L'homme de blé

パリ在住

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  • フランス 滞在記

    2020年9月渡仏後の記録です。

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フランス 滞在記 もくじ

・2024年04月22日 第14週(4/1~4/7) ・2024年04月22日 第13週(3/25~3/31) ・2024年03月30日 第12週(3/18~3/24) ・2024年03月30日 第11週(3/11~3/17) ・2024年03月30日 第10週(3/4~3/10) ・2024年03月27日 第9週(2/26~3/3) ・2024年03月16日 第8週(2/19~2/25) ・2024年02月18日 第7週(2/12~2/18) ・2024年02月18日 第6

    • 第14週(4/1~4/7)

      ▲増水するセーヌ川、オルセー美術館向かい 3日水曜日、業務の合間に向かうのは、パリ市内にある家族経営のキャビア専門店です。先日、職場で大量購入した縁で、店を仕切る夫人から招待を受けます。一行は、"économat"(エコノマ;調達・在庫管理担当)の同僚2人、上長の料理人、そして私の計4人です。 この訪問は、退職を控えた私が記念となるように、エコノマの同僚がシェフに提案したものでした。彼の言う「君が思い当たったんだ」という意味合いでの"j'ai pensé à toi"という

      • 第13週(3/25~3/31)

        ▲街角 31日日曜日早朝、サマータイムに移行します。日本とフランスとの時差は、7時間に縮まります。 2019年に欧州議会で採択された、2021年に時間変更の廃止を実施する案は、コロナの影響で棚上げになったままです。 天候は曇りがちでも、日の出から日の入りまでの昼間が長くなるだけで、だいぶ気分が変わります。 パリの昼間時間は、夏至に16.2時間、冬至に8.2時間で二倍近くの差があります。東京の場合、夏至に14.6時間、冬至に9.7時間であることを考慮すると、浴びれるときに陽

        • 第12週(3/18~3/24)

          ▲Jardin de l'Hôtel Salomon de Rothschild(8区) 散歩と公園の組み合わせが気持ちいい頃合い。 18日月曜日、休暇の一時帰国を終えてパリの職場に復帰します。 これまであまり手をつけてこなかった賄いのチーズは、一時帰国を経たことで価値あるものに見え、せっかくなら食べておこうという気になります。 チーズを頬張る私に、同僚は日本でチーズのビジネスをやればいいと言いますが、そういうことでもない気がします。 24日日曜日、業務後は穏やかに雑談。

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          第11週(3/11~3/17)

          ▲河津桜 15日金曜日、旧友は私の悠長な人生設計に反応して、時間は有限であることを諭します。 軌を一にして線香花火のように人が亡くなるのを見て、そうなんだろうということは理解しますが、切実なこととして捉えられないところがあります。これまで大して切羽詰まらなかったことの証かもしれません。 翌週、パリの職場に戻るとラマダン中のバングラデシュ人の青年は、人はいずれ死ぬんだと言います。当たり前のことを言っているのに、敬虔な彼が言うと含蓄ある言葉のように聞こえます。 彼が死を恐れて

          第11週(3/11~3/17)

          第10週(3/4~3/10)

          ▲吉祥寺 メンチカツと茶葉の香りが漂います。 5日火曜日、所用で日本に一時帰国します。桜の時期も間近とあって、郷愁が煽られます。海外歴が長くなると桜も恋しくなくなるとしたら、悲しいことです。 一時帰国のたび、フランスでの生活が私に与えてくれたものを考えさせられます。海外での経験は、新たな視点と様々な機会を提供してくれましたが、それと引き換えに失ったものもあるはずです。 帰るべき場所があるという感覚は心理的な安心感をもたらす一方で、困難に適応する機会を逃すという問題を示し

          第10週(3/4~3/10)

          第9週(2/26~3/3)

          ▲セーヌ川沿いの古本屋 さまざまなコミュニティから連絡を受け取り、冬眠から目覚めたような人々の活発な動きを感じます。啓蟄とは言い得て妙です。 26日月曜日、パリにおける学校休暇期間の終わりを待って、個人的にバカンスに突入します。シーズンを外して日本を訪れた同僚・元同僚からは、続々と食べ物や神社の写真が送られてきています。彼らは関東圏・関西圏を中心に、2~3週間ほどかけて日本を回り、充実した旅をしているようです。料理人という職業もあって、豊洲市場見学や醤油蔵で櫂入れを楽しむ

          第9週(2/26~3/3)

          第8週(2/19~2/25)

          ▲連日の雨で混濁するセーヌ川 24日土曜日、修理に出した携帯を受け取ると、修理屋は口コミをぜひ投稿してほしいと言います。修理のためにSIMカードを抜き取っていたのでその場で評価をつけることはできないと保留すると、「とても大事なことですから」「(投稿することを)信じていますから」などと念押しされます。遮二無二に評価を得たい執念に気を圧されます。 携帯を修理したパリ市Saint-Lazare駅周辺は、交通の要衝で多くの修理屋が集積します。アクセスの良さが顧客を引きつける一方、

          第8週(2/19~2/25)

          第7週(2/12~2/18)

          ▲街角 14日水曜日は"Saint-Valentin"(バレンタイン)。花屋ではバラが特需です。 16日金曜日、同僚の青年と食事へ。 彼が知人から勧められたというバスティーユ地区のビストロは、親しみあるサービスと質実剛健といった風のシンプルな料理が好印象です。 職場では改まって聞くことがなかった彼の出身地のことについてあれこれ聞くと、彼は見せた方が早いと言わんばかりにおもむろにジャケットを脱ぎます。彼の上腕二頭筋には、名刺より一回り小さい長方形でモノクロの模様のようなタト

          第7週(2/12~2/18)

          第6週(2/5~2/11)

          ▲街角 冬至の日没が17時前だったのに対し、このごろは18時過ぎでも明るさが残るように。ときどき気温が高まるのと相まって、春の到来を予感させます。 5日月曜日、ビュッフェやカクテル等を担当する持ち場では、同僚がカナッペ用にくり抜いたきゅうりが種ばかりであることをきっかけに、型の使い方が改めて問われます。 サイズが小さいきゅうりに対して機能していた型も、通常のきゅうり(フランスで流通するものは日本のものより大きい)を代用するとなれば、くり抜き方など、型の使い方を考え直さなけれ

          第6週(2/5~2/11)

          第5週(1/29~2/4)

          ▲パリ市庁舎と、年内に公開予定のノートルダム大聖堂(4区) 1日木曜日、午前中の業務の合間をぬって年度初めの面談が行われます。 副料理長と前年度の評価や今年度の活動方針について確認し、個人の目標や計画について話します。ちょうど退職希望の文書をシェフと人事部に届け出たことを考慮に入れ、フォーマットの記入事項は飛ばし気味に内容を埋めます。 調理場にいることが大半のため、面談を通じていつもと違う次元の話をするのは不思議な感覚です。特に個人のキャリアの意向については、今の行動にも

          第5週(1/29~2/4)

          第4週(1/22~1/28)

          27日土曜日夜、"fruits de mer"(海の幸)が食卓のメニューとなると、普段とは異なる仕事のリズムが生まれています。 大皿に盛られる牡蠣、海老、手長海老、バイ貝、オマール海老、蟹は、その鮮度と独自の味わいを生かすため、慎重に扱われます。 作業の大半は、殻を除くなどの処理に費やされます。食材は新鮮さを活かすため、生かわずかに加熱される程度です。"nage"と呼ばれる香味野菜やアルコール、酸を加えた出汁での調理法では、加熱すると同時に食材に香りを移します。これにより、

          第4週(1/22~1/28)

          第3週(1/15~1/21)

          ▲かつては医者の邸宅だったというレストラン 19日金曜日夜、料理学校のセルビア人元クラスメートと食事の席に着きます。 かたや星付きレストランで副料理長になっている彼は、仕入れ先の開拓や血気盛んな部下のなだめ方に苦心しているようです。一方で今度の新しいメニューでは、自分のアイディアに初めてシェフのクレディットがついたことを嬉しそうに語ります。 その料理は彼が好きな鳩を中心とした一皿だと言います。 付け合わせの工程や素材のヒント、代用パターンなど、あらゆる角度の質問に対しても

          第3週(1/15~1/21)

          石井洋二郎「フランス的思考」

          時たまの読書記録。石井洋二郎「フランス的思考」中公新書(2010年)より。 2020年からフランスに住んでいます。 幼少期からの食への関心と、母国語以外で専門性を身に付ける意欲とが相まって、フランスで料理人をしています。 母国でない環境は、何事も当たり前でないことを痛感させます。とりわけ職場では、目的のために協力しなければならない点で、違いを言い訳にしても誰にも理解してもらえません。相手を知ることは、自らの負担を減らす一助になるかもしれないと考えます。 「ゲーテとの対話」

          石井洋二郎「フランス的思考」

          第2週(1/8~1/14)

          ▲neige 雪 週初めから一気に冷え込み、わずかながら雪が積もっています。 9日火曜日、新首相が34歳のガブリエル・アタル氏に決まると、同世代の同僚らは感心をもって受け止めています。髭もじゃ君は、来年俺がなる年齢で首相か、と言うと、想像が現実離れしすぎていたのか、思わず笑い出しています。個人的には、一時期研修でお世話になった省で当時報道官をしていた方というつながりもあって、道を切り拓いていく近い世代の姿から刺激を受けています。 さて12日金曜日、先のことながら退職の意向

          第2週(1/8~1/14)

          第1週(1/1~1/7)

          ▲郊外 元旦、外出業務後の街の光景に虚無感を感じます。 地震や飛行機事故といった、日本で正月に立て続けに起きた出来事はフランスでも大きくニュースで取り上げられ、同僚らは出会いがしらにその影響を心配しています。 気になるのは、彼らが家族や出身地の安否を尋ねる際に「影響を与える、関係する」という意味で"toucher"という語を頻繁に使うことです。 英語で対応するtouchにも「触れる」「感動させる」と併せて「影響を与える」という意味があるようです。しかしフランス語の場合は「(

          第1週(1/1~1/7)