第30週(7/22~7/28)
▲パリオリンピック開会直前
26日金曜日18時ごろ、セーヌ川に平行して規制された区域では、小雨の中、開会式の観客が長い行列をなしています。ルーヴル美術館付近にて。
23日火曜日、"apéro"(アペロ)のために元同僚パティシエの自宅へ伺うと、彼は幼い娘をあやしながら"Chatereuse"(シャルトリューズ)やおつまみを出します。
ひときわ目を引くのは、部屋の壁にある畳一枚ほどの大きさはあろう立体地図です。それは彼の故郷である"Chambéry"(シャンベリー)を含むアルプス一帯を表しています。起伏に富んだ緑色に塗られた山々の中に、点々と水色の湖があり、わずかにある黄色の平野には、ぎっしりと地名が書かれています。
私が翌日からその地域の"Annecy"(アヌシー)に行くことを知ると、彼はこの地域の交通網がどのように通っているのか、どんな名物のどんなレストランがあるかなどを、地図を指し示しながら説明します。地図では空白になっている山や湖の景観に想像を及ばせながら、この土地の活動が、山や湖なしには語れないことを悟ります。
アヌシーもまた、雪山が反射する"Grenoble"(グルノーブル)に似て、透き通った湖水の明度が高く、街に明るい印象があります。海沿いの保養地、内陸の歴史ある寂然とした街並みと同様に、湖畔の美しい風景があります。
自然資源を活用したアクティビティが豊富にあるおかげで、フランスのアルプスは2030年冬のオリンピック開催予定地でもあります。街の名前以上にアルプスというエリアとして捉えられることも多いのは、地理的な特異性、独立国としての歴史、独特の食文化といった複数の強いアイデンティティが、広くレイヤーを重ねたようになっているせいに見えます。
90年代にアルプス観光のプロモとして広く使われた表現に"La montagne ça vous gagne"(山はあなたを魅了する)というのがあるようです。(JRの観光促進キャンペーンのようなものでしょうか。)元職場にはもう一人シャンベリー出身の同僚がおり、郷土愛の強い彼はサヴォアのチーズやリキュール、ウィンタースポーツが話題に上るたび、私にこの表現を吹き込むかのごとく、引用しました。
"montagne(モンターニュ)"と"gagne(ガーニュ)"が流れるような韻を踏み、山を主語として自然の力が強調され、それらを少ない語で簡潔に表現されており、キャッチコピーが浸透した理由も分かるような気がします。
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