らぬ。」「はぁ?」弟子はまたこの師匠妙な事を言い出したなと思った。「もしくは、カレー好きのインド人だからこそ、他所のカレーは食えぬという場合もある。」自分の頭と椅子の背もたれを同時に抱え込む様にして座っていた弟子は、ここに来た事を少し後悔し始めていた。「なんの話ですかそれ、僕はただ女心が分らないと言ってるだけ
2015年1月23日 00:51
[3066文字] #小説 #短編 一人と一匹が「さようなら」をしようとしていた。 「そろそろさようならだね。」「でもまだ、もう少し・・。」彼女の言葉がつまった瞬間、意志とは裏腹にひとすじの涙が頬を走った。不安がらせないように頑張っているつもりでも、やはりもう会えなくなると思えば我慢など出来るものではない。「もう一回一緒に散歩が出来たら・・。」彼女はあわてて言葉をつなげようとした
2015年1月3日 07:38
[3521文字] #小説 #短編 「何もかも卒業してはならぬ。」と師匠は酸っぱい顔をしながら言う。「へぇ〜、じゃぁ僕はいつまでたってもハンパなまんまじゃないですか。」弟子はそう言いながら、コイツ大丈夫か?といぶかった視線を師匠の横顔と、自らの腕時計へせわしく送った。師匠はこの弟子の視線に気付いたが、知らぬ顔で腕を組み昼下がりの明窓を見据えながら重々しく言う。「卒業無き修行にこそに、人生の
2014年12月21日 22:03
[2453文字] #小説 #短編 ぃと・・・伊藤君?伊藤君かな…? ぁのォ~ っちょっと失礼しま・・ぉぉおお~っ! 伊藤君じゃないか!!やっぱ伊藤君だ!そうだと思ったんだよこんな所で会うとはなぁ!元気にしてたのか?見た感じあんまり変わったように見えないが・・ずいぶん苦労もしたみたいだなぁでもまぁまぁ元気そうで良かった!ぁそうだ時間あるかい?立ち話もなんだからちょっ
2014年12月18日 07:12
[3681文字] #短編 #小説 まだ免許を取れない中学の頃から母親に、 「あんた、オートバイだけは乗りたいって言わないねぇ」 と先手を打たれ、 まだションベン臭かった僕はまんまと、 「あんなものには興味ネェよ」 と言わざるを得なくなっていた。しかし当時当然ながらバイクに興味のない高校1年生などこの世に居る筈もなく、僕は十六才の誕生日を迎えた途端、そういった行きがかり上仕方なくこっそりと
2014年12月17日 15:31
[2157文字] #短編 #小説 _田舎の片隅にある男が住んでいた。_世間では中年と言われる年齢に達しているが、男は一度も結婚をしたことがない。今も小さな家に一人で暮らしている。家は小さい。街から山をいくつも超えた田舎町の、そのまた村外れにひっそり建つ家である、庭だけは都会にはあり得ない広大さがある。しかし敷地の境などははっきりしない。おそらくここが境であろうと思われるあたりは雑草に覆われ、男
2014年12月16日 22:21
[2940文字] #短編 #小説 _鉄製の扉の中腹にあるポストに今日も何かが投函された。鉄扉独特の金属的な響きでガタン!と音がする。その度に男は神経質に身を強ばらせる。投函者の足音が遠ざかるまで、なぜか息を殺しジッとしているのが癖になっている。一人暮らしの安アパートは狭く、部屋のどこに居てもその音は聞こえる。テレビを観ていようが、トイレに立っていても、風呂に入っていようが、ガタン!が聞こえると男