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リリとロロ

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リリ・シャロンという自由について。
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2023年9月の記事一覧

リリとロロ 「アザンの森」について

リリとロロ 「アザンの森」について

バッドエンドや胸糞悪い作品が好きで一度書いてみたかった。

そもそも本は普段読まない上に、サスペンスなんてテレビドラマですらあまり見ない。

ユージュアル・サスペクツは見たけどあれはミステリーなのかな?

元は僕が実際に見た夢だったので、これが正しいサスペンスなのかはよくわからない。

拙い文章なのでアドバイスをくれると嬉しい。

精進致す。

アザンはアンモニアのことで、森はヘブライ語でシャロン

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑪ ⑫

リリとロロ 「アザンの森」 ⑪ ⑫

これにて完結.°(ಗдಗ。)°.

小気味良い電話の音で目覚める。

見慣れた天井に布団。

今日一日、自分は何をしていたのだろう。

iPhoneの時刻は0時8分。

知らない携帯番号からの電話を不審に思いつつ低い声で応答すると、電話口は年増の女性だった。

「もしもし。燈里ちゃんのお知り合い?」

嫌な予感がした。

全て夢じゃなかったのか。

陽太の肉体が死に、本来の僕に返ってきたのか。

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑨ ⑩

リリとロロ 「アザンの森」 ⑨ ⑩

どんどんと不穏な空気になっていくね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

暗い。
中身は大人でもやはりこういった気味の悪い場所は怖い。

ただそれ以上に彼女は父親を手に掛けたという事実ものしかかり、恐怖心は計り知れないものだろう。

二人とも滴るほど汗をかいているが、ただ一度彼女を抱きしめた。

「大丈夫。何とかする。」

何とかってどうするんだ。
僕にもわからない。

ただ彼女の返答は

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑦ ⑧

リリとロロ 「アザンの森」 ⑦ ⑧

今回結構ヘヴィーで露骨な表現があるので注意

「遅えと思ったら、さっきのボウズ連れ込んで油売ってたのか!」

勢いよくドアを引っ張り、燈里の頭部を殴った。

「何だお前。このガキのことが好きなのか。母親に似てお前もサカってんな!」

「そういうんじゃ」

「そもそも誰だよ、この小便臭いガキは。」

「私も初めて会ったから」

「一目惚れってやつか!」

「だから…」

「ああ!ちょうどいいな!お前

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リリとロロ 「アザンの森」 ⑤ ⑥

リリとロロ 「アザンの森」 ⑤ ⑥

今回ドキドキするところです。

わざわざ首を突っ込む話でもないのに、不思議と言葉になって出てしまった。

これはお持ち帰りの常套句とも取れるが、この歳で言うと全く別の意味になった。

いや、現実世界だと完全に誘拐でお縄だ。

少しの沈黙の後、ほころびかけた顔をキュッと締め上げて

「気安く呼ばないでよ。」

と、つっけんどんな返答をくれた。

不思議と彼女の表情には数滴の期待と不安が入り混じってい

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リリとロロ 「アザンの森」 ③ ④

リリとロロ 「アザンの森」 ③ ④

面白くなってきたとこです。

「はい。燈里ちゃんと僕、どうぞ。」

この店のママらしき人物が整えた椅子の前にオレンジジュースとポッキーを少し置いてくれた。

「おい!そんなガキに俺は一銭も払わねえぞ!」

「いやあねえ、これは私からの奢りよ。

僕?名前は?お母さんはどこにいるの?」

そういえばそうだ。

この女性も僕の名を知らないし、一見である可能性は高い。

あのクソ親父の子種とは思いたくも

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リリとロロ 「アザンの森」 ① ②

リリとロロ 「アザンの森」 ① ②

長編かつサスペンス初挑戦なので暖かい目で見守ってください。

先に言っておきますがグロテスクな表現、著しく倫理観の欠如した表現が含まれますので苦手な方は頑張ってください。

そして、あまりに長いので2話ごと掲載します。
普段の倍以上の文量なので価格はちょっと上がってて堪忍す。
「お昼休憩に読める600文字程度」を意識してきましたが、内容が内容なのでお昼に読む人はいないですね。

この物語はフィクシ

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リリとロロ 「サブリナロマンス」について

リリとロロ 「サブリナロマンス」について

空想に耽る女の子。

他人の性格になりきるというのは面白い。

他人の思考の紐解き方を真似る作業は、その人のポテンシャルを引き出す力にもなり得る。

thee michelle gun elephantの最後のフルアルバム "SABRINA HEAVEN"という作品がある。

後期のミッシェルの濃く苦い部分を抽出したようなアルバムで、どこか物哀しい鳴りを感じる。

最後の曲 "NIGHT IS O

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リリとロロ 「サブリナロマンス」

リリとロロ 「サブリナロマンス」

新生活のロロ

連なる山々を越え、ノイジーな車輪の音は風景に溶けていった。

一つ咳を漏らせば全員が吐き出しそうな空気は、ドアの開く小気味良い音と共に放たれた。

私はいま、都会に来ている。

そう再認識するように心音に身を委ねる。

片田舎から数時間、都会特有の秘匿性に静かな憧れを抱き、私は社会人へとなろうとしている。

暖房から急激な冷気に晒されてかじかんだ手を銀蝿のように擦り合わせて、私は彼

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リリとロロ 「羽化」について

リリとロロ 「羽化」について

アヤミハビル(ヨナグニサン)という日本最大の蛾がいる。

蝶はストローのような口器で花の蜜を吸うことが多いのは知れ渡っているが、この蛾は大きく羽根の先端が蛇のようになっているにも関わらず、口が退化していて一週間程度で餓死する。(カイコガなどもこれに当てはまる)

飢餓というのは人類の歴史を見ても最も凄惨で、人間の荒んだ心を膨張させる事実であると思う。

飛躍して言えば古来より飢えを凌ぐために銭を稼

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リリとロロ 「羽化」 ②

リリとロロ 「羽化」 ②

この怠けた身体を動かそう。

躯体から再度、より強靭なものにしなければならない。

calicoからリリ・シャロンへ。

単なる前身バンド、単なる引き継ぎ作業ではない。

何度でも始められるなら、僕が女性だった場合、どんなバンドを組みたいかを念頭に置いて音楽に向き合うことにした。

ただ、calicoの意志を完全に消去するわけではない。

これは幼虫からサナギへの変態。

一度ドロドロに身体が溶け

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リリとロロ 「羽化」 ①

リリとロロ 「羽化」 ①

正木諧のロロ

放たれた空砲が鼓膜を痺れさせるような感覚。

サナギが音を立てて羽化するように、それは徐々に、そして突然に訪れた、脳を掻くような高く乾いた振動だった。

まだ朝靄の滲む空にぬるく溶けるように眠りにつく、自堕落な生活に身を委ねていた。

ただ生活を死なないために続け、時折来る痙攣に怯えながら社会的に放棄された自分を遠くから見つめる。

「ここから飛び降りれば」

「この紐で気管を塞げ

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