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【2024年6月】最近読んだ本のご紹介

最近読んだ本をご紹介します。今回は4冊です。

はじめてノーベル文学賞作家・川端康成の作品を手に取ってみました。この時代の人が描く独特の堕落やエロティシズムをようやく面白く読めるようになってきた気がします。少し大人になったのかな。谷崎や三島も読んでみたいと思います。

期待して積読していた、モリス・バーマンの『デカルトからベイトソンへ 世界の再魔術化』は期待通りの名著でした。後日この本だけ取り上げて記事にしたいと思っていますのでご期待ください😁

それでは順番にどうぞ。


📖川端康成『雪国』新潮文庫

2年前から、新潟県が主導する観光事業「雪国リトリート」というプロジェクトをお手伝いさせていただいております。関わり始めて以来、何度となく、”国境の長いトンネル”を抜けて雪国に行っております。

湯沢あたりでは、そこかしこで「川端康成」の面影を感じており、いつか読んでみようと思っていた、こちらの名作。

私自身、純文学というものにあまり馴染みがなく、どういう気持ちで読んだら良いのか、まだ掴めないでおります。ただそれでも、登場人物それぞれの人間らしい弱さは、すぐそこに感じるようなリアルさがあり、胸を締め付けるものがありました。

そして、どこか醸し出される情景や心情の雪国らしさ。南国のような突き抜けた優しさではなく、どこか一歩引いた奥ゆかしい優しさが感じられます。それが太陽の優しさと雪の優しさの違いなのでしょうか。

作品中、”縮(ちぢみ)”や”雪晒し(ゆきさらし)”についての記述があり、ちょうど塩沢紬について話を聞いた後だったので、新潟と着物文化がまた少しつながった感覚がありました。

おそらくまた読み返したくなる気がする、そっと本棚にしまっておこうと思うようなそんな小説でした。

📖國分功一郎『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』講談社現代新書

🔖心に残った一節
自分に与えられている条件のもとで、その条件にしたがって、自分の力をうまく発揮できること。それこそがスピノザの考える自由の状態です。

國分さんの本はとにかく面白いので、いつか読むだろうと本書も積読しておりました。

國分さんの本では、スピノザはたびたび登場する人物であり、別の方の本でも肯定的に引用されることが多い印象で、どうやら日本人が好きそうな人物です。なぜ現代に肯定的に受け取られているのかを考えながら読んでおりました。

まず代表的な考え方である、「神即自然」。神は自然であると言い切るスピノザ。キリスト教神学が支配している時代で、この考え方を提示できるのはすごいです。。。自然信仰が馴染んでいる日本人にも受け取りやすい考え方でしょう。

國分さんは本書の初めにスピノザの凄さを伝えるためにこのように述べています。

哲学者とは、真理を追求しつつも命を奪われないためにはどうすればよいかと常に警戒を怠らずに思索を続ける人間です。

つまり、スピノザは命を奪われてもおかしくないヤバい哲学を掲げた人物ということです。その生涯では認められることはなかったようですが、その考え方は今の現代人に突き刺さるものがあります。

「人が無理なく自分らしい力を発揮できることが自由である」というスピノザの自由は、現代の私たちに自分らしく生きる希望を与えてくれるものであると感じます。その上で、その力を発揮するために、自分が刺激されるような状態を作ることが有益である、つまり精神的な余裕や学ぶという行為を肯定する考え方は、完全に同意です。

今こそスピノザに学ぶべし、に納得しました。

なお本書は単独でももちろん面白いですが、國分さんの名著『中動態の世界』の副読本としてもお勧めです!

📖蜂屋邦夫『100分de名著 老子』NHK出版

🔖心に残った一節
『上善は水の若(ごと)し。水は善く万物をを利して争わず、衆人の悪(にく)む所に処(お)る、故に道に幾(ちか)し。』

(最上の善なるあり方は水のようなものだ。水は、あらゆる物に恵みを与えながら、争うことがなく、誰もがみな厭(いや)だと思う低いところに落ち着く。だから道に近いのだ。)

荘子を深く学ぶにあたって、「老荘思想」と括られることの多い老子も知っておきたいと思い、いつもお世話になっている「100分de名著」を読んでみることにしました。

老子が大切にする「無為自然」の考え。
作為なく、あるがままに生きることを説いてくれます。

荘子との違いを明確に言葉にするのはとても難しいですが、あえて言葉にすると、老子の方がほんの少し人間的な印象がありました。

戦乱の時代に、「まずは生命を大切にしなさい」と説く老子。

だからこそ、目立たぬよう自分の才能を隠しておくことや、知識や欲望を捨て去ることで、自分の生命を守れと老子は言います。

学ぶことが好きな自分としては、学問は必要ないと説く老子の考え方には、つい抵抗感を持ってしまいますが、その根底には人間に対する深い愛を感じます。

水のように作為なく生きなさい。その言葉が心に沁みました。

📖モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ 世界の再魔術化』文藝春秋

🔖心に残った一節
自我はそれ自体ではエネルギーの源泉を持っていない。無意識こそがその存在の基盤なのだ。細胞のなかの細胞膜のように、自我もまた〈精神〉のなかのひとつの収縮点である。そして、〈精神〉とは、身体全体によって、五感すべてを通して得られた知の総体である。

グレゴリー・ベイトソンの偉業と著者モリス・バーマンの作家性が見事に融合された、まさに感動巨編!

同著者の『神経症的な美しさ アウトサイダーがみた日本』も素晴らしい本でしたが、この本も後半に行くにつれてぐいぐい引き込まれていく、吸引力の凄まじい一冊です。付箋を貼る手が止まらず・・・。

そして、著者モリス・バーマンの深い見識に加え、訳者柴田元幸さんの丁寧な日本語もまた素晴らしいのです。

デカルトの二元論を批判的に見ながら、グレゴリー・ベイトソンの全体論を理解する本としても最適な一冊。ベイトソンは、まだその著作に触れたことはありませんが、ずっと気になっていた人物。捉えるのが難しい〈精神〉の存在を、宗教と科学を融合させながら見事に表現した偉大な人物であることが、この本でよく理解できます。

学術的な正当性はわかりませんが、後世に受け継がれていくべき一冊だと思います!

これは読むべしです。

以上4冊でした。

読んだ本はインスタでタイムリーに紹介しているので、もし興味ある方はぜひフォローしてください😁

〈instagram〉
https://www.instagram.com/masaki.tomaru/

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