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第22週(5/27~6/2)

退職を一ヶ月後に控え、最後かもしれない同僚との対面、最後かもしれない外出業務に感慨深くなります。一つ一つの振舞いを抜かりなく、漏れがないように、嘘が無いように、という気持ちが一層高まります。

同僚の上長料理人らが発する言葉は簡単な教えに立ち返り、どこか教訓を帯びて聞こえます。熱いものは熱いうちに、愛を込めて、というように。
料理、それはシンプルなことだ、と副料理長は言います。

料理において「愛を込めて」とはよく言われます。一見、不確実なものにも見えますが、その環境、その人のもつ技術でできることは限られることを考えると、気持ち一つで仕上がりを変え得る、見過ごすことのできない変数の一つです。縁が汚れている、表面が乾燥する、彩りが足りない、器が冷たい、といったことはわずかな差の積み重ねでありながら、それらを厭わずにできるかは、どれだけ愛着を持っているかの問題でもあります。
それと対極の姿勢は、適当な落としどころを探ることです。愛は、もう一歩、何かできないか、という粘りの姿勢であり、一つ一つの手間の質を高めるものと言えます。

パリ日本文化会館からセーヌ川、"Pont de Bir Hakeim"(ビルアケム橋)を眺める

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