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なぜスウェーデンはメタル大国になれたのか?

PAIN OF SALVATION の来日が決まった。


素晴らしいね!90年代から活躍を続けるスウェーデンのプログ・メタル・バンド。いや、もはやプログ・メタルなどという陳腐な言葉には収まらない唯一無二のカルト・ヒーローだ。彼らほど、メタルとオルタナティブとプログの垣根を取り払い、超越したバンドは他にいないだろう。

スウェーデンには彼ら以外にも、さまざまなメタルのカルト・ヒーローが存在する。

EUROPE やイングヴェイ ・マルムスティーンがアリーナ・ロックやシュレッドの一大ムーブメントを築き上げた。ヨーロピアン・ドゥームの皇帝 CANDLEMASS は冠を掲げ、AT THE GATES, IN FLAMES, ARCH ENEMY といったメロディック・デスメタルの潮流もこの国から始まった。ご承知のとおり、その流れは後のメタルコアを生み出す礎となる。

ブラック・メタルなら BATHORY や DISSECTION がいる。プログレッシブ・メタルといえば、前述の PAIN OF SALVATION や OPETH の存在を語らないわけにはいかない。ヴァイキング・メタルなら AMON AMARTH。Djent のムーブメント、その神となった MESHUGGAH もスウェーデン出身だ。

何がいいたいかといえば、21世紀に花開いたモダン・メタルの多様性、その育成にスウェーデンの数多のメタル・バンドたちが大きく寄与しているんだ。

ではなぜ、スウェーデンはこれほどまでにユニークで才能豊かなメタル大国になりえたのだろう?

かつて、お隣フィンランドの英雄 SENTENCED のインタビューで、BURRN! の Tack Maeda 氏がこんな有名な言葉を引き出した。

ここ(フィンランド)では3つのことしか出来ない。1つ目はテレビを観ること。2つ目は自殺すること。そして3つ目はミュージシャンになることだ。だから俺達はバンドを組んで、自殺することについて歌うことにしたのさ。

そこで我々は、"なるほど、北欧の森は暗くて寒いから部屋にこもって楽器ばっかり練習して、時にはチンポもシュレッドするだろうけど、そうやってメタル・バンドがアホほど増えていったんだな。なるほどなるほど…" と納得していたわけだ。

そんなわけないんだよね。

いや、まあそれも理由のひとつではあるんだろうけど、暗くて寒い国なんていくらでもあるわけで、それだけが理由なはずがないんだよ。だってね、人口100万人あたりのメタル・バンド数が428だよ?日本はたった14。どこかに、もっと大掛かりな、国策的なしかけがないとこうはならないでしょ

RAMMSTEIN からリック・フレアー、果てはスタンリー・キューブリックまで、芸術における “シアトリカル” を濃縮したメタルのライジングスター AVATARというスウェーデンのバンドがいる。Babymetal とも仲良しなこのバンドの顔、Johannes Eckerstromは、博識な語り部として King Diamond の跡を継ぐ才能。彼が最近、秘められたスウェーデン・メタル化計画の壮大な内容について語ったんだ。それは、あの、反吐が出るような山本譲二メタル化計画を、みちのくひとり旅にするほどに素晴らしいものだった。

「スウェーデンがなぜメタル大国になったのか。これには真面目な長い答えがある。第二次世界大戦後のスウェーデンでは、アメリカのシステムに相当するもの、放課後プログラムのようなものを作って、すべての自治体が音楽学校を開校したんだよ。それは学校や学校のカリキュラムの一部ではなく、ただ楽器の演奏を自由に学べる場所。そして、それには超高額な補助金が降りていて、基本的に誰でも利用できるんだ。最初の1年間は無料で楽器を借りることができ、2年目も続けていれば、補助金を受けて楽器を購入することができる。最初は音楽の先生と週に20分、バイオリンか何かで メリーさんの羊を弾くだけだけど、そこからどんどん発展していく。アメリカでリトルリーグか何かをするように、子供たちが放課後に楽しく音楽教育を受けられるんだ。そして、それは容易に広く低額で入手可能な教育だったから、多くのスウェーデンの子供たちがその味を知ることができる。AVATAR のほぼ全員が、比較的近いところで育った。同じ町で、違う場所で、一人はクラリネットを、一人はフルートを、一人はトロンボーンを、ひどい演奏をする小さな子供たちのオーケストラで演奏していたんだ。そうしてティーンエイジャーになると、サブカルチャーやその他もろもろ、音楽的なことに夢中になり始める。だから、10代になると突然、髪を腰まで伸ばしてMETALLICAやIRON MAIDENのシャツを着ている人たちが現れて、バンドを結成するようになる。それが大きな要素なんだ」

楽しいと思った子だけが自由に学べる、無理やりでも銭ゲバでもない才能の育て方。素晴らしいよね。山本譲二は商売と再生工場のゲスいニオイしかしねーんだよ。メタルはやらされるもんじゃねえし、落ち目の起爆剤でもねえ。メタルを利用するなよ。いつまで芸能界は愛のないやつに、やりたくもねーことをやらすんだ?

とにかく、僕は公立の中学で1年からバンドをやっていたから、日本との違いがとてもよくわかるよ。教えてくれる先生なんて誰もいなかった。理解も少ない。バンドなんて不良。楽器の購入に補助金なんてでるわけもない。すべては少ないお小遣いと親頼み。まあそれでも、ドラムセットや音楽室、ステージも制限ありだけど使わせてくれたから、あの時代にしてはとても寛容な学校だったとは思うけど。Johaness はこう続ける 。

「もうひとつの大きな要因は、サクセス・ストーリーを経験して、メタルがブランドになったこと。これはある種の偏見でもある。スウェーデンから来た新しいメタル・バンドだと言えば、皆が好奇心を抱く。ある意味自給自足のシステムなんだ。THE HIVESって知ってる?彼らはファーガシュタ出身だ。今、ファーガシュタには小さなTHE HIVESがたくさんいるんだ。だから、代表とか象徴とかブランドは重要なんだ。いろんな人がその後ろ姿を見て、子供たちはその人のようになりたいと望み、"自分もできるんだ" と思うようになる。スウェーデンでは、小柄で痩せ型の10代の少年たちにとって、"あの人たちは成功したんだ" "あの人のお母さんは僕の友達のお母さんと一緒に郵便局で働いている" といった、スターへの親近感は自信を得るための第一歩なんだよ。自分の可能性を身近に感じられるんだ」

国策としてメタルをブランド化することで、メタルはスウェーデン最大の "輸出品" となったんだね。文化が輸出品となり得ることは日本もよく知っていると思うけど、果たして "クール・ジャパン" なる国策は成功しているのだろうか。報酬を手にするべき人がしっかりと手にしているのだろうか?そしてやっぱり、背中で語るスターやカルトヒーローが身近にたくさんいること。それって本当に大事なことだよねぇ。可用性というか、自分にもやれると思えるような土壌だよね。

「そして福祉国家であるということは大きいね。つまり、生活のために何かひどい仕事をしなければならないという考えをもつ必要がなく、惨めに失敗しても後で違う人生の道を見つけることができる。セーフティネットがあるということ。だから、失敗しても大丈夫なんだ。そういうことがすべて組み合わさっているんだと思う」

セーフティネットね。日本にもあるらしいけどね。使いづらいよね。まあ失敗が許されない国だよね。もちろん、そのために北欧は消費税が高い云々カンヌンな議論はあるだろうし、死ぬまで好き勝手にやってくれたらいいんだけど、これまで生きてきた肌感としてこの国が失敗や挫折、異端を許さないことはよくわかっているんだよ。

要は金の使い道よ。才能よりも調和と言う名の既得権益を守る美しい国。寛容さやギフトの包容力という点で、見習うべきところは多いと思うけどね。寛容で多様な今のメタルが人気のある場所は、きっと生きやすい場所だと思うから。少なくとも、PAIN OF SALVATION はいつだって弱いもの、社会からはぐれたもの、"痛み" を抱えるものたちの味方だったから。


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