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父はなぜ孫を可愛がるか?

私の2歳下の妹には娘と息子がいる。つまりは、私には姪っ子と甥っ子がいるということになる。たまに遊びに来るので、たまに会う。この姪っ子と甥っ子は私の父と母から見れば孫にあたる。

私の両親がこの2人に接する時は「祖父母」として接するし、姪っ子と甥っ子も「じいじ」「ばあば」と呼び、接する。これは至極当たり前のことで、特に疑う余地はない。ただ、私が気になるのは別のところにある。特に私の父に関してである。

父は普段、自分以外のことにあまり興味が無くて、今までも特に子育ても家事もしてこなかった。冷たいとか厳しいということは無いが、子煩悩や、いあわゆるイクメンとはほど遠い存在であった。(おそらく父世代の人はほとんどそう)

でも、父は姪と甥のことをとても可愛がって、遊んであげたり、少しは世話をしたり、自分のLINEのアイコンを姪と甥の写真で頻繁に変更するなどする。私の父は姪と甥のことが大好きで、お菓子も買ってあげて、とても可愛がってやる。まぁ世の中の祖父としては特別なことは無い。私も自分の祖父にはそうしてもらったし、可愛がってももらった。

では、なぜ私の父は、普段は自分以外のことにあまり興味がないのに、孫たちを可愛がるのか。それは本当に孫たちが可愛い顔をしているということもあるが、「自分の孫」であるからに他ならない。


生物や遺伝子が語られる時、「なぜ生物は生きているのか?」「なぜ我々は生きているのか?」という疑問を目にすることがある。確かに、なぜ自分が生きているかはまったくわからない。失礼を承知で言うと、母親が自分を生んだから、生を受けて存在させられているのであって、こちらが強く望んで生まれてきたわけではない。

何が正解かはわからないが、上記の答えとしてよく目にするのが「子孫を残すため」という答えである。そう、生物は子孫を残すためにこそ生きるのである。これは答えになっているようで、答えになっていないような気もする。じゃあ例えば、卵や赤ちゃんを産んだら、そこでもう生きる意味が無くなってしまうのか。もしくは、子孫を残せない状態になった時に生きる意味を失うのか。

子孫を残すことがDNAに組み込まれているからそれが理由だという説もあるし、理由などなく発生したものが続いていくという説や、そもそも理由を問うことこそがナンセンスだという声もある。文系の私にはよくわからないが、いつかこの答えが出る時がくるかもしれない。

話を戻すと、要は私の父が孫を可愛がるのは、その2人の姪と甥が紛れもなく自分の子孫だからである。自分の子孫だからこそ、孫を可愛がるし、大切に愛おしく感じるのだ。言い方を変えれば、幼い子供を可愛がっているのではなく、自分の子孫である個体だからこそ可愛がっているのである。もちろん、父はそんなこと少しも意識していないと思うが、生物的な原理からすればそうなるのだ。

小さな子供が2人いて、一方が血の繋がった孫で、一方が他人の孫であったら、どちらも同じ可愛さを感じていても、無意識の内に自分の孫を可愛がってしまうだろう。それは「自分の子孫を残す」というプログラミングに基づいた当然の結果である。もちろん、中には無慈悲の愛で誰にも接する素晴らしい人がいないとは言えないが。

少々、小難しい話をしてしまったが、ふと父の孫を可愛がる姿を見てそんなことを考えてしまった。普段見せないような笑顔やおどけた表情はどこから来るのかといつも思っていたが、「生物が子孫を残すためのもの」という前提にたてば説明が付く。

我が子や孫は可愛い。だが、それは単純に可愛いのではなく、自分の子孫だからこそ可愛いのであり、自分の子孫を残すためにこそ彼ら彼女らを大切に思うのである。




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