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第33週(8/12~8/18)

▲サンセバスチャンの海賊
手製のいかだで競うレースです。

12日月曜日、サンセバスチャンの料理学校では、同市が美食の街として知名度を得るに至った背景を職員が説明します。その要因に、素材の豊かさ、故Luis Irizar氏の功績、オープンコミュニティを挙げます。
職員は、素材が良ければ「魚にレモンを使うのは、何かをごまかすためだ」という挑戦的な見方を示します。

ピンチョスの原点gilda(ヒルダ)を作りつつ

肉や魚を炭火焼きする調理スタイルのレストランasador(アサドール)は、素材を楽しむ一つの方法です。料理学校の職員に勧めてもらった店を書き留め、日を改めて向かうことにします。

郊外の緑溢れる丘陵地帯には、農家風家屋のアサドールが数多くあります。煙突を通して漂う炭火焼きの香り、そして駐車場を埋め尽くすさまざまなナンバーの車があり、美味しいものに誘われる動物的な本能がはたらきます。そこでは地元民が気の知れた間柄で、ゆったりと食事を楽しむ様子があります。

丘陵の谷合いにあるアサドール
特化した網に肉や魚を乗せ、慣れた手つきで粗塩をザッと振りかけます。

客席からは、孤独に焼き続ける職人を見ることができます。暑く、動きが少ない持ち場を仕切り、人を立ち入らせない風格があります。
食材の品質さえ保証されていれば、職人一人の加減が顧客の評価に響くため、職人の責任は重大です。店の年長が携わるのを見ると、経験を必要とする立ち位置だと伺えます。肉は塊で、魚は一尾で拵え、塩を振り、経験を頼りに来るべき瞬間を見極めています。

職人はまた、顧客を観察します。
ときに客席から焼き具合の追加を求める様子があるせいか、そうした好みのばらつきを定性的に理解しようとしているように見えます。
そのため、職人と目を合わせるのは容易です。食事中、目配せして親指を立ててそのTxuleta(骨付き肉)美味しいことを伝えると、職人は険し気な表情を崩してはにかみました。こうした静かな共感が食文化の基礎に行き着くのかもしれません。

ガリシア地方の牛の品種Rubia Gallega。注文が入ると斧を使って切り分けます。
味付けは塩だけで、仕上げに別途焼いた脂の切れ端をにんにく潰し器のようなもので潰しながら回し掛けます。

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