言葉のおまじない「今日は、ダメな日だ!」
空き時間に、歌の練習をしていた。
最近流行りの曲、
昔から何度も歌っている曲、
今、一番上達したい曲…。
“一番上達したい曲”をメインに、
繰り返し歌って、
気晴らしに違う曲を挟みながら、練習する。
しかし
“どうにも今日は、気持ちよく歌えない。”
時々、こんな日がある。
そして今日が、その日だ。
「今日は、ダメな日だ!」
原因は、色々な場合がある。
まず、単に今、その曲の気分ではない場合。
例えば
冬の気配を感じる時期に、真夏の歌を歌うのがしっくりこなかったり、
恋をしていない時に、恋愛ソングに身が入らなかったり…。
けれど本当は、
どんな時期でも、どんな状態でも、あらゆる役を演じられる女優さんのように、“なりきる”ことを身につけて、その曲に、いつでも感情移入できるようになりたいと思う。そこを目指している。
また、乾燥や花粉によって歌いづらい場合。
水分をとっても、なんだかすぐに喉が渇く。潤わない。
花粉症の時期はもはや薬を飲む以外、手の打ちようがない。
…この場合、歌とは、体が楽器なのだということを痛感する。
コンディションが悪いと、すぐに歌声に反映されてしまう。
今日は少し、部屋の乾燥によって歌いにくさを感じていたかもしれない。
あとは単に、気持ちが乗らない場合だ。
理由はわからないけれど、なんとなく、歌に気持ちが入らない。
何度繰り返し歌っても、楽しくないし、気持ちよくもない。
そんな時。
私は、歌うことをやめる。
そして、自分に向けてひとつ、呪文を唱える。
「今日は、ダメな日だ!」
そう割り切って、“歌うこと”から“離れる”のだ。
ダメな日。
定義はなく、ざっくりしているけれど、
自分にとってのダメな日というのは、自分の軸によって決定するものだろう。
なんだかうまく話せない日
なんだか調子が出ない日
なんだかケガの多い日
…など。
とにかく、なんとなく。
大なり小なり、失敗が重なったり、自分の思うように物事が進まない日に有効なおまじないだ。
このおまじないのポイントは、
深呼吸をしてから言うことと、
明るめの声で言うこと。
すると、
潔く、諦めようと言う気持ちが、前向きに湧いて来るはずだ。
深呼吸をしてからこのおまじないを唱えると、
一度気分がリセットされ、「心が落ち着いた状態で、冷静に下した判断です。」と自分自身を納得させやすい。
また、明るい声であればあるほど、
罪悪感が消えやすく、気持ちよく次の“違うこと”に頭を切り替えられるような気がする。
“向き合うこと”と“離れること”
今日は歌だったけれど、歌以外で、何においても。
私はダメな日に、いくら挑戦しても、うまくいかないことが多い。
仕事や、事情によってはどうしても離れられない場合もある。
しかし、
自分が好きなことや
自由に、自発的にやっていることは、「離れてもいい」と思っている。
一度、そこから離れて、忘れてしまう。
気分転換だと思って
外に出かけたり、人に会ったり、ゲームに集中したり…とにかく他のことで頭をいっぱいにして、考えないようにしてみる。
好きなことだからこそ、真剣に向き合う。
一方で
好きなことを突き詰めすぎて、嫌いになりたくない。
昔、ピアノを習っていた頃に少し感じたことだ。
自分が好きで、始めたこと。
楽しいと感じているから、続けていること。
熱中している時は、最高の青春だ。
一つのことに熱中できることと、そのための時間があること。
そして、熱中できる“何か”を見つけたことは、それだけで、本当に幸せなことだと思う。
しかし
四六時中、ずっと向き合っていると、苦しくなる瞬間がやってくる。
もう楽しくない、やりたくないと思う瞬間も、やってくる。
そこで諦めず、向き合い続けたこともある。
苦しくても苦しくても、
向き合い続けた先に、見える景色がある。
その時の達成感や
別の世界に続く扉が、新たに開いたような感覚。
この瞬間は最高だ。
自分が人知れず、
1人で長い旅をして帰ってきたというくらい、大きな経験値と成長を遂げたように、昨日までの自分と違う自分を感じられる。
だからこそ、
“向き合い続けること”と“離れること”
どちらを選んでも、自分にとっては良いことなのだと思う。
向き合うか、離れるか。
その対象となる、“好きなことがあること”
これこそ、一番大切にしたいことなのだ。
しかし、一つだけ。
どうしても離れられない、逃げられないことがある。
それは、自分自身のことだ。
どんなに離れたくても、
過去のこと、現在のこと、未来のこと。
これまで過ごしてきた自分とも、
今自分がどうしているのかも、
これから自分がどうなりたいのかも。
全て自分で考え、決めなければならない。
自分の人生は自分のものであり、誰も責任を取ってはくれないから。
だからこそ、できる限り大切にしたい。
自分のことについて考えることだけは、
時々離れてもいいから、必ずまた戻ってきて考える必要がある。
その時にこのおまじないは、きっと役に立つと信じている。
今日だけは、考えるのをやめる。
今日だけは、忘れる。
「今日はダメな日」が、仮に何日も続いてしまってもいい。
またいつか気持ちが前向きになった時に、
向き合えばいいのだから。
そうやって離れたり、また向き合ったりしながら
上手に自分自身と、自分の人生と向き合っていけばいい。
“好きなこと”があるだけで
今日はダメな日だった。だから離れた。
けれど、歌うことが好きなのは確かだから、
時間が経てば必ず、「歌いたい」と思う瞬間がやってくる。
必ず、である。
どんなに長い間離れても
どんなにもう嫌いだと感じてしまっても。
本当に好きなことというのは
自然と体が動くものだと、信じている。
絵を描くこと
小説を書くこと
スポーツをすること
勉強すること
考えること
何をするにしても
一つのことを突き詰めるということは、
楽しくて、面白くて、
苦しくて、辛いことだ。
けれどそんな風に思える“何か”があることを
誇りに思って、人生を豊かにするはずだと信じて。
自分自身とも、好きなこととも
向き合って
時々離れて
また向き合って
生きていきたい。
2023.11.13
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