第28週(7/8~7/14)
▲Dominicanen ドミニカネン
オランダ・マーストリヒトにある教会内の書店です。
8日月曜日、マーストリヒトのホテルでは、テレビが前日のフランス下院選挙の結果を報道しています。各勢力が三すくみとなり、首相の辞任が取り沙汰される状況は、フランス国内の政治的な分裂を象徴しているだけでなく、EU全体の統合の脆弱さをも浮き彫りにしているように見えます。
1992年2月7日、マーストリヒトではEUの礎となるマーストリヒト条約が調印されました。当時、フランスでもこの条約を巡って激しい議論が交わされ、国民投票では賛成票が51.04%、反対票が48.96%で可決されたようです。一枚岩にはなれない難しさがEUの行方につきまといます。
マーストリヒト条約の首脳会合と調印の舞台であるリンブルフ州庁舎の玄関には欧州遺産ラベルの標識が立ち、EU創設の功績を讃えます。
欧州統合の機運の高まりと興奮が伝わってきます。
この地で始まった議論は、自由な国境移動や安定した共通通貨という今日の恩恵に繋がっています。ただ、現在ではこの条約の意義が歴史的な事実として受け入れられ、根本的な再構築についての議論はほとんど聞かれなくなっています。
9日火曜日、マーストリヒトで思いがけず出会ったヨーロッパの個人的ベストレストランでは、その風味の強さ、異国の食材を自分の文脈でいなす術、少人数チームの強い連帯において目を見張ります。その料理の素晴らしさは、街全体の魅力によってもさらに引き立てられているように感じます。
マース川に架かる橋Sint Servaasbrugを渡り、旧市街に足を踏み入れると、観光客たちのゆっくりとした足取りと、多言語が飛び交うざわめきが耳に入ります。マーストリヒトはベルギー、ドイツ、オランダの結節点に位置し、周辺地域の住民にとっては憩いの場のようです。
ここでは安定した伝統料理と創造的なガストロノミックが共存し、繁華街でも活気がある一方で商売気を抑えた落ち着いた雰囲気が好印象です。唯一、地元出身の音楽家André Rieuの広告が強い主張をするものの、この街の文化的側面を示しています。
オランダ政府が指定する国定記念物のリストを調べると、マーストリヒトには約1,700件の記念物が登録されており、これはアムステルダムに次いで国内で2番目に多いようです。ベルギー人の元同僚はオランダの魅力的な街としてマーストリヒトを真っ先に挙げました。国内20位程度の人口の街が挙げられるのは、豊富な歴史的遺産に支えられた魅力があるからかもしれません。
Googleマップでカフェを検索してみると、いくつかの「コーヒーショップ」なるものが表示されます。2000年代初頭、マーストリヒトの「コーヒーショップ」すなわち合法的に大麻を販売する店舗は、その土地の利からして周辺国の多くの客を呼び込んだようです。しかしアムステルダムと違い、2011年に購入者を居住者に限定してからは、健全な観光業へと方向転換したようです。
マーストリヒトには世界遺産は存在しないものの、街全体に漂う歴史の重みと威厳が印象的です。歴史的建造物が静かに佇む姿との対比で現代の穏やかな雰囲気が際立ち、落ち着きある特別な魅力を感じます。
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